「珍しいわね。綾乃ちゃんがそういうお顔するの」
その言葉にふと顔を上げて小百合さんの顔を見ると、なぜか眉根を寄せている彼女の笑顔があった。
「卓也さんと行ったんでしょう?」
「いえ、直前で来られなくなって」
「またなの? 卓也さんは本当にわからない人ね」
「でも、あの人が来られなかったから、一人でハワイに行くことができて、素敵な出会いがたくさんありました」
「……そう」
それは嘘偽りのない本心だった。出張だと直前になってキャンセルした卓也への不満は、もはや一片もない。むしろ、彼が来られなかったおかげで、自分にとって本当に大切なものを見つけることができたのだから。
思い出が眩しすぎて、今でも目が眩みそうになる。太陽の光を浴びたビーチの輝き、波の音、甘い潮風、そして何よりも、彼の笑顔。眩くて、温かくて、かけがえのない時間。
「本当にいい人と出会ったのね。綾乃ちゃんがそういうお顔するところなんて、中々見られないわ」
小百合さんが可笑しそうに笑うから、なんだか恥ずかしい。自分では気づかないうちに、そんなにも表情に出ていたのだろうか。
頬に両手を当てて、「どういう顔ですか? そんなにニヤついてます?」と聞いたら、「違うのよ」とまた可笑しそうに言う。
「嬉しいことは嬉しい、楽しいことは楽しい、悲しいことは悲しい、そういうお顔」
言われて初めて、ハワイでの日々を思い返した。確かに、あんなに大声で笑ったり、人前で泣いたりしたことは、大人になってから一度もなかった。感情の蓋を開けてくれたのは、間違いなく彼だ。彼の前では、わたしは「ただの綾乃」でいられた。
その事実に胸が熱くなり、わたしはそっと頬に手を当てた。 指先に触れる熱は、まだハワイの余韻を残しているようだった。
「綾乃ちゃんは、仕事以外だとまだ自分の感情を隠す癖があるから。その出会い、大切にした方がいいわ」
その言葉を聞くだけで、どれだけ大切に考えてもらっているのかわかる。小百合さんは人生の先輩として、母のように見守ってくれているのだ。その深い愛情と、自分自身の新しい感情に、胸が苦しくなる。
「わたしね、本当の娘のように思っているの。だからね、幸せになってほしいのよ。もっと自分を大切にしてあげて。自分の気持ちを、ね。もっと泣いたり笑ったりしていいのよ」
龍介さんに出会ってからのわたしの涙腺は本当に弱り気味で、涙もろさが龍介さん並みになったみたい。
「綾乃ちゃんが泣いたり笑ったりできる人と、一緒になってね」
もっと泣いていい、もっと笑っていい。この言葉の意味が今ならわかる。龍介さんと出会った、今なら。
「おばさんのおせっかいだけどね。心配なの」
小百合さんがそう言って笑うから、込み上げる熱をこらえて、「ありがとうございます」と告げる。背中に添えられた手がいつもより近く、温かく感じられる。
その言葉にふと顔を上げて小百合さんの顔を見ると、なぜか眉根を寄せている彼女の笑顔があった。
「卓也さんと行ったんでしょう?」
「いえ、直前で来られなくなって」
「またなの? 卓也さんは本当にわからない人ね」
「でも、あの人が来られなかったから、一人でハワイに行くことができて、素敵な出会いがたくさんありました」
「……そう」
それは嘘偽りのない本心だった。出張だと直前になってキャンセルした卓也への不満は、もはや一片もない。むしろ、彼が来られなかったおかげで、自分にとって本当に大切なものを見つけることができたのだから。
思い出が眩しすぎて、今でも目が眩みそうになる。太陽の光を浴びたビーチの輝き、波の音、甘い潮風、そして何よりも、彼の笑顔。眩くて、温かくて、かけがえのない時間。
「本当にいい人と出会ったのね。綾乃ちゃんがそういうお顔するところなんて、中々見られないわ」
小百合さんが可笑しそうに笑うから、なんだか恥ずかしい。自分では気づかないうちに、そんなにも表情に出ていたのだろうか。
頬に両手を当てて、「どういう顔ですか? そんなにニヤついてます?」と聞いたら、「違うのよ」とまた可笑しそうに言う。
「嬉しいことは嬉しい、楽しいことは楽しい、悲しいことは悲しい、そういうお顔」
言われて初めて、ハワイでの日々を思い返した。確かに、あんなに大声で笑ったり、人前で泣いたりしたことは、大人になってから一度もなかった。感情の蓋を開けてくれたのは、間違いなく彼だ。彼の前では、わたしは「ただの綾乃」でいられた。
その事実に胸が熱くなり、わたしはそっと頬に手を当てた。 指先に触れる熱は、まだハワイの余韻を残しているようだった。
「綾乃ちゃんは、仕事以外だとまだ自分の感情を隠す癖があるから。その出会い、大切にした方がいいわ」
その言葉を聞くだけで、どれだけ大切に考えてもらっているのかわかる。小百合さんは人生の先輩として、母のように見守ってくれているのだ。その深い愛情と、自分自身の新しい感情に、胸が苦しくなる。
「わたしね、本当の娘のように思っているの。だからね、幸せになってほしいのよ。もっと自分を大切にしてあげて。自分の気持ちを、ね。もっと泣いたり笑ったりしていいのよ」
龍介さんに出会ってからのわたしの涙腺は本当に弱り気味で、涙もろさが龍介さん並みになったみたい。
「綾乃ちゃんが泣いたり笑ったりできる人と、一緒になってね」
もっと泣いていい、もっと笑っていい。この言葉の意味が今ならわかる。龍介さんと出会った、今なら。
「おばさんのおせっかいだけどね。心配なの」
小百合さんがそう言って笑うから、込み上げる熱をこらえて、「ありがとうございます」と告げる。背中に添えられた手がいつもより近く、温かく感じられる。


