空港に到着して建物の中に入ると、見覚えのある家族が現れた。その姿を見た瞬間、溢れてきたものを止めることもできず、その場で立ち尽くしたまま目から涙がこぼれていく。
わたしの涙腺はこのハワイでどうにかなってしまったらしい。龍介さんの涙もろさがうつってしまったみたい。
「アヤノ!」
抱き着いてきたリサを受け止める。
「アヤノ、絶対またハワイ来てね」
「うん」
「わたし、待ってるから」
「……ん」
「アヤノ、泣かないのよ」
少しだけ体を離して、リサの小さな顔を両手で包み込むと、嬉しそうに笑ってくれる。
「リュウと仲良くしてね」
「うん。リサもみんなと仲良くね。また来るからね」
「アヤノ、大好きよ」
「わたしも。リサのこと大好き」
もう一度、リサの小さな体を抱き締める。小さく柔らかな温もりは、わたしの体も温かくしてくれる。
潤さん、忍さんとハグを交わしていくと、順番待ちのように、優くんと徹さんが両手を広げて待ち構えていた。畑中さんまでその先に待っていて、視線を投げれば頷いてくれる。
それを見た優くんは、わたしが飛び込むより先に、駆け寄るようにしてわたしをその長い腕の中に抱き締めた。
「綾乃、日本でも会おうね」
「うん」
中々離してくれない優くんに笑いがこみ上げてきて、その胸を軽く叩けば、目の前の人は「いいじゃん」って言って、抱き締める腕に更に力を込める。
「優斗、次、俺の番」
「まだ待ってよ。徹さん、触りたいだけでしょ!」
「優斗だってそうだろ」
「優斗も徹も早くしてよ。俺も綾乃ちゃんとハグチュッチュすんだから」
「畑中、まじでやめろ」
龍介さんが畑中さんの胸ぐらを掴んで、怒気を込めた声を響かせている。
ハワイに来たときは一人であんなに心細かったのに、なんて賑やかな別れなのだろう。みんなの体は熱くて、ふざけているはずなのに、また涙が零れ落ちそうになる。
「綾乃」
「龍介さん」
いつもの香りを胸いっぱいに吸い込めば、瞳に浮かんだ想いが溢れて、そのまま彼のシャツに吸い込まれていく。それは、甘く優しく、そしてひどく愛おしい、龍介さんの匂い。
龍介さんの逞しい腕の中に抱かれて、わたしの体はすっぽりと収まっていた。この温もりから離れたくない、という抗いがたい感情が、涙腺を緩ませる。
「日本でなにかあったら、ちゃんと連絡してね」
彼の声は、いつも通りの穏やかさを含んでいるけれど、その奥で微かに震えている。わたしの髪を撫でる手が、少しだけ力を込める。
「はい」
「やっぱり……なにかなくても連絡してね」
「はい」
「電話するから出てね」
拗ねたような、けれど真剣なその口調に、思わず笑みがこぼれる。
「ふふ、はい」
彼の大きな指が、少しだけ頬に残った滴を優しく拭い、わたしの髪をもう一度、ゆっくりと撫でていく。その指先の微かな震えが、ただ愛おしくて。涙は溢れていくのに、頬は緩んでいく。
そして、わたしたちはゆっくりと離れてから別れた。ゲートが開き、搭乗口に人が流れ込んでいく。もう一度だけ振り向いて、瞼の裏に浮かべる。龍介さんの、切なげな、でも力強い微笑みを。
飛行機が滑走路を離れる。機体が上昇するにつれて、窓の外の景色はみるみるうちに小さくなっていく。鮮やかな緑の島。エメラルドグリーンからコバルトブルーへと色を変える、どこまでも広い海。そして、すべてを包み込むような、オレンジ色の夕陽。
わたしはシートに深く背を預け、静かに目を閉じた。次に瞼を上げたら、そこはもう戦場だ。魔法は解けた。でも、わたしの胸には、消えない熱が残っている。
——龍介さん。 わたし、強くなるから。
わたしの涙腺はこのハワイでどうにかなってしまったらしい。龍介さんの涙もろさがうつってしまったみたい。
「アヤノ!」
抱き着いてきたリサを受け止める。
「アヤノ、絶対またハワイ来てね」
「うん」
「わたし、待ってるから」
「……ん」
「アヤノ、泣かないのよ」
少しだけ体を離して、リサの小さな顔を両手で包み込むと、嬉しそうに笑ってくれる。
「リュウと仲良くしてね」
「うん。リサもみんなと仲良くね。また来るからね」
「アヤノ、大好きよ」
「わたしも。リサのこと大好き」
もう一度、リサの小さな体を抱き締める。小さく柔らかな温もりは、わたしの体も温かくしてくれる。
潤さん、忍さんとハグを交わしていくと、順番待ちのように、優くんと徹さんが両手を広げて待ち構えていた。畑中さんまでその先に待っていて、視線を投げれば頷いてくれる。
それを見た優くんは、わたしが飛び込むより先に、駆け寄るようにしてわたしをその長い腕の中に抱き締めた。
「綾乃、日本でも会おうね」
「うん」
中々離してくれない優くんに笑いがこみ上げてきて、その胸を軽く叩けば、目の前の人は「いいじゃん」って言って、抱き締める腕に更に力を込める。
「優斗、次、俺の番」
「まだ待ってよ。徹さん、触りたいだけでしょ!」
「優斗だってそうだろ」
「優斗も徹も早くしてよ。俺も綾乃ちゃんとハグチュッチュすんだから」
「畑中、まじでやめろ」
龍介さんが畑中さんの胸ぐらを掴んで、怒気を込めた声を響かせている。
ハワイに来たときは一人であんなに心細かったのに、なんて賑やかな別れなのだろう。みんなの体は熱くて、ふざけているはずなのに、また涙が零れ落ちそうになる。
「綾乃」
「龍介さん」
いつもの香りを胸いっぱいに吸い込めば、瞳に浮かんだ想いが溢れて、そのまま彼のシャツに吸い込まれていく。それは、甘く優しく、そしてひどく愛おしい、龍介さんの匂い。
龍介さんの逞しい腕の中に抱かれて、わたしの体はすっぽりと収まっていた。この温もりから離れたくない、という抗いがたい感情が、涙腺を緩ませる。
「日本でなにかあったら、ちゃんと連絡してね」
彼の声は、いつも通りの穏やかさを含んでいるけれど、その奥で微かに震えている。わたしの髪を撫でる手が、少しだけ力を込める。
「はい」
「やっぱり……なにかなくても連絡してね」
「はい」
「電話するから出てね」
拗ねたような、けれど真剣なその口調に、思わず笑みがこぼれる。
「ふふ、はい」
彼の大きな指が、少しだけ頬に残った滴を優しく拭い、わたしの髪をもう一度、ゆっくりと撫でていく。その指先の微かな震えが、ただ愛おしくて。涙は溢れていくのに、頬は緩んでいく。
そして、わたしたちはゆっくりと離れてから別れた。ゲートが開き、搭乗口に人が流れ込んでいく。もう一度だけ振り向いて、瞼の裏に浮かべる。龍介さんの、切なげな、でも力強い微笑みを。
飛行機が滑走路を離れる。機体が上昇するにつれて、窓の外の景色はみるみるうちに小さくなっていく。鮮やかな緑の島。エメラルドグリーンからコバルトブルーへと色を変える、どこまでも広い海。そして、すべてを包み込むような、オレンジ色の夕陽。
わたしはシートに深く背を預け、静かに目を閉じた。次に瞼を上げたら、そこはもう戦場だ。魔法は解けた。でも、わたしの胸には、消えない熱が残っている。
——龍介さん。 わたし、強くなるから。


