◇
外で食事をすると言う優くんたち三人を残して、わたしと龍介さんはタクシーに乗り込んだ。その中で龍介さんが、「俺も徹と同じ」と呟く。
「……何がですか?」
「綾乃って、女の子なんだなってすごく思う。無邪気にはしゃいだり、恥ずかしがったり。でも時々、儚くて壊れちゃうんじゃないかって思うときがある。だから、綾乃が笑うとすげぇ嬉しいんだよね。綾乃が笑ってると、嬉しくなって笑っちゃうの」
龍介さんの突然の言葉に、わたしは何も言えずにただ黙って彼の横顔を見つめた。
「なんかさ、人を好きになるには時間をかけて知り合うことが必要だとか、こうだから自分と合わないとか、こうだったらいいとか。そうやって色々考えてきたはずなのに、綾乃に全て覆されちゃった」
車内を夕陽が照らす。ハワイの空を染めるオレンジと紫のグラデーションが、車内に柔らかな光を投げかける。
ハワイに来てから、夕陽に照らされる龍介さんの横顔を毎日のように見ている。長いまつげが影を落とし、通った鼻筋、彫りの深い目元。時折何かを深く考えるようにわずかに開かれる唇。
綺麗で、眩しくて、わたしの瞼に焼き付いていくその姿。
わたしの視線に気づくと、彼は優しく微笑んでくれる。その一瞬の表情に、わたしはいつも胸を締め付けられる。LegacyのRYUだと思えば遠く感じるし、龍介さんだと思えば触れたくなるほどに愛おしい。
わたしの気持ちが顔に出ていたのか、龍介さんは少し困ったような、でも愛おしそうな目でわたしを見て、空いている右手でわたしの左手をそっと握りしめた。その温もりが、わたしの不安を溶かしていく。
そして、わたしが彼の肩に頭を預ければ、彼はすっと力を抜き、同じようにわたしの頭に自分の頭を傾けてくれる。この重なり合う時間が、どれほどの安らぎを与えてくれるだろう。
たったそれだけの動作が、わたしにとっては何物にも代えがたい、この上なく幸せな時間になる。
たった十日の間に、龍介さんと過ごすこの時間は、わたしの人生において、かけがえのないものになった。まるで凝縮された夢のような時間。しかし、それも、明日には終わってしまう。
終わらせようと思えば、きっと終わる。東京に戻れば、わたしたちは遠い世界の住人になってしまうのかもしれない。諦めてしまえば、そこで終わる。この夢のような幸福な時間を、ただの「思い出」として、そっと胸にしまうこともできる。
——でも、この心の奥底から湧き上がる熱い想いを、無かったことにできる? 彼の存在しない世界に、戻れる?
家につくまでの間、わたしは自分の心の奥深くにある想いを探すように、そっと目を閉じた。今、わたしを包んでいるのは、彼の温もりと、夕陽の残り香、そして、この胸の高鳴りだけ。
外で食事をすると言う優くんたち三人を残して、わたしと龍介さんはタクシーに乗り込んだ。その中で龍介さんが、「俺も徹と同じ」と呟く。
「……何がですか?」
「綾乃って、女の子なんだなってすごく思う。無邪気にはしゃいだり、恥ずかしがったり。でも時々、儚くて壊れちゃうんじゃないかって思うときがある。だから、綾乃が笑うとすげぇ嬉しいんだよね。綾乃が笑ってると、嬉しくなって笑っちゃうの」
龍介さんの突然の言葉に、わたしは何も言えずにただ黙って彼の横顔を見つめた。
「なんかさ、人を好きになるには時間をかけて知り合うことが必要だとか、こうだから自分と合わないとか、こうだったらいいとか。そうやって色々考えてきたはずなのに、綾乃に全て覆されちゃった」
車内を夕陽が照らす。ハワイの空を染めるオレンジと紫のグラデーションが、車内に柔らかな光を投げかける。
ハワイに来てから、夕陽に照らされる龍介さんの横顔を毎日のように見ている。長いまつげが影を落とし、通った鼻筋、彫りの深い目元。時折何かを深く考えるようにわずかに開かれる唇。
綺麗で、眩しくて、わたしの瞼に焼き付いていくその姿。
わたしの視線に気づくと、彼は優しく微笑んでくれる。その一瞬の表情に、わたしはいつも胸を締め付けられる。LegacyのRYUだと思えば遠く感じるし、龍介さんだと思えば触れたくなるほどに愛おしい。
わたしの気持ちが顔に出ていたのか、龍介さんは少し困ったような、でも愛おしそうな目でわたしを見て、空いている右手でわたしの左手をそっと握りしめた。その温もりが、わたしの不安を溶かしていく。
そして、わたしが彼の肩に頭を預ければ、彼はすっと力を抜き、同じようにわたしの頭に自分の頭を傾けてくれる。この重なり合う時間が、どれほどの安らぎを与えてくれるだろう。
たったそれだけの動作が、わたしにとっては何物にも代えがたい、この上なく幸せな時間になる。
たった十日の間に、龍介さんと過ごすこの時間は、わたしの人生において、かけがえのないものになった。まるで凝縮された夢のような時間。しかし、それも、明日には終わってしまう。
終わらせようと思えば、きっと終わる。東京に戻れば、わたしたちは遠い世界の住人になってしまうのかもしれない。諦めてしまえば、そこで終わる。この夢のような幸福な時間を、ただの「思い出」として、そっと胸にしまうこともできる。
——でも、この心の奥底から湧き上がる熱い想いを、無かったことにできる? 彼の存在しない世界に、戻れる?
家につくまでの間、わたしは自分の心の奥深くにある想いを探すように、そっと目を閉じた。今、わたしを包んでいるのは、彼の温もりと、夕陽の残り香、そして、この胸の高鳴りだけ。


