シンデレラ・スキャンダル

「やっぱりアヤノは、リュウの恋人なんでしょう?」

「どう、え? どう、どうして……そんな」

 うわずった声が喉の奥から絞り出される。否定の言葉はすぐに浮かばなかった。動揺が顔に出ていないか、必死に平静を装おうとするが、心臓は不規則なリズムで高鳴っている。幼いリサのまっすぐな瞳が、まるで嘘を見透かすかのように射抜いてくる。

 まさか、小学生の少女から、こんなに核心を突く質問をされるとは。

「だって、リュウの部屋から出てきたもの。リサ、見てたんだから!」

 この関係が恋人と呼べるような代物ではないとわかっている。わたしたちは旅先で出会って、わたしが恋に落ちて、そして身体を重ねた。それは、都会の喧騒から離れた異国の地で、一時の情熱が生んだ結果。

——恋人。その単語は、あまりにも明るく、あまりにも純粋で、今の自分たちの関係に貼るには、重すぎるラベルだ。

「アヤノは、リュウのこと好きじゃないの?」

 答えられずにいるわたしをさらに追い詰めるように、「好きよね?」と再び問うリサ。小学生の少女に追い込まれて頷くこともできず、彼女の瞳を見つめ返す。

「リサ、あのね……」

「自分の気持ちよ?」

「そ、そうなんですけど」

「リュウと一緒に寝てるんでしょ? パパとママと同じだもん」

「そ、そうなんですけどね」

「アヤノは大人の女性なのに、好きかどうかわからないの?」

 その言葉は、今まで蓋をしてきた感情を容赦なくこじ開ける。大人の女性。そう、自分はもういい年をした大人だ。なのに、この子の問いに正面から答えられない。自分の感情を、はっきりと言葉にできない。

「いや、あの」

 視線をさまよわせ、言い訳を探そうとする。しかし、リサの真っ直ぐな瞳は、その逃げ道を許さない。

「素直になるって大事なことよ?」

「……は、はい」

 結局、力なく頷くことしかできなかった。わたしよりしっかりしているこの子は一体何者だろう。時々、彼女が自分の人生の先輩かのように思えてしまう。

 一緒に寝てはいる。それは動かしようのない事実。海辺での夜を過ごしたあの日から、わたしは龍介さんの寝室で寝ている。毎日、彼の腕の中で温もりと優しさに包まれて、自分が満ち足りていく。彼を見つめるたびに胸が高鳴り、彼の指先が触れるだけで身体が熱くなる。

 彼の少し乱れた髪や、眠っている時の穏やかな横顔に、わたしは、全身が溶けてしまいそうなほど幸福な熱に包まれる。

 だから、きっと——

「好き、かな……」

 その声は、自分で予想していたよりもとても小さくて。でも、ポツリと零れた言葉は、驚くほど自然だった。

 胸の奥で何かがカチリとハマる音がする。認めてしまったら、もう誤魔化せない。旅の恥じらいとか、一時的な迷いとか、そんな言葉で片付けるには、この想いはあまりにも大きくなりすぎている。深く、根を張ってしまったのだ。

 ハワイで出会って、恋に落ちる。それはまるで、真夏の夜に見る幻のようで、現実味が薄いからこそ、余計にわたしの心を揺さぶって不安にさせて、同時に強烈にときめかせるのだ。