龍介さんはわたしをソファに座らせると、自分はピアノに向かい椅子に浅く腰掛ける。そして、鍵盤を軽く触りながら微かに歌い、「よし」と一言呟いてからこちらを見た。観客はわたしだけ。お辞儀をする龍介さんに同じくお辞儀を返して、姿勢を正してみる。
「では、聴いてください」
低く囁かれたその声に、魔法をかけられたように、心臓がじんと疼く。
ピアノの音が、空気の振動となって肌に伝わる。それは優しくて、でもどこか泣きたくなるような切ない旋律。まるで、言葉にできずに揺れ動いている気持ちを、彼が掬って音に変えてくれたみたい。
鍵盤の上で軽やかに動く指。楽譜を見る龍介さんの横顔。美しくて眩しいのに、少し痛いくらいに、喉の奥が熱くなる。胸が締め付けられるように痛い。
あまりにもキラキラしている曲だからだろうか。それとも、本当は切ない曲だからだろうか。まだ歌詞がついていないその曲は、わたしに疑問を残していく
(——龍介さん、これはどんな曲ですか?)
最後の音が響いて、そして龍介さんが短く息を吐く。
「……どうだった?」
胸がきゅうきゅう鳴りました、なんてバカみたいなことは言えないから、一生懸命言葉を探す。でもトクトクと動いている心臓と違って、どうやら頭は停止しているみたい。
「綺麗で眩いというか。胸が高鳴るんですけど、ちょっと切なくもなります」
結局、月並みな言葉しか出てこない。もっと伝えたいことがあるはずなのに、それをどう伝えたらいいのかわからない。でも、龍介さんは穏やかな声で「ありがとう」と口にした。
「綾乃ちゃん、詞とか作ったことある?」
「作詞ですか?」
アーティストというものは、突拍子もないことを言い出すものなのか。そんな技術をわたしが持ち合わせているはずもない。わたしは、自分の顔の前で手を横にふる。なんなら首も一緒に。
「いやいやいや! できません」
「大丈夫だって。一緒に作ってみようよ。ね?」
「未知の世界すぎます。思いつくかな……」
「……俺はなんか言葉にならなくて、気持ちばかりが先走ってる感じ。あんまりこんなことないんだけど」
ピアノの音を響かせて、その鍵盤を見つめたまま彼が呟く。
「綾乃ちゃんと、作ってみたい」
その言葉は、まるで告白のように、甘く、切なく胸を貫いた。耳に残るメロディーと、わたしを真っ直ぐに射抜く彼の瞳。断る理由なんて、どこにもなくて、わたしは吸い寄せられるように、深く頷いていた。
「では、聴いてください」
低く囁かれたその声に、魔法をかけられたように、心臓がじんと疼く。
ピアノの音が、空気の振動となって肌に伝わる。それは優しくて、でもどこか泣きたくなるような切ない旋律。まるで、言葉にできずに揺れ動いている気持ちを、彼が掬って音に変えてくれたみたい。
鍵盤の上で軽やかに動く指。楽譜を見る龍介さんの横顔。美しくて眩しいのに、少し痛いくらいに、喉の奥が熱くなる。胸が締め付けられるように痛い。
あまりにもキラキラしている曲だからだろうか。それとも、本当は切ない曲だからだろうか。まだ歌詞がついていないその曲は、わたしに疑問を残していく
(——龍介さん、これはどんな曲ですか?)
最後の音が響いて、そして龍介さんが短く息を吐く。
「……どうだった?」
胸がきゅうきゅう鳴りました、なんてバカみたいなことは言えないから、一生懸命言葉を探す。でもトクトクと動いている心臓と違って、どうやら頭は停止しているみたい。
「綺麗で眩いというか。胸が高鳴るんですけど、ちょっと切なくもなります」
結局、月並みな言葉しか出てこない。もっと伝えたいことがあるはずなのに、それをどう伝えたらいいのかわからない。でも、龍介さんは穏やかな声で「ありがとう」と口にした。
「綾乃ちゃん、詞とか作ったことある?」
「作詞ですか?」
アーティストというものは、突拍子もないことを言い出すものなのか。そんな技術をわたしが持ち合わせているはずもない。わたしは、自分の顔の前で手を横にふる。なんなら首も一緒に。
「いやいやいや! できません」
「大丈夫だって。一緒に作ってみようよ。ね?」
「未知の世界すぎます。思いつくかな……」
「……俺はなんか言葉にならなくて、気持ちばかりが先走ってる感じ。あんまりこんなことないんだけど」
ピアノの音を響かせて、その鍵盤を見つめたまま彼が呟く。
「綾乃ちゃんと、作ってみたい」
その言葉は、まるで告白のように、甘く、切なく胸を貫いた。耳に残るメロディーと、わたしを真っ直ぐに射抜く彼の瞳。断る理由なんて、どこにもなくて、わたしは吸い寄せられるように、深く頷いていた。


