◇
家に戻ると、忍さんとリサが出迎えてくれる。
「お帰りなさい」
「リュウたちが遅いから先に始めちゃったわよ」
「ああ、いいよ」
忍さんの始めるという言葉に首を傾げる。すでにお酒は始めていたから、それ以外に始めるというものが思いつかなかった。
リビングに戻ると、さらに人数が増えている。ソファの隣には、誰も座っていない電子ピアノがセットされていた。そして、その傍でギターを持つのは、上原さん。
「音楽関係の方が本当に多いですね」
上原さんにそう話しかけると、目が少し見開かれたどこか驚いたような顔を向けられる。
「そうだね。そういえば、綾乃ちゃんは日本に住んでるの?」
「はい」
「りゅう、すけのこと知ってたの?」
「いえ、飛行機で偶然隣に」
「……知らなかったの?」
「はい」
少し開いた間を不思議に思い、わたしは上原さんに視線を投げ返す。そのとき、後ろからわたしの肩に誰かの手が触れて、そちらを振り返れば意味ありげに笑う忍さんがいた。
「綾乃はリュウのことを怖い人だって思ったらしいわよ」
わざとらしく大きな声でそう口にする忍さんの狙い通りだろう、少し遠くにいる龍介さんにまで聞こえたようで、彼がこちらを見た。
「それは俺もわかった。完全に怪しんでる目だったもん」
龍介さんが唇を尖らせてそう言うと、周りにいるみんなが一斉に笑う。「仕方ない」とか、「わかる」というわたしに対する同意の言葉がかけられる中、龍介さんが上原さんの傍に歩み寄り、「大丈夫だから」と、小さく告げた声が聞こえた。
「——ねぇ、アヤノ。わたしもアヤノみたいな髪にしたい」
その声の方向に顔を向ければ、ワンピースの裾を掴んだリサがわたしを見上げている。もう一度、龍介さんと上原さんを見たけれど、もう既に普通に話して笑っているようだった。
「同じにする?」
「うん!」
リサに手を引かれて歩き、一緒にソファに座る。リサの長いサラサラした髪に指を通せば、子供の髪の細さと柔らかさを感じて不思議な気持ちになった。
リサは今、十歳。もしわたしが十代で子供を産んでいたら、リサの歳になっている可能性ももちろんある。子どもが産まれたら、きっとこうして髪を結んであげることになるのだろう。母がわたしにそうしてくれたように。
そんなことに思いを馳せながらリサの髪を編みこんでいると、すぐ近くで上原さんが弾くギターの音と、龍介さんが触れている電子ピアノの音が聞こえてきた。
家に戻ると、忍さんとリサが出迎えてくれる。
「お帰りなさい」
「リュウたちが遅いから先に始めちゃったわよ」
「ああ、いいよ」
忍さんの始めるという言葉に首を傾げる。すでにお酒は始めていたから、それ以外に始めるというものが思いつかなかった。
リビングに戻ると、さらに人数が増えている。ソファの隣には、誰も座っていない電子ピアノがセットされていた。そして、その傍でギターを持つのは、上原さん。
「音楽関係の方が本当に多いですね」
上原さんにそう話しかけると、目が少し見開かれたどこか驚いたような顔を向けられる。
「そうだね。そういえば、綾乃ちゃんは日本に住んでるの?」
「はい」
「りゅう、すけのこと知ってたの?」
「いえ、飛行機で偶然隣に」
「……知らなかったの?」
「はい」
少し開いた間を不思議に思い、わたしは上原さんに視線を投げ返す。そのとき、後ろからわたしの肩に誰かの手が触れて、そちらを振り返れば意味ありげに笑う忍さんがいた。
「綾乃はリュウのことを怖い人だって思ったらしいわよ」
わざとらしく大きな声でそう口にする忍さんの狙い通りだろう、少し遠くにいる龍介さんにまで聞こえたようで、彼がこちらを見た。
「それは俺もわかった。完全に怪しんでる目だったもん」
龍介さんが唇を尖らせてそう言うと、周りにいるみんなが一斉に笑う。「仕方ない」とか、「わかる」というわたしに対する同意の言葉がかけられる中、龍介さんが上原さんの傍に歩み寄り、「大丈夫だから」と、小さく告げた声が聞こえた。
「——ねぇ、アヤノ。わたしもアヤノみたいな髪にしたい」
その声の方向に顔を向ければ、ワンピースの裾を掴んだリサがわたしを見上げている。もう一度、龍介さんと上原さんを見たけれど、もう既に普通に話して笑っているようだった。
「同じにする?」
「うん!」
リサに手を引かれて歩き、一緒にソファに座る。リサの長いサラサラした髪に指を通せば、子供の髪の細さと柔らかさを感じて不思議な気持ちになった。
リサは今、十歳。もしわたしが十代で子供を産んでいたら、リサの歳になっている可能性ももちろんある。子どもが産まれたら、きっとこうして髪を結んであげることになるのだろう。母がわたしにそうしてくれたように。
そんなことに思いを馳せながらリサの髪を編みこんでいると、すぐ近くで上原さんが弾くギターの音と、龍介さんが触れている電子ピアノの音が聞こえてきた。


