シンデレラ・スキャンダル

◇◇◇

 翌朝目覚めて、部屋から出てリビングへと向かう。すると、そこには、まだ眠気が残っているのか、金色の髪に無造作な寝癖をつけたままの彼が、窓から差し込む朝の光の中に立っていた。そのあまりにも無防備な姿に、わたしは思わず「ふふっ」と笑いをこぼしてしまう。

 わたしの声に気づいた彼が、少し照れたように微笑んで、陽を透かして輝く金色の髪を無造作に触った。

「おはようございます」

「おはよう」

 わたしも微笑みを返しながら、キッチンへと足を進める。朝食の準備を始めようと視線を巡らせると、テーブルの中央に、艶やかなオレンジ色の皮をしたパパイヤが置かれているのが目に入った。そのパパイヤを両手でそっと持ち上げ、彼のほうを振り返る。

「切ってもいいですか?」

 わたしの問いかけに、彼はコーヒーカップを口元に運びながら、優しい眼差しで頷いた。

「もちろん。ありがとう」

 彼の声は、朝の静けさに心地よく響く。波の音も遠く聞こえる。

 わたしは、傍らに置いてあった小さなフルーツナイフを手に取り、パパイヤの皮を丁寧に剥き始める。手触りは少し硬いが、包丁を入れると、甘く濃厚な香りがふわりと立ち昇った。隣に立つ彼は、カップをソーサーに戻し、興味深そうにわたしの手元を見つめている。わたしが種を取り、一口大に切り分けた途端、待ちきれない様子で手が出てきた。

「うまい」

 その声と共に、彼の口に運ばれていく切り立てのパパイヤ。その美味しさに目を見開く様子が、なんだか子供のようだ。そして、目の前に突然、その甘い果実が差し出された。

「はい、どうぞ」

 彼の指先が、わたしの唇に触れるか触れないかの距離で止まっている。

「あ……」

「食べない?」

「食べ、る……」

 わたしはあまり動けずに、どうにか唇を動かして小さく口を開けた。差し込まれた果実の甘さよりも、彼の指先の熱が唇に残ったような気がして、胸が少しだけ騒がしい。

「うまいでしょ?」

 まるで自分が作ったかのように、そう言って得意げに笑う彼の顔は、朝日に照らされている。

 龍介さんは、感情が顔によく出る人だと思う。嬉しいときは嬉しい、楽しいときは楽しい、そして、幸せなときは幸せ。そう感じて、涙まで流してしまう人。そんな彼を綺麗だと思う。だからなのか、龍介さんがいる空間はいつも眩しい。朝日が差し込むキッチンは、わたしたち二人の笑い声が溢れていく。