シンデレラ・スキャンダル

「それにしても、飛行機で会って、まさかスーパーマーケットでも会うなんて、本当に偶然よね」

「はい、本当に驚きました。まさかこんな形でまたお会いするなんて、夢にも思いませんでしたから」

「そうだよね。で、綾乃は、いつも一人でハワイに来てるの? 今回も?」

 潤さんの質問に、わたしは戸惑いつつも答えた。

「初めてです。ハワイも海外も。友人と一緒に来るはずだったんですけど、出発直前で、その人が急に来られなくなってしまったので……」

「へえ、そうなの。それは残念だったね。ちなみに、その来られなくなった友達って……男?」

「そう、ですね……」

 答えた自分の声が、蚊の鳴くようにとても小さかったのは、きっと気のせいではないだろう。

「あら、綾乃は恋人いたのね」

「恋人は……いないです」

「え? 恋人じゃないの?」

「元、恋人ですね」

 自分でも驚くほどあっさりとそう口にした。そして、その事実に、自虐的な渇いた笑いが無意識に唇から零れた。

 卓也との話を人にするときは、いつも呆れられることを前提に話している。まともな恋愛経験のある人から見れば、自分たちの関係はあまりにも奇妙で、理解しがたいものなのだろう。

 別れてから三年。きちんと付き合うわけでもなく、かと言ってきっぱりと離れるわけでもなく、白黒をつけないまま、ただ惰性で一緒に過ごしている関係。そんな関係を、人が不思議に思うのは当たり前。

「笑ってる場合じゃないわよ、綾乃。あなた、その人のこと好きなの?」

「きっともうそんな感情じゃないんですよね……」

「それでいいの? 素敵な出会いがいっぱいあるのに、腐れ縁が残ったままじゃ出会いに気付かなくなるわ」

「まあ、忍。綾乃だって色々あるんだよ。でも僕も新しい出会いには賛成だな。ところで龍介はどうなの?」

「そうよ! リュウがいるじゃない。こんな素敵な出会い、そうはないわ」

「でも龍介さんとは出会ったばかりで」

 そう、出会ったばかりなのだ。それなのに、龍介さんのこの優しさは、ある意味で異常だと思う。初めて会った人間の世話を焼いて、心配だからと自分のところに呼んで、ご飯を食べさせる。

「龍介さんってお人好しですよね」

「お人好し。確かにね」

「優しいにも程があります」

「ふふ、そうね。でも、それがリュウだから」

 お人好しで優しいのが龍介さん。そう言って忍さんが笑う。

 龍介さんは、あまりにも無防備だ。わたしのような人間が、その優しさを利用するかもしれないとは考えないのだろうか。何も求めず、ただ与えてくれる。その眩しさに、少し目が眩む。勝手に龍介さんを心配していたら、「ところで、綾乃はどこに泊まるの?」と忍さんが顔を覗き込んできた。