◇◇◇
オフィスで帰り支度をしながら、ふと天気を確かめようと窓に視線を向けたら、胸元で昨日もらったばかりのネックレスが光を放った。
「綺麗……」
龍介さんが知り合いのデザイナーさんに頼んで、特注で作ってもらったネックレスのペンダントトップには、小さな指輪が輝いている。指輪をつければそれだけで噂がたつからと、龍介さんは自分でもつけられるように、お互いのペンダントトップに小さな指輪をあしらった。
卓也に同行し訪問したクライアント先でも、「素敵なネックレスですね」と褒められて、つい頬が熱くなってしまった。龍介さんにもらったものを褒められるのは嬉しくて、ふわふわと浮き足立つ自分を止められない。
オフィスに戻って仕事をしている間にも、ことあるごとにネックレスを触ってニヤニヤする自分がいる。本当に顔、引き締めなくちゃ。一人きりのオフィスでネックレス触りながら笑っているって、結構重症。
顔をぺちんと叩いて、コートとバッグを手にした瞬間、内線が鳴り響く。卓也の部屋からなっていることを表す赤いランプがついている。
「はい、松嶋です」
「そろそろ仕事終わるだろ? 部屋、来てよ」
「なにかご指示ですか?」
「いいから、来て」
電話の向こうで受話器が置かれる音がして、通話が切れた。
(本当に、いつもこうなんだから。今、帰ろうとしているところなのに)
コートとバッグを椅子の上に置き、メモを手にして卓也の部屋に向かう。
いつもどおり、丁寧にドアを叩くと、中から「どうぞ」と声が聞こえてくる。視線を下げたまま部屋に入り、一礼すると、すぐに機嫌の良さそうな声が降ってきた。
「綾乃、この後ご飯食べに行こうよ。渋谷のホテル、スイート空いてるっていうからさ」
「え?」
顔を上げれば、スマホを操作しながら右側の口角だけを上げて話す卓也の姿。その目はわたしに向けられず、画面をとらえたまま。
「時間も早いし買い物付き合うよ。好きなものなんでも買ってあげる。バッグでもアクセサリーでも。可愛いって言ってたサンローランのバッグ、色違いで買ったら?」
「……申し訳ありませんが、結構です」
「なんで?」
こちらに向けられたのは、とても不思議そうな顔。卓也に誘われれば、二つ返事で行っていた自分を思い出す。
「好きな人がいると言ったはずです。そういうことは、しません」
「ハワイのやつと、まだ続いているの?」
口を開かずに卓也の視線を受け止めてから、ゆっくりと目を閉じる。
「いい加減にしたら? もう二十八になるだろ」
「だからなによ。仕事の話がないなら、帰ります」
身体を翻してドアに向かったわたしを卓也が追いかけてきて、右腕を掴んだ。
オフィスで帰り支度をしながら、ふと天気を確かめようと窓に視線を向けたら、胸元で昨日もらったばかりのネックレスが光を放った。
「綺麗……」
龍介さんが知り合いのデザイナーさんに頼んで、特注で作ってもらったネックレスのペンダントトップには、小さな指輪が輝いている。指輪をつければそれだけで噂がたつからと、龍介さんは自分でもつけられるように、お互いのペンダントトップに小さな指輪をあしらった。
卓也に同行し訪問したクライアント先でも、「素敵なネックレスですね」と褒められて、つい頬が熱くなってしまった。龍介さんにもらったものを褒められるのは嬉しくて、ふわふわと浮き足立つ自分を止められない。
オフィスに戻って仕事をしている間にも、ことあるごとにネックレスを触ってニヤニヤする自分がいる。本当に顔、引き締めなくちゃ。一人きりのオフィスでネックレス触りながら笑っているって、結構重症。
顔をぺちんと叩いて、コートとバッグを手にした瞬間、内線が鳴り響く。卓也の部屋からなっていることを表す赤いランプがついている。
「はい、松嶋です」
「そろそろ仕事終わるだろ? 部屋、来てよ」
「なにかご指示ですか?」
「いいから、来て」
電話の向こうで受話器が置かれる音がして、通話が切れた。
(本当に、いつもこうなんだから。今、帰ろうとしているところなのに)
コートとバッグを椅子の上に置き、メモを手にして卓也の部屋に向かう。
いつもどおり、丁寧にドアを叩くと、中から「どうぞ」と声が聞こえてくる。視線を下げたまま部屋に入り、一礼すると、すぐに機嫌の良さそうな声が降ってきた。
「綾乃、この後ご飯食べに行こうよ。渋谷のホテル、スイート空いてるっていうからさ」
「え?」
顔を上げれば、スマホを操作しながら右側の口角だけを上げて話す卓也の姿。その目はわたしに向けられず、画面をとらえたまま。
「時間も早いし買い物付き合うよ。好きなものなんでも買ってあげる。バッグでもアクセサリーでも。可愛いって言ってたサンローランのバッグ、色違いで買ったら?」
「……申し訳ありませんが、結構です」
「なんで?」
こちらに向けられたのは、とても不思議そうな顔。卓也に誘われれば、二つ返事で行っていた自分を思い出す。
「好きな人がいると言ったはずです。そういうことは、しません」
「ハワイのやつと、まだ続いているの?」
口を開かずに卓也の視線を受け止めてから、ゆっくりと目を閉じる。
「いい加減にしたら? もう二十八になるだろ」
「だからなによ。仕事の話がないなら、帰ります」
身体を翻してドアに向かったわたしを卓也が追いかけてきて、右腕を掴んだ。


