シンデレラ・スキャンダル

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 ハワイでもらった黒い帽子を目深に被り、人もまばらな日曜日の夕暮れの街を歩く。龍介さんのマンションからほど近いスーパーからの帰り道。龍介さんの言葉を思い返していた。

「もう32歳なんだから、恋人がいてもいいと思うんだよね。でも、ファンのみんなにはショックを与えるとは思う。少なからず。だから、おおやけになるときはスクープされるとかじゃなくて、ちゃんと自分の口から伝えたいって思ってる。まあ、理想なんだけど」

「そうですよね」

「今までやって来られたのは、メンバーはもちろんだけど、何よりファンのみんなが支えてくれたからなんだ。俺が歌えるのも、Legacyを続けていられるのも。だから、ファンのこともメンバーのことも、大切にしたい」

「……わたし、龍介さんのそういうところ大好きです」

「え?」

「龍介さんの人に対する考え方とか、ファンの方に対する考え方とか本当に真っ直ぐで温かくて……好きなんです」

「そう、かな。でも、綾乃のことは一番大事だよ」

「わたしは会社のことも、Legacyのことも、ファンの方のこともすべてを大切にしている龍介さんが好きです」

 そう言ったわたしを見て、驚いた顔をしていた龍介さん。もし、わたしがこんなことを言ったら、龍介さんは更に驚くかもしれない。龍介さんのことだから、それは男の役目だって言うかもしれない。

 でも、わたしは思った。あなたのことを守りたいと。誇らしげに、嬉しそうに、宝物を見せるみたいに話してくれるあなたを見て、あの時、心からそう思ったから。

 今、目の前にある、あなたの笑顔を守りたい。あなたの大切なものを守りたい。あなたが笑っていてくれるなら、あなたがあなたらしくいられるなら、わたしはそれを守っていきたい。

 ——たとえ、何が起こっても。