シンデレラ・スキャンダル

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 龍介さんに渡された鍵で、毎日のように龍介さんの家に帰る日々になった。龍介さんは、年末に向けて本当に忙しいみたい。一緒にいられるのは龍介さんが寝に帰ってくる四時間だけという日もあれば、リハーサルで地方に行っていて、全く会えない日もある。

 龍介さんを間近で見るようになって、叶えたい夢を持った人は、こんなにもがむしゃらに突き進むものなのかと思った。彼は彼のすべてを注ぎこむようにして、夢を追い続けている。筋力を高めるためのトレーニング、体力をつけるための走り込み、精神も一緒に鍛えるために空手やボクシングも取り入れる。

 それに加えて歌やピアノ、ギターの練習、作曲、作詞、レコーディング。コンサートのリハーサルに、打ち合わせにテレビの収録、雑誌のインタビュー。そして、翌年に行うソロのドームツアーの準備。

「楽しみにしてくれているファンのみんなのために、最高のものを届けたい」

 彼はことあるごとに、そう口にする。

 自分を律して、節制して自重する。倒れそうになるほどのトレーニングも、厳しい節制も、口に入るものへのこだわりも、すべてが歌のため。すべては最高の状態で、ファンを迎えるため。

 事務所に所属する他のアーティストたちから神様を見るような眼差しを向けられて、ファンからは飲み込まれてしまうような歓声と拍手の波、夢と希望に満ちた瞳を向けられる彼は、眩しいほどに光り輝く星の王子様。


 自分の言動が、自分の曲が、歌がどれだけの人に影響を及ぼすかを常に考える彼の姿は、誇らしくもあり、儚くもある。形がない夢。保証のない未来。それでも、それを全身全霊で追いかける彼の横顔は、ずっと見つめていたいほどに強く、どこまでも美しい。

 わたしにできるのは、その姿をただ見守って、時々頷いて、龍介さんがこちらを見た時に微笑むこと。彼が背負うものを一緒に持つことができるわけではない。減らすこともできないし、減らすことが良いわけではない。だから、わたしは龍介さんを信じるだけ。