シンデレラ・スキャンダル




 卓也と共に、会場に戻り、出席者一人ひとりに丁寧な挨拶を重ねていく。

 そして、最後に待っていたのが、本日の主役であるLegacyの面々だった。龍介さんを始め、メンバー全員が爽やかな笑顔を浮かべ、「ありがとうございました」と深く頭を下げていく。

 龍介さんがサングラスを外す。解放された彼の瞳は、光を吸い込むかのように輝いている。彼は、一歩前に出て、卓也と向かい合った。

「今日は、ありがとうございました」

「こちらこそ。My Cinderella Girl……でしたっけ? Dawnとは全く違いますけど、とてもいい曲でしたね。本当に……ハワイの情景が浮かぶようで」

「……ありがとうございます」

「運命の恋がテーマ、ですかね。僕は、仕事人間で、恋や愛を人生の中心に据えることはしない主義なんです。合理性に欠けますからね。だけど、今日の曲は、そんな僕でさえ、女性の聴衆には深く響くんだろうな、と感じさせられました」

「……そうかもしれないですね」

「それにしても、ステージ上のワイルドなイメージと、こうして間近で拝見する、サングラスを外したときとのギャップがすごいですね。それにあんな甘い声で、切ないメロディを歌えば、それはもう相当モテるでしょう? なあ、綾乃」

「……え」

 突然、卓也に会話を振られ、わたしの心臓は一瞬、飛び跳ねた。どう答えるべきか。何も気の利いた言葉を返せず、ただ間の抜けた声を出してしまったわたしは、慌てて龍介さんを見上げた。龍介さんは、わたしの視線に気づいて、優しくふわりと笑みを溢す。

「あの……」

 卓也はわたしの返事に呆れたのか、首を振ると、龍介さんに向き直った。

「まあ、こいつはLegacyさんみたいなタイプの方々とは関わったことがないんで、怯えていたと思うんですが。すみませんね」



 挨拶を終えると、すぐに仁さんが卓也を含めたディアブロの役員たちを連れ出して会場を出ていく。秘書のメンバーはそれを見送ると、呼ばれていたタクシーに次々乗り込んで家路についていく。

 全員を見送り終えて、やっと短く息を漏らしたところに、落ち葉と共に冷たい風が過ぎていく。朝晩は冷え込むようになってきて、そろそろ薄手のコートでも羽織らないと風邪をひいてしまいそうだ。

 自分の両腕を擦っていると、目の前に黒い大きな車が音もなく停まり、下がったウインドウから見知った顔が現れた。

「綾乃ちゃん!」

「畑中さん、こんばんは」

「後ろに乗って」

 後部座席に乗り込むと、微かに龍介さんの香水が鼻をかすめる。

「久しぶりだね」

「さっきは、全然お話できませんでしたね」

「俺がバタバタしてたからね。でも、良かったね、時間ができて。龍も喜んでたよ。あいつ、隠しごととかしないタイプだからさ、すっげえニコニコしてんの。見てるこっちが笑っちゃってさ」

「うふふ」

「それ見た優斗がまた嬉しそうでさ。あの兄弟、面白いでしょ」

「本当に兄弟みたいですよね」