「龍、優斗、ディアブロの役員さんに挨拶するから」
仁さん、龍介さんと優くんが立ち上がり歩き出す。龍介さんと卓也が話すなんて、正直なところ望んでいない。でも逃げ出すわけにもいかず、前を歩く三人の後ろをとぼとぼと歩く。
下を向いて歩くわたしの髪に一瞬だけなにかが触れた感覚があり、顔を上げれば、龍介さんの笑顔があった。
「大丈夫だよ」
彼はそう囁いて、また前を見る。
「初めまして。LegacyのRYUです」
「YUTOです。よろしくお願いします」
「田辺です。よろしく。今回のDawnは、RYUさんが作詞されたんですよね?」
「はい。曲も使って頂いて、ありがとうございます」
「本当は皆さんにご出演頂きたいくらいなんですが、予算も厳しくてね。YUTOさん、お一人だけになりそうです。売り上げが伸びれば、次回はぜひ皆さんにご出演頂きたいですね」
「ありがとうございます」
「……綾乃」
卓也に呼ばれて、少しだけ前に出て龍介さんと優斗くんの間に立つ。
「はい」
「うちの秘書です。お相手頂いているようで、ありがとうございます」
唇の端を引き上げたまま、小さく頭を下げる。
クライアントとの席では松嶋さんと呼ぶはずなのに、こんな時に限って下の名前で呼ぶ。わたしの心臓はさっきから嫌な音を立てて、キリキリとなにかに締め付けられているように苦しい。
「秘書の方と話す機会なんて中々ないので、新鮮ですよ。本当に才色兼備な方ですね。うちも秘書おこうかな」
仁さんが穏やかな微笑みを浮かべながら告げる。
「そんなにお褒め頂いて。良かったな、綾乃」
「恐れ入ります」
「こいつは本当に芸能界とか含めて華やかな世界に興味がなくてね。俺とは昔からの付き合いなんですけど、昔っからこうで、見た目の割に真面目でかたくて面白味がないんです」
卓也が、つまらなそうに言い捨てる。その瞬間、空気がピリリと凍りついた気がした。
「……そういうところが、彼女の一番の魅力じゃないですか」
龍介さんの声が、静かに、けれど鋭く響く。彼は卓也を真っ直ぐに見据え、一歩も引かない。
「純粋で優しくて素敵な方ですよ」
「……そう、ですか?」
「はい。そうだ、田辺さん。この後、歌わせて頂きますので」
龍介さんが一歩前に出て、わたしと卓也の間に立った。どうやら卓也と握手をしているようだけど、わたしには龍介さんの背中しか見えない。
仁さん、龍介さんと優くんが立ち上がり歩き出す。龍介さんと卓也が話すなんて、正直なところ望んでいない。でも逃げ出すわけにもいかず、前を歩く三人の後ろをとぼとぼと歩く。
下を向いて歩くわたしの髪に一瞬だけなにかが触れた感覚があり、顔を上げれば、龍介さんの笑顔があった。
「大丈夫だよ」
彼はそう囁いて、また前を見る。
「初めまして。LegacyのRYUです」
「YUTOです。よろしくお願いします」
「田辺です。よろしく。今回のDawnは、RYUさんが作詞されたんですよね?」
「はい。曲も使って頂いて、ありがとうございます」
「本当は皆さんにご出演頂きたいくらいなんですが、予算も厳しくてね。YUTOさん、お一人だけになりそうです。売り上げが伸びれば、次回はぜひ皆さんにご出演頂きたいですね」
「ありがとうございます」
「……綾乃」
卓也に呼ばれて、少しだけ前に出て龍介さんと優斗くんの間に立つ。
「はい」
「うちの秘書です。お相手頂いているようで、ありがとうございます」
唇の端を引き上げたまま、小さく頭を下げる。
クライアントとの席では松嶋さんと呼ぶはずなのに、こんな時に限って下の名前で呼ぶ。わたしの心臓はさっきから嫌な音を立てて、キリキリとなにかに締め付けられているように苦しい。
「秘書の方と話す機会なんて中々ないので、新鮮ですよ。本当に才色兼備な方ですね。うちも秘書おこうかな」
仁さんが穏やかな微笑みを浮かべながら告げる。
「そんなにお褒め頂いて。良かったな、綾乃」
「恐れ入ります」
「こいつは本当に芸能界とか含めて華やかな世界に興味がなくてね。俺とは昔からの付き合いなんですけど、昔っからこうで、見た目の割に真面目でかたくて面白味がないんです」
卓也が、つまらなそうに言い捨てる。その瞬間、空気がピリリと凍りついた気がした。
「……そういうところが、彼女の一番の魅力じゃないですか」
龍介さんの声が、静かに、けれど鋭く響く。彼は卓也を真っ直ぐに見据え、一歩も引かない。
「純粋で優しくて素敵な方ですよ」
「……そう、ですか?」
「はい。そうだ、田辺さん。この後、歌わせて頂きますので」
龍介さんが一歩前に出て、わたしと卓也の間に立った。どうやら卓也と握手をしているようだけど、わたしには龍介さんの背中しか見えない。


