ねーちゃん?と同居

「母さん!」

 病院に行くと泣いている母さんの背中を父さんがさすっていた。
「和希」
 ねーちゃんは手術中だった。
「人をよけて電柱に突っ込んだらしいのよ」
 ねーちゃんは頭を打ち付けて、さらに身体も車と電柱に挟まったらしく、重体ということだった。
 幽体離脱したねーちゃんのことは両親には見えないようだった。
「私、死ぬのかな」
 ねーちゃんがポツリと言った。
「大丈夫だよ。死なないよ」
 俺は母さんとねーちゃん二人に言うように言った。
 しばらくして、手術室のランプが消えた。
「手術は成功で、命に別状はありませんが、意識がまだ戻りません」
 医者はそう説明をした。
 そうだろう。ねーちゃんは俺の隣にまだいるのだから。
「ねーちゃん、身体に戻れないの?」
 こそっと俺が言うと、ねーちゃんは顔を曇らせて、
「どうすれば戻れるか分からない」
 と言った。このままねーちゃんが身体に戻れなかったら、ねーちゃんは死んでしまうのだろうか。もしくは植物人間状態になるのだろうか。そんなの、嫌だ!

「母さんが呼びつけて悪かったな。手術は成功したんだし、那月は父さんたち二人で見とくから、和希は帰りなさい。明日も仕事があるんだろう?」
「うん……」
 俺は気が進まないけれど帰るしかなかった。他にどうすることも出来なかった。


「ねーちゃん。俺、生きてるねーちゃんに会いたいよ」
 帰りの運転中、俺が言うと、ねーちゃんは、
「分かってるよ。私だって早く戻りたいよ。でもどうしたら戻れるかわからないんだもの」
 焦ったように言った。その声を聞いて、俺はねーちゃんにとやかく言うのをやめた。本人が一番苦しいはずだ。