『ざまあ宣言』から五か月後。
僕らは例のゴミ箱横のベンチに腰かけていた。
どっちもお馴染みの格好だ。
僕は白のジャージ+紺のシャカパン。
永良は上下黒のジャージ姿だ。
そんな僕らを満開の金木犀が囲っている。
甘くて清涼感のある香りが何とも心地いい。
「どうだ!」
永良がキラッキラな笑顔で賞状を見せてきた。
『オータム・オープン 男子平泳ぎ200メートル 第八位 永良悟行 殿 』……と書かれている。
大学生や社会人がいる中での八位だ。
永良はもう無名なんかじゃない。
「俺だってやりゃ出来るんだよ!」
「そうだね。永良は本当によく頑張ったと思うよ」
お腹まわりをはじめとした全身の筋肉を鍛えるのと共に、フォームもしっかりと矯正して、『反り腰』を直してみせた。
言うは易く行うは難し。
誰にでも出来ることじゃない。
「ありがとう。僕のために頑張ってくれて」
「っ!!? ばばばばっ、バカ! 別にそんなんじゃねーよ……」
ツンデレ炸裂。
そんなふうにされたら、揶揄いたくなるのが人間の性だよね?(クソデカ主語)
悪戯心の成すままに永良の頭を撫でてみる。
おぉ……。ふわふわだ。僕のとは全然違う。
「なっ!? っ、にすんだこのバカ!!」
弾かれた。
他でもない永良の手で。
「……痛いな」
「あっ、頭ぽんぽんとか……~~っ、調子に乗んなよこのバカ!!!」
「君が煽るから」
「どこがだ!! 勘違いしてんじゃねーぞ!! この『のっぺりゴリラ』が!!!」
「ひどい……。僕のことそんなふうに思ってたの?」
「えっ!? あ、……いや……っ」
「のっぺりゴリラか……」
膝を抱えて落ち込んだフリをしてみる。
すると案の定、永良がおろおろし出す。
「わっ、悪かったって! 今のはその……言葉のあやで――」
「じゃあ、カッコイイ?」
「うぐっ!?」
「……うそつき」
「違っ……う゛っ……がああぁああ!!! そっ、そうだな!! 俺の次ぐらいにはカッコイイんじゃねえの!?」
「ふはっ! 何それ」
「~~っ!!!!!!!!!」
膝から顔を上げて笑う。
永良は――顔を俯かせていた。
おまけに肩までぷるぷるさせて。
怒ってるのかな? それとも悔しがってる?
またいいように踊らされたって。
「えっ? あ、ちょっと……」
永良は顔を俯けたまま、超高速で賞状を丸めた。
そうしてそのまま荷物をまとめて立ち上がる。
一歩二歩と歩き出したので、僕は慌てて彼の腕を掴んだ。
永良は背中を向けたままだ。
いつもみたいにギャンギャン吠えてくれればいいのに。
そんなふうに黙られると……ちょっと困る。
「離せよ」
「ヤダ。もうちょっと話そうよ」
「……反省会なら望むとこだけど」
「その前に雑談しよう」
大きな舌打ちが返ってきた。
もうずっとこんな調子だ。
僕が一歩踏み込むと、永良は二歩下がる。
好きな食べ物は?
好きな色は?
趣味は? 練習が休みな日は何をしてるの?
君のことが知りたいんだ。
だから、何でもいいから教えて。
そう言って、きちんとお願いをしているのに永良はちっとも応えてくれない。
「別に俺のことなんてどーだっていいだろ」
そう。ずっとこの繰り返しだ。
僕の聞き方が悪いのかな?
偉そうに聞こえる?
そもそも論で永良は自分のことをあまり話したくないタイプ?
全然分からない。だから、聞く。
原因が分からないことには何も始まらないから。
「ねえ、どうしてそんなに頑ななの?」
「…………」
「僕は君と仲良くなりたい。だけど、君は違うってこと?」
「……おっ、……俺は……」
「うん」
「おっ、~~っ、俺はお前の主人公だ!!!」
「えっ? あ、……うん。そうだね」
「だっ、だから!! お前とは馴れ合わねえ!!!」
「……は? あっ! 永良!!」
呆気に取られているうちに、腕を振り払われてしまった。
僕は大慌てで彼の後を追う。
僕らは例のゴミ箱横のベンチに腰かけていた。
どっちもお馴染みの格好だ。
僕は白のジャージ+紺のシャカパン。
永良は上下黒のジャージ姿だ。
そんな僕らを満開の金木犀が囲っている。
甘くて清涼感のある香りが何とも心地いい。
「どうだ!」
永良がキラッキラな笑顔で賞状を見せてきた。
『オータム・オープン 男子平泳ぎ200メートル 第八位 永良悟行 殿 』……と書かれている。
大学生や社会人がいる中での八位だ。
永良はもう無名なんかじゃない。
「俺だってやりゃ出来るんだよ!」
「そうだね。永良は本当によく頑張ったと思うよ」
お腹まわりをはじめとした全身の筋肉を鍛えるのと共に、フォームもしっかりと矯正して、『反り腰』を直してみせた。
言うは易く行うは難し。
誰にでも出来ることじゃない。
「ありがとう。僕のために頑張ってくれて」
「っ!!? ばばばばっ、バカ! 別にそんなんじゃねーよ……」
ツンデレ炸裂。
そんなふうにされたら、揶揄いたくなるのが人間の性だよね?(クソデカ主語)
悪戯心の成すままに永良の頭を撫でてみる。
おぉ……。ふわふわだ。僕のとは全然違う。
「なっ!? っ、にすんだこのバカ!!」
弾かれた。
他でもない永良の手で。
「……痛いな」
「あっ、頭ぽんぽんとか……~~っ、調子に乗んなよこのバカ!!!」
「君が煽るから」
「どこがだ!! 勘違いしてんじゃねーぞ!! この『のっぺりゴリラ』が!!!」
「ひどい……。僕のことそんなふうに思ってたの?」
「えっ!? あ、……いや……っ」
「のっぺりゴリラか……」
膝を抱えて落ち込んだフリをしてみる。
すると案の定、永良がおろおろし出す。
「わっ、悪かったって! 今のはその……言葉のあやで――」
「じゃあ、カッコイイ?」
「うぐっ!?」
「……うそつき」
「違っ……う゛っ……がああぁああ!!! そっ、そうだな!! 俺の次ぐらいにはカッコイイんじゃねえの!?」
「ふはっ! 何それ」
「~~っ!!!!!!!!!」
膝から顔を上げて笑う。
永良は――顔を俯かせていた。
おまけに肩までぷるぷるさせて。
怒ってるのかな? それとも悔しがってる?
またいいように踊らされたって。
「えっ? あ、ちょっと……」
永良は顔を俯けたまま、超高速で賞状を丸めた。
そうしてそのまま荷物をまとめて立ち上がる。
一歩二歩と歩き出したので、僕は慌てて彼の腕を掴んだ。
永良は背中を向けたままだ。
いつもみたいにギャンギャン吠えてくれればいいのに。
そんなふうに黙られると……ちょっと困る。
「離せよ」
「ヤダ。もうちょっと話そうよ」
「……反省会なら望むとこだけど」
「その前に雑談しよう」
大きな舌打ちが返ってきた。
もうずっとこんな調子だ。
僕が一歩踏み込むと、永良は二歩下がる。
好きな食べ物は?
好きな色は?
趣味は? 練習が休みな日は何をしてるの?
君のことが知りたいんだ。
だから、何でもいいから教えて。
そう言って、きちんとお願いをしているのに永良はちっとも応えてくれない。
「別に俺のことなんてどーだっていいだろ」
そう。ずっとこの繰り返しだ。
僕の聞き方が悪いのかな?
偉そうに聞こえる?
そもそも論で永良は自分のことをあまり話したくないタイプ?
全然分からない。だから、聞く。
原因が分からないことには何も始まらないから。
「ねえ、どうしてそんなに頑ななの?」
「…………」
「僕は君と仲良くなりたい。だけど、君は違うってこと?」
「……おっ、……俺は……」
「うん」
「おっ、~~っ、俺はお前の主人公だ!!!」
「えっ? あ、……うん。そうだね」
「だっ、だから!! お前とは馴れ合わねえ!!!」
「……は? あっ! 永良!!」
呆気に取られているうちに、腕を振り払われてしまった。
僕は大慌てで彼の後を追う。
