余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。

「オレと結婚してくれ!!!」

澄んだ秋空に響き渡る、求婚の調べ。
振り向くと紅髪の少年ユーリが立っていた。

小さな白い花を握り締めている。
花だけでなく指にまで土がついていた。
そんな彼の背後では、牛がマイペースに「もぉ~」と鳴いている。

何もかもが不格好なプロポーズ。
それなのに胸の奥がじん、と熱くなる。
貴方とならもしかしたら――。

秋の冷たい風がわたくしのミルキーブロンドの髪を揺らす。
その影に紛れるように、きゅっと唇を噛んだ。

夢は夢のままで。
そう自分に言い聞かせて、小さな彼と視線を合わせる。

「……っ」

彼はたじろいだ。
けれど、直ぐに持ち直す。
下がった右足を前へ。
ぐっと顎に力を込めて見つめ返してくる。

「ありがとう、ユーリ。とっても嬉しいわ」

ユーリの手に自分の手を重ねる。
わたくしのものよりも一回り以上小さなその手は、汗でしっとりと濡れていた。

「……OKってことでいいのか?」
「ええ。喜んで」

ユーリの手から滑りかけた花を受け取り、そっと胸に抱く。
太陽を思わせるような甘く香ばしい香りがした。
ユーリ、貴方を思わせる香りね。

「~~っ! よっしゃー!」

ユーリは跳ね回る。
ウサギのように、何度も、何度も。
そのあまりの無邪気さに、周囲で見守っていた大人達からも笑みが零れた。

わたくしも笑みを浮かべる。
その真意が決して暴かれることのないように。

これは叶わぬ恋。
この出来事も、互いの存在すらも、いつかは露のように消えていくのだと――そう思っていた。

あれから三十年。
わたくし達は今も愛し合っている。
死で分かたれてしまった今でさえも。