トラックドライバーの怖い話
ヒッチハイクで日本一周見届け隊
1500回視聴
××県の海沿いを南下中。眠気覚ましに聞いたトラックドライバーの話。
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道路の路肩にカメラを置き、写りを調整している男。辺りが暗いからか、ざらりとした質感の映像。
男は大きな画用紙に何かを書いて手に持ち、懐中電灯でそれを当てるように持って掲げた。
『となりで眠ってもいいですか』
と、書かれている。
車のライトが近づくたびにアピールするが、何台も通り過ぎている様子が早送りで映っている。
そうして止まったのが一台のトラック。ハザードをつけながら男を少し通り過ごして停車した。車の窓に向かって何やら交渉し、カメラの方に向かって手で大きく○をつくるとカメラの方に向かって走ってきた。
その後、切り替わって車内の様子が映し出される。ボックスティッシュやドリンクホルダーはついているが、これといった特別な装飾はない。
ドライバーは恰幅の良さそうな男性。話はもうついているのか、顔を映さずカメラを向けている。
「こんな時間なんで寝ちゃってるかもしれないですけど」
「なにいってんの。こっちは眠気覚ましに乗せたのに」
「あの……これ……」
カサカサと音がしている。プラカードを見せているようだった。
「なに。よそ見できないから」
「となりで眠ってもいいですか」
「だめ」
「ああ……」
「降りて野宿する?」
「いえ、もう少し乗せて下さい」
取るに足らない話が続いたのか編集されていた。
ヒッチハイカーの男は自分自身にカメラを向けている。
暗くて外の様子はわからない。画面はときおり揺れ、エンジン音と走行音がかすかに聞こえる。
「幽霊とか乗せたことないんですか」
「幽霊とか乗せたことがあるとして、それが幽霊だとわかるのはどんなときだと思う?」
意外な返答であったのか、ヒッチハイカーは驚いたようにドライバーの方を見た。
「ええと……消えたとか……ブレーキがきかなくなるとか、なんらかのトラブルが発生するとか?」
「そうだよね。そんだけわかりやすいとね、あ、出会っちゃったなって思うんだけど……この前さ、妙な女の子がいたんだよね」
ドライバーがなにかを語ろうとするのを察したのか、ヒッチハイカーは自撮りしながらチラッとカメラを見て、今度は意識的に怯えた表情を見せた。
「来る日も来る日も、同じ場所にいて。そこはバス停ではないんだよな。でも、道路沿いになぜかベンチのような物が置いてあって、そこにずっと座ってるの。こっちはだいたい夜間に通るから、それ以外の時間をどうしているのかわかんないんだけど」
ヒッチハイカーは固唾をのんで聞き入っている。
「あるとき、またいるなぁって思ってたら、急に立ち上がって。とうとう覚悟を決めたのかと」
「覚悟?」
「そう。死ぬ覚悟」
「ええ?」
「わかんないけど、そんなふうに思ったんだよ。ふらふらって。こんな大型車の前に飛び出して。それでこっちは慌ててブレーキ踏んだの。寸前のところで止まって。普通なら危ねぇだろこの野郎って罵りたくなるところだけど、肝が冷えてね。その女の子、平然とこっちを見ててさ。死にたかったのにって、恨めしそうな顔してんの。いくら向こうが百パー悪くても、自分がひき殺したとなったら、それはやっぱりうろたえるでしょ。人の命ってそんなに軽くないし。そう、こっちは怖くなった。幽霊なんか出会わなくても怖いことなんていっぱいあんだよ」
ヒッチハイカーは眉をひそめてうなずいている。
「それで、その子は?」
「運転席側に回ってきて、乗せてくれって」
「怖いじゃないですか」
「そうだね。いやむしろのんきすぎて逆にふざけんなと思ったかな」
「なるほど」
「だけど、仕方ないから乗せてやったよ。フェリーに乗りたいってさ。だから近くまで送ってやった。そのあと、行けたかな。まさか海に飛び込んだわけじゃないだろうからね。きみは、追いかけてみる気ないの? なんとかチューバーでしょ。そういうの、好きじゃない。あとでチャンネル教えてよ。どうなったか見たいから」
ヒッチハイクで日本一周見届け隊
1500回視聴
××県の海沿いを南下中。眠気覚ましに聞いたトラックドライバーの話。
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道路の路肩にカメラを置き、写りを調整している男。辺りが暗いからか、ざらりとした質感の映像。
男は大きな画用紙に何かを書いて手に持ち、懐中電灯でそれを当てるように持って掲げた。
『となりで眠ってもいいですか』
と、書かれている。
車のライトが近づくたびにアピールするが、何台も通り過ぎている様子が早送りで映っている。
そうして止まったのが一台のトラック。ハザードをつけながら男を少し通り過ごして停車した。車の窓に向かって何やら交渉し、カメラの方に向かって手で大きく○をつくるとカメラの方に向かって走ってきた。
その後、切り替わって車内の様子が映し出される。ボックスティッシュやドリンクホルダーはついているが、これといった特別な装飾はない。
ドライバーは恰幅の良さそうな男性。話はもうついているのか、顔を映さずカメラを向けている。
「こんな時間なんで寝ちゃってるかもしれないですけど」
「なにいってんの。こっちは眠気覚ましに乗せたのに」
「あの……これ……」
カサカサと音がしている。プラカードを見せているようだった。
「なに。よそ見できないから」
「となりで眠ってもいいですか」
「だめ」
「ああ……」
「降りて野宿する?」
「いえ、もう少し乗せて下さい」
取るに足らない話が続いたのか編集されていた。
ヒッチハイカーの男は自分自身にカメラを向けている。
暗くて外の様子はわからない。画面はときおり揺れ、エンジン音と走行音がかすかに聞こえる。
「幽霊とか乗せたことないんですか」
「幽霊とか乗せたことがあるとして、それが幽霊だとわかるのはどんなときだと思う?」
意外な返答であったのか、ヒッチハイカーは驚いたようにドライバーの方を見た。
「ええと……消えたとか……ブレーキがきかなくなるとか、なんらかのトラブルが発生するとか?」
「そうだよね。そんだけわかりやすいとね、あ、出会っちゃったなって思うんだけど……この前さ、妙な女の子がいたんだよね」
ドライバーがなにかを語ろうとするのを察したのか、ヒッチハイカーは自撮りしながらチラッとカメラを見て、今度は意識的に怯えた表情を見せた。
「来る日も来る日も、同じ場所にいて。そこはバス停ではないんだよな。でも、道路沿いになぜかベンチのような物が置いてあって、そこにずっと座ってるの。こっちはだいたい夜間に通るから、それ以外の時間をどうしているのかわかんないんだけど」
ヒッチハイカーは固唾をのんで聞き入っている。
「あるとき、またいるなぁって思ってたら、急に立ち上がって。とうとう覚悟を決めたのかと」
「覚悟?」
「そう。死ぬ覚悟」
「ええ?」
「わかんないけど、そんなふうに思ったんだよ。ふらふらって。こんな大型車の前に飛び出して。それでこっちは慌ててブレーキ踏んだの。寸前のところで止まって。普通なら危ねぇだろこの野郎って罵りたくなるところだけど、肝が冷えてね。その女の子、平然とこっちを見ててさ。死にたかったのにって、恨めしそうな顔してんの。いくら向こうが百パー悪くても、自分がひき殺したとなったら、それはやっぱりうろたえるでしょ。人の命ってそんなに軽くないし。そう、こっちは怖くなった。幽霊なんか出会わなくても怖いことなんていっぱいあんだよ」
ヒッチハイカーは眉をひそめてうなずいている。
「それで、その子は?」
「運転席側に回ってきて、乗せてくれって」
「怖いじゃないですか」
「そうだね。いやむしろのんきすぎて逆にふざけんなと思ったかな」
「なるほど」
「だけど、仕方ないから乗せてやったよ。フェリーに乗りたいってさ。だから近くまで送ってやった。そのあと、行けたかな。まさか海に飛び込んだわけじゃないだろうからね。きみは、追いかけてみる気ないの? なんとかチューバーでしょ。そういうの、好きじゃない。あとでチャンネル教えてよ。どうなったか見たいから」



