黒蛇様と契りの贄姫

 この沈黙を破ったのは山吹だった。

「完敗だねぇ、桜河。おまえの心配はわかるけれど、花緒ちゃんの主張も最もだ。おれだってこれ以上おまえに無理をしてほしくない。それに、妖力操作を短期で習得するのは暴走の危険性もあるけれど、逆だってあり得ないわけじゃない。なにせ、彼女は桜河の力を分け与えられた贄姫だ。もしも自在に妖力を操れるようになったら、類を見ないほど強大な浄化の力を手にする可能性だってある」

「それは、そうかもしれないが……」

 口ごもる桜河に、山吹は肩をすくめる。

「まあ……今の妖力がまだ身体に馴染んでいない状態で操ろうとするのは、無謀どころか、無から有を生み出すような奇跡に近い。けれど、これは賭けだ。最強の王が選んだこの贄姫が、稀代の救世主となるか、それとも破滅を呼ぶ悪魔となるか――」

 いつものおどけた雰囲気のようでいて、目だけは笑っていなかった。

 彼らもまた不安なのだ。この娘に自分たちの国を託しても良いのか。ここで結果を残して彼らの信用を勝ち取れなければ、この先に自分の未来はない。それどころか、この国ごと危険に晒してしまう。

(自分が、一番よくわかっている……)

 花緒は奥歯をぐっと噛み締めた。