あーちゃんとおかあさん

「おかあさん。おとうさん。だいじなおはなしがあるの」

いつになく真剣なまなざしの、あーちゃん。
いったい、どんな話をするのだろう。

「そこにすわって。ちゃんとせいざして」

言われるがまま、仕事帰りの旦那はスーツ姿で床に正座させられる。
夕食前のリビングに、なんともシュールな光景ができあがった。

「あーちゃんね、きょう、せんせいにおこられた」

「え? あーちゃん、先生に怒られたの?」

「そう。おこられた。おともだちと、けんかした」

「それは、良くないね」

「おともだち、たたいた」

「……ごめんなさい、したの?」

「せんせいと、した」

「そっか。じゃあ、もうお友達たたかないようにしようね」

「うん。せんせいも、いってた。おやくそく、した」

「そう。それが、大事なお話?」

「そう。おはなし、おわった」

あまりにあっさりとした締めくくりに、
夫婦で顔を見合わせてしまった。

戸惑いの残る、夕食前の時間だった。

翌日、念のため先生に確認すると、
「そんなに激しいケンカじゃなかったですよ。大丈夫です」
と、穏やかに笑っていた。

それでも、胸の奥がじんわりと温かくなる。

あーちゃんは、
怒られない子ではなく、
怒られたことを話せる子に、育っていた。