あーちゃんとおかあさん

昨日、とても可愛い服を買った。
着せてみると、やっぱり可愛い。

その服を着せて、お散歩に出かける。
すると、近所のお家の前で、あーちゃんがぴたりと足を止めた。

老夫婦の家だった。
このお家のご夫婦は、いつもあーちゃんに「遊びにおいで」と声をかけてくれる。

あーちゃんも、行きたそうにしている。
少し迷ってから、インターフォンを押した。

「はーい」

家の中から、奥さんの声がする。

「あら、いらっしゃい」

あーちゃんは、待っていましたとばかりに言った。

「みて!」

新しいお洋服を、自慢するようにくるりと回る。

「あら、可愛いわね。素敵よ」

そう言われて、あーちゃんはとても嬉しそうだった。

「ちょっと、お庭で遊んでく?」

そう言われ、そのまま庭で遊ぶことになった。

新しい服なので、できれば外遊びはさせたくなかった。
けれど、お庭には細かい砂利が敷き詰められている。
これくらいなら、そんなに汚れないだろう。
そう、自分に言い聞かせた。

「おかあさん、みてみて!」

無邪気な声に振り向いて、言葉を失った。

あーちゃんは、なぜか砂利の上に寝転がり、
手足をばたばたさせながら、泳いでいた。

「たのしー!」

なかなかできない体験が、よほど嬉しいらしい。

お母さんの心は、雨に濡れていた。
あーちゃんの瞳は、星が降るように輝いていた。

春の日だった。