あーちゃんとおかあさん

子連れのお出かけは大変だ。
それが二歳くらいになると、なおさらである。

大人には危険に見えるものが、子どもには宝石にでも見えているらしい。
ベビーカーがあるのに歩きたがり、電車に乗ればご機嫌で歌い出す。
なぜなのか。

「あーちゃん、今は電車だから静かにしててね」

「わかった!」

……そして、また歌い出す。

「あーちゃん、今は電車だから歌わないで。いい子にしてね」

「わかった!あーちゃん、オオカミさんになるから、お母さんはメェメェね!」

「いやいや、今は電車だから静かにしてね」

「なんで?」

「みんな、静かにしなきゃいけないからだよ。あーちゃん、いい子にできるんでしょ?」

「できるよ!」

そう言った次の瞬間、また歌い出した。

「あーちゃん、いい子って、何だと思ってる?」

「いい子、知ってるよ!」

「どういう意味?」

「かわいい子だよ!」

その言葉を聞いた瞬間、
なぜ電車で歌い出すのか、分かってしまった。

明日からは、「いい子」って言うのをやめよう。
そう、心に決めた。