(家族……旅行?)
意味が分からなかった。翔太も、動きが止まってるのが分かった。きっとわたしと同じ……初めて聞いたような顔をしてる。
「お父さん、熊本の出身なんだけどね。夏休みに行くことにしてるの」
「真帆ちゃんも、一緒に行こうよ。真帆ちゃんのお父さん達には連絡しておくから」
頭の中が真っ白で……
心臓も高鳴って……
全てが一気に、わたしの中で起きてしまったらしく……笑ってしまった。
「えっ? 熊本……ですか?」
ようやく言葉を出すことができた。お母さんが言ってくれたことの復唱だけだったけれど。
「そう。1泊2日で。7月のね……」
お母さんは「ちょっと確認するね」と言って、スマホを触り始めた。わたしはちらりと翔太の方に目をやると、同じくわたしに視線を向けてきた翔太と目が合った。
(……!)
お互いに「はっ」と目を反らす。翔太も少し、顔が赤く見えるけど……。理由は定かじゃない。
「あぁ、えっとね」お母さんがわたしと翔太の間に割り込んでくれた。
「7月の25日から」
「どう? 予定」
(7月……25日……)
帰宅部のわたしに予定なんてある訳が無い。別に誰かと泊まりに行く予定も無い。お父さん達とどこかに行く予定だって無い。
別に、何も無い。
わたしは「どうだったかな」と言いながら、スマホのカレンダーを開く。もちろんカレンダーには特に何もメモは残っていない。
「たぶん、大丈夫だと思いますけど……」
少し濁すような声色で、わたしは答えた――。
――
「あぁ、さっき電話来たよ。久し振りだったから……驚いたけどね」
晩ご飯の唐揚げに箸を入れながら、お母さんは懐かしそうに答えた。すでにお父さんも話を聞いているらしく、特に何も言ってくることは無い。
「翔太くん、懐かしいよね。行って来たら良いじゃない」
「そうだけど……急だから……」
わたしも翔太の家に良く遊びに行っていたけど、翔太もうちに良く来ていた。翔太だけの時もあったし、他に2~3人集まっていた時もあったけど……特に翔太のことを、お母さんは気に入ってるような気もしていた。
「明るくて、良い子じゃない」
みんなが帰った後に、良く言っていたのを急に思い出した。
この4年間くらいは付き合いは無くなったみたいだけど、お母さん同士もクラスの保護者会で良く顔を合わせていたらしかった。
「翔太くん家だったら、安心だからね。お母さん達は別に構わないよ」
そう言うとお母さんは、ちらりとお父さんに視線を向けた。きっと「良いんじゃないか?」って言うんだろうな……と思いながら、わたしもお父さんに視線を向ける。
「ん? あぁ。良いんじゃないか? 行ってきたら」
(ほらね……)
予想通りの答えだった。お父さんに「駄目」と言われたことは、まず無い。ちゃんと理由があれば、いつもお父さんは賛成してくれた。
お父さんとお母さんに「えぇ……」と答えてはみるけれど、わたしの心の中は踊っていた。
もちろん気まずい気持ちもあるし……どきどきして、いつも以上に鼓動を強く感じてはいる。
でも……翔太とどこかに行ける。ちゃんとお父さんやお母さんもついて来てくれる。
恥ずかしさよりも、嬉しさが勝っていた。両方の気持ちが心の中でぐるぐると回り……目まいがして、少し気分が悪くなるくらいだった。
「熊本だろ? 良いじゃないか。真帆は九州、初めてだからな」
お父さんはお茶をずずっと飲みながら、ぼそりと言った。確かに、修学旅行はもちろん、家族旅行でも九州に行ったことは、これまでに無い。
「そうだね……緊張するな……」
内心嬉しくて、「翔太と行けるよ!」と言いたい気分だったけれど、わたしは不安な表情で悩むように声を絞り出す。
こうしてわたしの夏休みの予定が、決定した――。
意味が分からなかった。翔太も、動きが止まってるのが分かった。きっとわたしと同じ……初めて聞いたような顔をしてる。
「お父さん、熊本の出身なんだけどね。夏休みに行くことにしてるの」
「真帆ちゃんも、一緒に行こうよ。真帆ちゃんのお父さん達には連絡しておくから」
頭の中が真っ白で……
心臓も高鳴って……
全てが一気に、わたしの中で起きてしまったらしく……笑ってしまった。
「えっ? 熊本……ですか?」
ようやく言葉を出すことができた。お母さんが言ってくれたことの復唱だけだったけれど。
「そう。1泊2日で。7月のね……」
お母さんは「ちょっと確認するね」と言って、スマホを触り始めた。わたしはちらりと翔太の方に目をやると、同じくわたしに視線を向けてきた翔太と目が合った。
(……!)
お互いに「はっ」と目を反らす。翔太も少し、顔が赤く見えるけど……。理由は定かじゃない。
「あぁ、えっとね」お母さんがわたしと翔太の間に割り込んでくれた。
「7月の25日から」
「どう? 予定」
(7月……25日……)
帰宅部のわたしに予定なんてある訳が無い。別に誰かと泊まりに行く予定も無い。お父さん達とどこかに行く予定だって無い。
別に、何も無い。
わたしは「どうだったかな」と言いながら、スマホのカレンダーを開く。もちろんカレンダーには特に何もメモは残っていない。
「たぶん、大丈夫だと思いますけど……」
少し濁すような声色で、わたしは答えた――。
――
「あぁ、さっき電話来たよ。久し振りだったから……驚いたけどね」
晩ご飯の唐揚げに箸を入れながら、お母さんは懐かしそうに答えた。すでにお父さんも話を聞いているらしく、特に何も言ってくることは無い。
「翔太くん、懐かしいよね。行って来たら良いじゃない」
「そうだけど……急だから……」
わたしも翔太の家に良く遊びに行っていたけど、翔太もうちに良く来ていた。翔太だけの時もあったし、他に2~3人集まっていた時もあったけど……特に翔太のことを、お母さんは気に入ってるような気もしていた。
「明るくて、良い子じゃない」
みんなが帰った後に、良く言っていたのを急に思い出した。
この4年間くらいは付き合いは無くなったみたいだけど、お母さん同士もクラスの保護者会で良く顔を合わせていたらしかった。
「翔太くん家だったら、安心だからね。お母さん達は別に構わないよ」
そう言うとお母さんは、ちらりとお父さんに視線を向けた。きっと「良いんじゃないか?」って言うんだろうな……と思いながら、わたしもお父さんに視線を向ける。
「ん? あぁ。良いんじゃないか? 行ってきたら」
(ほらね……)
予想通りの答えだった。お父さんに「駄目」と言われたことは、まず無い。ちゃんと理由があれば、いつもお父さんは賛成してくれた。
お父さんとお母さんに「えぇ……」と答えてはみるけれど、わたしの心の中は踊っていた。
もちろん気まずい気持ちもあるし……どきどきして、いつも以上に鼓動を強く感じてはいる。
でも……翔太とどこかに行ける。ちゃんとお父さんやお母さんもついて来てくれる。
恥ずかしさよりも、嬉しさが勝っていた。両方の気持ちが心の中でぐるぐると回り……目まいがして、少し気分が悪くなるくらいだった。
「熊本だろ? 良いじゃないか。真帆は九州、初めてだからな」
お父さんはお茶をずずっと飲みながら、ぼそりと言った。確かに、修学旅行はもちろん、家族旅行でも九州に行ったことは、これまでに無い。
「そうだね……緊張するな……」
内心嬉しくて、「翔太と行けるよ!」と言いたい気分だったけれど、わたしは不安な表情で悩むように声を絞り出す。
こうしてわたしの夏休みの予定が、決定した――。



