未来へ広がる、中九州の空

いつも通り、突き当りを左に曲がる。緩やかな坂道をリズミカルに下りて、道路に沿って歩く。

(でもな……健人くんが全然思っても無いこと、言わないだろうし……)

希ちゃんや優香ちゃんと話をしたことを、色々と思い返しながら歩く。

磯子は、団地やマンションが駅前からずらりと並ぶ、ベッドタウン。1階部分はスーパーが入っていたり、チェーン店が入っていたりする。

駅から5分ほど歩いて、少し離れると、チェーン店というよりは個人でやっているお店が徐々に多くなっていく。

わたしの家は、この辺りにある。

……そして、翔太の家も。

「真帆ちゃんじゃない?」

ぼんやりとお店の前を歩くわたしに、女性の声が飛んできた。

(……何?)

声の主に向かって思わず振り返る。懐かしい顔だった。

「あっ……おばさん……!」
「お久し振りです……」

思わずわたしは、頭を下げた。肩にかけていたカバンがずり落ちる。

「やっぱり! 真帆ちゃんじゃない!」
「大きくなったね!」

翔太の、お母さんだった。

小学生の頃、いっつも優しくわたしを迎え入れてくれた。中学生の頃になると、わたしが何故だか気まずくなって、裏から帰るようになっていた。

「いやぁー……すっかり美人さんになって!」

満面の笑みでわたしに話かけてくれる。「本当にわたしのこと、好きでいてくれてるんだな」と分かる。わたしもお母さんのことが大好き。

「そんな……」
「照れなくても良いよ。可愛くなって。……今、帰りなの?」

翔太のお母さんは、お父さんと一緒に中華料理屋さんを営んでいる。わたしがお母さんにこうやって話かけられたのは、ちょうどお店の正面だった。

「はい。部活もやって無いんで」
「そっか。時間ある?」

「はい……特に何も無いです」
「じゃ、ちょっと久し振りに寄って行かない?」

お母さんに言われるまま、わたしはお店に足を踏み入れる。ふわっと鼻を刺激する、懐かしい4年振りの香りだった――。