未来へ広がる、中九州の空

「まあ……これからさ、距離がもっと縮まっていくような気がするけどね。私は」
「うん。今は、これで良いよ。思い出は残ったからね」

夏休み。横浜駅の隣にある、JR桜木町駅。横浜市中央図書館にみんな集まって勉強するようになっていた。

「カッコ良いこと言うなあ」
「へへっ……」

昼休み。優香ちゃんと一緒に、図書館の公園でご飯を食べる。わたしは自分で握ってきたおにぎりの、サランラップをゆっくりと開けていく。

「でも……羨ましいな。好きな人と旅行なんてさ」
「お父さん達も一緒にだったけどね」

突き抜けるように広がる、横浜の空。

飛行機で羽田空港に帰ってきた時、先ずは「涼しい」って感じた。でも不思議なもので、2、3日もすればすぐに体は横浜の暑さに慣れてしまって、九州の暑さを思い出すことができない。

優香ちゃんはコンビニの袋にガサガサと手を入れて、おにぎりを取り出した。わたしもおにぎりを1口頬張る。じっとりと背中が汗ばんだ、九州の旅行を思い出しながら。

「どうなの? 翔太くんとは何も無いの?」
「……」

「DMは交換したんだっけ? インスタの」
「うん。たまにやりとりするよ。……毎日じゃないけどね」

「良いね、良いね。まぁでも、いきなり旅行に行って……告白はされないか。流石に」
「ちょっと……恥ずかしいから」

たったの1日だったし。翔太のお父さんやお母さんもいたし。「それは無理」ってことは、事前に予想はしていた。でも、ちょっと期待している自分もいたなと思う。

「相変わらず、奥手だな。真帆は」
「あっ、でもね」

DMのやりとり。家に帰ってから少し進展があった。

「やほー、ここにいたんだ」

部活が終わったらしく、希ちゃんがわたし達の所にやってきた。

「あっ、希ちゃん」
「暑くない? こんな所でさ……」

手でパタパタと顔に風を送る、希ちゃん。「だって真帆がここが良いって言うから」と、優香ちゃんが希ちゃんに伝えていた。

「で? 何か言おうとしてなかった? 今」
「あっ……えっとね」

実は翔太から「花火に行かないか」とDMが来ていた。昨日の夜だったから……既読を付けたまま、まだ返信できずにいた。

「おい! 早く返してあげなよ!」
「そうだよ。昨日の夜でしょ……? 絶対待ってるってば」

怒涛のように声を浴びせてくる、希ちゃんと優香ちゃん。「2人に相談してから……」と思って、わたしは返信せずにいた。

「だって。緊張しちゃってさ」
「だってじゃないよ……誘ってくれてるじゃん。もちろん行くんでしょ?」

「うん。行きたいなって」

8月に花火に誘ってくれた。夜にDMを読んだ時……あまりに嬉しくて、思わず声を出してしまった。それ以来、ずっとわたしの心は踊ったまま。

1泊2日の旅行で、直接告白をしてくれることは無かった。でも……確実にわたし達は、次のステップに進んでいる。

わたしは、そう感じていた――。