未来へ広がる、中九州の空

お昼ご飯を食べ終わった、わたしと優香ちゃん。C組の教室を出て左に曲がり、外階段のドアをゆっくりと開ける。

希ちゃんが教室を出て行った後、知らない素振りを見せて、おにぎりを食べ続けたけど……流石にごまかし切れなかった。

根負けしたわたしは「ご飯、食べ終わったらね」と約束して、ようやくおにぎりを完食することができた。

「あれだよね、翔太くんのことでしょ?」

ふわりと校舎内に入り込んでくる、柔らかい風を押しのけるように、わたしと優香ちゃんは外階段へと出て行った。

「んー……まぁ、そうだね」
「やっぱり。ちょっと気にはなってたんだよね」

スカートを押さえながら、階段に腰をかけると、心地良い、優しい風と吹奏楽部が練習している、綺麗な音色が……ここ3階まで静かに届いていた。

「大丈夫だよ。言わないよ」

わたしの気持ちを察してか、優香ちゃんが髪を押さえながら、小さく言った。

「……うん」

わたしが話出すまで、静かに優香ちゃんは待ち続けてくれた。もちろん分かっていた。人の秘密を他の人に軽く話をするタイプじゃ無いっていうことは。

「実はさ……」

希ちゃんとわたしが、栄高祭の時に聞いたこと。優香ちゃんは、何も言わずにわたしの話に耳を傾けてくれた。

頷きながら。

わたしと翔太が小学校と中学校が同じことは知っていたはずだけど……それ以上のことは、これまで何も言ってなかった。

もっと驚くのかな……と思っていた。きっと優香ちゃんは、わたしの思ってる以上に、優しくて思慮深い子なんだろうなと思った。

表情一つ崩さずに、真剣な面持ちで話を聞いてくれた。

「そっか。それは……やきもきするよね」

たった一言だけ、わたしに向かって言ってくれた言葉。

そこまで感情が込められているようには思わなかったけど……何だか心が救われるような気がした。

「うん……。翔太の気持ち、聞けないから」
「そうだよね。真帆ちゃんは? やっぱり待つの?」

さっきまでとは違って、楽器の音色が、急に色付いて耳に届くようになったような気がした。

「うん。わたしに聞く勇気は無いかな」

楽器の音色に隠れるように、小さく答える。心を押し殺すように、ちょっとはにかみながら。グラウンドからは野球部の人達の声が小さく届いていた。

その時だった。

「今の話だけど」

わたしと優香ちゃんの空間を割くように、下の方から声が入り込んでくる。

(しまった……)

自分の想いと向き合っていたわたし。周囲に気を配ること無く、しゃべっていた。誰かに聞かれてしまった……」と思い、慌てて階段の下に視線を向けた。

「私は、真帆の味方だから」

2階の外階段から、ゆっくりと希ちゃんが上がってきた。手には楽器を持っている。

「希ちゃん……聞いてたんだ」
「何よ。聞いてたんじゃなくて、聞こえてきたんだって」

そう言うと、希ちゃんはにこりと微笑んでくれた。