バスを降りた別府駅へと歩いて戻る。横浜と比べると本当に暑い。毎日「暑いな」と思いながら生活していたのに……「からっとしていたんだな」と思うくらい、別府は暑い。
人の数は少ないけれど商店街もあるし、駅前はこじんまりとしていて、綺麗だった。制服を着た生徒も歩いているし、デパートなんかもあるらしい。
「ここは賑やかなんだ……」
「学生だった頃は、たまに来てたよ。別府」
「えっ? お母さんがですか? 大分駅から?」
「そう。ここね、めちゃくちゃ種類が多いクレープ屋さんがあってね」
懐かしそうに駅前と商店街を眺めながら話す、お母さん。「もうちょっと昔は、若い人がいたけどね……」と言っていた。
翔太もお母さんも「人が少ない」ということを、マイナスに捉えているようだけれど、わたしにはプラス。「居心地が良いな」と思いながら歩いていた。
「ほら、ここにしようか」
お父さんが商店街の中の居酒屋さんで立ち止まる。個人でやっているような感じの、小さい小さいお店。道路沿いにはもっと大きなお店があるのに、不思議だった。
「何ここ。有名なお店なの?」
翔太がわたしが思っていることを代弁するように、お父さんに尋ねていた。
「分かってないな」とお父さんは呟き、翔太は不思議そうな顔をしている。わたしとお母さんも同様だった。「サイトに出て無いような、個人のお店が良いんだ」と言いながら、お父さんは暖簾をくぐる。
「いらっしゃいませえ」と威勢の良い声が飛び、お座敷へと案内される。商店街を歩いている人はあまりいなかったけれど、お店の中には多くの人達で賑わっていた。
「……結構、いるじゃん」
「そういうもんなんだよ。地方は」
お座敷に腰を下ろし、店内を見渡して翔太が言うと、誇ったようにお父さんが返した。熊本も同じらしい。店内の方が賑やかだったりするとのことだった。
「お刺身食べよう」
お造りを注文して、各自食べたいものを注文した。緊張して気が付かなかったけれど、入口付近にはいけすがあって、活きの良い大きい魚がたくさん泳いでいた。
「覚えておくと良いよ」とお父さんは色々と教えてくれた。大分や別府は本当にお魚が美味しいらしい。熊本も天草のお魚が美味しいけれど、「大分には敵わない」と言っていた。
新鮮さと値段。横浜に引越をしてからは、魚は食べて無いらしく、「魚は大分じゃないと食べない」と言っていた。まだ良さが分かっていないわたしと翔太は「そうなんだ」と聞いていただけだけれど。
お造りがやってきて、お父さんの言っていたことがほんのちょっとだけ、分かったような気がした。
50センチほどあろうかという船に、「これでもか!」と言わんばかりのお刺身。
(輝いてるじゃん……つやっつやだ)
種類は詳しく分からないけれど、キラリと光を反射して、とっても美味しそうに見えた。しかも、どのお刺身も分厚い。
「磯子のスーパーと全然違うんですけど」
唖然とするわたしに、お父さんは「めちゃくちゃ安いんだよ」と言いながら醤油を入れていた。
「刺身醤油。これで食べてみて」
「刺身醤油? 普通の醤油と違うんですか?」
「うん。刺身用っていうか……甘いのよ」
言われるがまま、小皿に刺身醤油を入れて、お刺身を食べる。口に入れた瞬間……わたしは驚いた。
「んー……これ、弾力っていうか……歯ごたえ凄い!」
まるでお肉でも食べているかのような感覚が口いっぱいに広がっていった。お父さんも「これだよな。魚は」と言いながら、嬉しそうにお刺身を食べた。
「魚は大分以外じゃ食べない」お父さんの言葉を思い出す。翔太も目を丸くして食べていた。
「何これ……これ、刺身なの……」
「ね。お肉みたい」
「しかもビックリするくらい安い。だから良いんだよ」。言葉数が少ないわたし達に、お父さんは言う。
「大分はどこも美味しいぞ。こういう小さいお店ほど美味しく感じるけどな。お父さんは」ポータルサイトの人気ランキングを見るよりも、個人のお店は当たりが多いらしい。
(この歯ごたえ……最高過ぎる……)
お父さんとお母さんの言う通り、「もしかしたらわたしも……大分以外でお魚食べられなくなるかも」と、心の中で思いながら、お刺身に箸を伸ばした――。
人の数は少ないけれど商店街もあるし、駅前はこじんまりとしていて、綺麗だった。制服を着た生徒も歩いているし、デパートなんかもあるらしい。
「ここは賑やかなんだ……」
「学生だった頃は、たまに来てたよ。別府」
「えっ? お母さんがですか? 大分駅から?」
「そう。ここね、めちゃくちゃ種類が多いクレープ屋さんがあってね」
懐かしそうに駅前と商店街を眺めながら話す、お母さん。「もうちょっと昔は、若い人がいたけどね……」と言っていた。
翔太もお母さんも「人が少ない」ということを、マイナスに捉えているようだけれど、わたしにはプラス。「居心地が良いな」と思いながら歩いていた。
「ほら、ここにしようか」
お父さんが商店街の中の居酒屋さんで立ち止まる。個人でやっているような感じの、小さい小さいお店。道路沿いにはもっと大きなお店があるのに、不思議だった。
「何ここ。有名なお店なの?」
翔太がわたしが思っていることを代弁するように、お父さんに尋ねていた。
「分かってないな」とお父さんは呟き、翔太は不思議そうな顔をしている。わたしとお母さんも同様だった。「サイトに出て無いような、個人のお店が良いんだ」と言いながら、お父さんは暖簾をくぐる。
「いらっしゃいませえ」と威勢の良い声が飛び、お座敷へと案内される。商店街を歩いている人はあまりいなかったけれど、お店の中には多くの人達で賑わっていた。
「……結構、いるじゃん」
「そういうもんなんだよ。地方は」
お座敷に腰を下ろし、店内を見渡して翔太が言うと、誇ったようにお父さんが返した。熊本も同じらしい。店内の方が賑やかだったりするとのことだった。
「お刺身食べよう」
お造りを注文して、各自食べたいものを注文した。緊張して気が付かなかったけれど、入口付近にはいけすがあって、活きの良い大きい魚がたくさん泳いでいた。
「覚えておくと良いよ」とお父さんは色々と教えてくれた。大分や別府は本当にお魚が美味しいらしい。熊本も天草のお魚が美味しいけれど、「大分には敵わない」と言っていた。
新鮮さと値段。横浜に引越をしてからは、魚は食べて無いらしく、「魚は大分じゃないと食べない」と言っていた。まだ良さが分かっていないわたしと翔太は「そうなんだ」と聞いていただけだけれど。
お造りがやってきて、お父さんの言っていたことがほんのちょっとだけ、分かったような気がした。
50センチほどあろうかという船に、「これでもか!」と言わんばかりのお刺身。
(輝いてるじゃん……つやっつやだ)
種類は詳しく分からないけれど、キラリと光を反射して、とっても美味しそうに見えた。しかも、どのお刺身も分厚い。
「磯子のスーパーと全然違うんですけど」
唖然とするわたしに、お父さんは「めちゃくちゃ安いんだよ」と言いながら醤油を入れていた。
「刺身醤油。これで食べてみて」
「刺身醤油? 普通の醤油と違うんですか?」
「うん。刺身用っていうか……甘いのよ」
言われるがまま、小皿に刺身醤油を入れて、お刺身を食べる。口に入れた瞬間……わたしは驚いた。
「んー……これ、弾力っていうか……歯ごたえ凄い!」
まるでお肉でも食べているかのような感覚が口いっぱいに広がっていった。お父さんも「これだよな。魚は」と言いながら、嬉しそうにお刺身を食べた。
「魚は大分以外じゃ食べない」お父さんの言葉を思い出す。翔太も目を丸くして食べていた。
「何これ……これ、刺身なの……」
「ね。お肉みたい」
「しかもビックリするくらい安い。だから良いんだよ」。言葉数が少ないわたし達に、お父さんは言う。
「大分はどこも美味しいぞ。こういう小さいお店ほど美味しく感じるけどな。お父さんは」ポータルサイトの人気ランキングを見るよりも、個人のお店は当たりが多いらしい。
(この歯ごたえ……最高過ぎる……)
お父さんとお母さんの言う通り、「もしかしたらわたしも……大分以外でお魚食べられなくなるかも」と、心の中で思いながら、お刺身に箸を伸ばした――。



