「地獄。どうだった?」
ホテルのフロントに戻ると、お母さんが待っている。わたし達3人に向かって、地獄の感想を求めた。
「……凄かったです! 特に、血の池地獄」
「ああ、そこ行ったんだ。真っ赤だったでしょ」
別府駅から電車に乗って、大分駅まで行っていたらしい。本当はわたし達も大分駅にも連れて行きたいらしいけれど、時間的に難しいと言っていた。
「翔太も、本当はおばあちゃんに会わせたかったけど……」
「良いよ。元気なんでしょ? また今度会いに来るよ」
翔太もずっと会っていないらしい。
(わたしを優先してくれたんだ……)
お母さん達は、明らかにわたしがいることを最優先してくれていることが伝わって、嬉しかった。少し気まずい気持ちもあった。
「母さん、翔太と真帆ちゃんに地獄蒸しの体験できないかな? 時間的に難しい?」
「地獄蒸ね、確かにね」
「そう。まだ間に合う場所あればなって思って」
「良いかも。ちょっと調べてみる?」
「ちょっと待ってね」と言って、スマホで調べ出すお母さん。わたし達もソファに腰をかける。
「わたし、別府気に入ったな。昔ながらの雰囲気じゃない?」
「そうか? 不便そうだけどなあ」
別府を気に入ったわたしとは対照的に、翔太は今いちな返事しかしない。
「大分も行ってみたいな。だって全然違うんでしょ?」
「大分は、だいぶ都会っぽいけどね。あんま覚えてないけどさ」
「翔太、地獄蒸しって知ってる? 今、調べてくれてるやつ」
「……いや、分かんない。何か蒸すんだろうけど」
わたしと翔太が窓の外を見ながら話をしていると、お父さんが教えてくれた。
「蒸気で蒸すんだよ」
「……蒸気でですか?」
「そう。何でもだ。野菜だって蒸せるし、海老とか海鮮だって蒸せる。豚まんとかも有名なお店もあるぞ」
「へぇ……確かに、蒸気が色んな所から上がってますもんね……」
別府の風情を気に入った理由の一つだった。
いたる所から大量に立ち上る、蒸気。「源泉の数は日本一だ」ってお父さんが言っていた。
「熊本も、源泉の蒸気で蒸し料理ができる場所もあるけど……別府みたいに町ぐるみでウリにはしてないからね。別府に来た観光客の定番だよ」
「僕は勝手に自分で蒸せる、熊本の方が好きだけど」とお父さんは言っていた。
「……ごめんね、やっぱり今からだと難しいかな。地獄蒸し」
残念そうな声色で、お母さんがわたし達に近づきながら言った。
「大丈夫です! 色々ありがとうございます……。また次の楽しみにしておきます。わたし」
お父さんの言う通り、観光客には特に人気らしい。次、また来た時に体験できれば良いな……と思うけれど、「熊本の『自分で勝手にやって良い』場所」も、実は気になった。
「じゃ、最初の予定通り行こうか」
よいしょとお父さんは立ち上がって、ドアに向かって歩く。「ご飯でしたっけ?」とお母さんに小声で尋ねると、「そうそう。お父さん、張り切ってるから……」とちょっと苦笑いしているように見えた。
「大分は、やっぱり魚だからね。お父さんも分かってると思うよ?」
「……魚ですか?」
「そう。熊本はとにかくお肉が安くて新鮮で美味しいけどね。魚は大分には敵わないから」
どこか自慢げなお母さん。わたしはたまに磯子のスーパーで、お母さんが買ってきたお刺身のパックで食べるくらい。別にお父さんが釣りが好きという訳でも無い。
煮魚は、正直苦手。
「何を食べるんだろう?」と淡い期待を抱きつつ、お母さんと翔太と一緒に、お父さんの背中を追った。
ホテルのフロントに戻ると、お母さんが待っている。わたし達3人に向かって、地獄の感想を求めた。
「……凄かったです! 特に、血の池地獄」
「ああ、そこ行ったんだ。真っ赤だったでしょ」
別府駅から電車に乗って、大分駅まで行っていたらしい。本当はわたし達も大分駅にも連れて行きたいらしいけれど、時間的に難しいと言っていた。
「翔太も、本当はおばあちゃんに会わせたかったけど……」
「良いよ。元気なんでしょ? また今度会いに来るよ」
翔太もずっと会っていないらしい。
(わたしを優先してくれたんだ……)
お母さん達は、明らかにわたしがいることを最優先してくれていることが伝わって、嬉しかった。少し気まずい気持ちもあった。
「母さん、翔太と真帆ちゃんに地獄蒸しの体験できないかな? 時間的に難しい?」
「地獄蒸ね、確かにね」
「そう。まだ間に合う場所あればなって思って」
「良いかも。ちょっと調べてみる?」
「ちょっと待ってね」と言って、スマホで調べ出すお母さん。わたし達もソファに腰をかける。
「わたし、別府気に入ったな。昔ながらの雰囲気じゃない?」
「そうか? 不便そうだけどなあ」
別府を気に入ったわたしとは対照的に、翔太は今いちな返事しかしない。
「大分も行ってみたいな。だって全然違うんでしょ?」
「大分は、だいぶ都会っぽいけどね。あんま覚えてないけどさ」
「翔太、地獄蒸しって知ってる? 今、調べてくれてるやつ」
「……いや、分かんない。何か蒸すんだろうけど」
わたしと翔太が窓の外を見ながら話をしていると、お父さんが教えてくれた。
「蒸気で蒸すんだよ」
「……蒸気でですか?」
「そう。何でもだ。野菜だって蒸せるし、海老とか海鮮だって蒸せる。豚まんとかも有名なお店もあるぞ」
「へぇ……確かに、蒸気が色んな所から上がってますもんね……」
別府の風情を気に入った理由の一つだった。
いたる所から大量に立ち上る、蒸気。「源泉の数は日本一だ」ってお父さんが言っていた。
「熊本も、源泉の蒸気で蒸し料理ができる場所もあるけど……別府みたいに町ぐるみでウリにはしてないからね。別府に来た観光客の定番だよ」
「僕は勝手に自分で蒸せる、熊本の方が好きだけど」とお父さんは言っていた。
「……ごめんね、やっぱり今からだと難しいかな。地獄蒸し」
残念そうな声色で、お母さんがわたし達に近づきながら言った。
「大丈夫です! 色々ありがとうございます……。また次の楽しみにしておきます。わたし」
お父さんの言う通り、観光客には特に人気らしい。次、また来た時に体験できれば良いな……と思うけれど、「熊本の『自分で勝手にやって良い』場所」も、実は気になった。
「じゃ、最初の予定通り行こうか」
よいしょとお父さんは立ち上がって、ドアに向かって歩く。「ご飯でしたっけ?」とお母さんに小声で尋ねると、「そうそう。お父さん、張り切ってるから……」とちょっと苦笑いしているように見えた。
「大分は、やっぱり魚だからね。お父さんも分かってると思うよ?」
「……魚ですか?」
「そう。熊本はとにかくお肉が安くて新鮮で美味しいけどね。魚は大分には敵わないから」
どこか自慢げなお母さん。わたしはたまに磯子のスーパーで、お母さんが買ってきたお刺身のパックで食べるくらい。別にお父さんが釣りが好きという訳でも無い。
煮魚は、正直苦手。
「何を食べるんだろう?」と淡い期待を抱きつつ、お母さんと翔太と一緒に、お父さんの背中を追った。



