「大分っていうか……別府ってさ、何が美味しいのさ」
タクシーに戻る途中で、翔太がお父さんに聞いている。やっぱり男子には、こういうロマンチックな部分はあまり無いらしい。「ただ青いだけじゃんか」と少し不満そうに言っている。
「お前には、まだ分からんか」
「ああ。分からないね」
「いつか分かる時に来たら良いよ。真帆ちゃんは気に入ってくれたみたいだからな」
「えっ……?」いきなり話を振られて、どきりとする。「翔太といつか2人で来たら良い」と言っているお父さん。上手く言葉が出ずに……顔が熱くなった。
翔太もバツが悪そうに、何も言わなくなった。しばらくわたしと翔太は無言のまま歩くしかなかった。
降りた場所で待ってくれていたタクシーに乗り込み、「次、お願いします」とお父さんは言っていた。観光客でタクシー移動する人は、意外に多いらしい。
運転手さんも手慣れた様子で出発した。
「どうでした? 海地獄」
赤信号で止まると、後ろにも聞こえるくらいの声で運転手さんは言った。「わたし、好きですよ」と答えると、満足気に見える。翔太がわたしにちらりと視線を向ける。
「硫酸鉄、だったかな」
「……硫酸鉄?」
「そう。硫酸鉄が含まれてるから、あんなに青くなるらしいです」
「へえ……そうなんですね。運転手さん、めっちゃ詳しい」
「観光用の知識です。硫酸鉄が何かまでは、知りません」と言って、運転手さんは小さく笑っていた。
「次は『血の池地獄』ですよ」
「えっ? 血の池地獄?」
血の池という言葉が、何故だかわたしを興奮させる。もしかすると、心のどこかで海地獄にあまり満足行って無かったのかも知れないなと思った。
「ああ、だから……さっき『青と赤』って言ってたんだ……」
「そういうことですね。次は赤いです」
観光客慣れしているからなのか、凄く話やすい運転手さん。わたしのリアクションを、何度も見ているかのような返答をしてくれる。
「ね、次……赤いらしいよ。面白そうじゃない?」
「赤かぁ。見てみたいな」
運転手さんに気を遣っているのか、翔太も次の血の池地獄には多少の興味を示してくれていた。
(わたしはね……こうやって一緒に回れることが幸せなんだよ?)
狭いタクシーの中。恥ずかしいし、他の人に聞かれるし。翔太に伝えるのは止めておいた。
――
「何度もすいません。またお願いします」
「ええ、大丈夫ですよ」
血の池地獄に到着すると、お父さんは運転手さんに改めてお礼を言って、わたし達は受付へと向かう。流れはさっきの海地獄で何となく把握できるようになっていた。
入口でチケットを購入して、中へと入る。
「わたし……別府の雰囲気、すっごい好きかもです」
駅を降りてからずっと、ちょっとノスタルチックな雰囲気であることに気が付いた。やっぱり横浜駅を中心に、関内駅だって桜木町駅だって、洗練されてオシャレなイメージがある。
でもここは……上手く言えないけれど「古き良き……」みたいな感じがしていた。
「そう? お母さんが聞いたら喜ぶんじゃないかな」
満足そうにお父さんは微笑みながら、観光客が密集しているエリアへと向かって歩いて行った――。
タクシーに戻る途中で、翔太がお父さんに聞いている。やっぱり男子には、こういうロマンチックな部分はあまり無いらしい。「ただ青いだけじゃんか」と少し不満そうに言っている。
「お前には、まだ分からんか」
「ああ。分からないね」
「いつか分かる時に来たら良いよ。真帆ちゃんは気に入ってくれたみたいだからな」
「えっ……?」いきなり話を振られて、どきりとする。「翔太といつか2人で来たら良い」と言っているお父さん。上手く言葉が出ずに……顔が熱くなった。
翔太もバツが悪そうに、何も言わなくなった。しばらくわたしと翔太は無言のまま歩くしかなかった。
降りた場所で待ってくれていたタクシーに乗り込み、「次、お願いします」とお父さんは言っていた。観光客でタクシー移動する人は、意外に多いらしい。
運転手さんも手慣れた様子で出発した。
「どうでした? 海地獄」
赤信号で止まると、後ろにも聞こえるくらいの声で運転手さんは言った。「わたし、好きですよ」と答えると、満足気に見える。翔太がわたしにちらりと視線を向ける。
「硫酸鉄、だったかな」
「……硫酸鉄?」
「そう。硫酸鉄が含まれてるから、あんなに青くなるらしいです」
「へえ……そうなんですね。運転手さん、めっちゃ詳しい」
「観光用の知識です。硫酸鉄が何かまでは、知りません」と言って、運転手さんは小さく笑っていた。
「次は『血の池地獄』ですよ」
「えっ? 血の池地獄?」
血の池という言葉が、何故だかわたしを興奮させる。もしかすると、心のどこかで海地獄にあまり満足行って無かったのかも知れないなと思った。
「ああ、だから……さっき『青と赤』って言ってたんだ……」
「そういうことですね。次は赤いです」
観光客慣れしているからなのか、凄く話やすい運転手さん。わたしのリアクションを、何度も見ているかのような返答をしてくれる。
「ね、次……赤いらしいよ。面白そうじゃない?」
「赤かぁ。見てみたいな」
運転手さんに気を遣っているのか、翔太も次の血の池地獄には多少の興味を示してくれていた。
(わたしはね……こうやって一緒に回れることが幸せなんだよ?)
狭いタクシーの中。恥ずかしいし、他の人に聞かれるし。翔太に伝えるのは止めておいた。
――
「何度もすいません。またお願いします」
「ええ、大丈夫ですよ」
血の池地獄に到着すると、お父さんは運転手さんに改めてお礼を言って、わたし達は受付へと向かう。流れはさっきの海地獄で何となく把握できるようになっていた。
入口でチケットを購入して、中へと入る。
「わたし……別府の雰囲気、すっごい好きかもです」
駅を降りてからずっと、ちょっとノスタルチックな雰囲気であることに気が付いた。やっぱり横浜駅を中心に、関内駅だって桜木町駅だって、洗練されてオシャレなイメージがある。
でもここは……上手く言えないけれど「古き良き……」みたいな感じがしていた。
「そう? お母さんが聞いたら喜ぶんじゃないかな」
満足そうにお父さんは微笑みながら、観光客が密集しているエリアへと向かって歩いて行った――。



