未来へ広がる、中九州の空

(時間あるしな……右から行くか)

気分を変えて、突き当りを右へと曲がる。左は緩やかなスロープになっているけれど、右は急な階段。カバンを押さえながらゆっくりと下って行った。

(でもな……健人くんが全然思っても無いこと、言わないだろうし……)

希ちゃんや優香ちゃんと話をしたことを、色々と思い返しながら階段を歩く。

磯子は、団地やマンションが駅前からずらりと並ぶ、ベッドタウン。1階部分はスーパーが入っていたり、チェーン店が入っていたりする。

特に右側には大きな団地や公園が広がっていて、階段の真下はスーパー。「何か買って行こうかな」と思い、スーパーの入口へと向かって歩いた。

「おぉ、真帆ちゃんじゃないか?」

ぼんやりと自動ドアをくぐるわたしに向けて、男性の声が飛んできた。

(……何?)

声の主に向かって思わず振り返る。懐かしい顔だった。

「あっ……おじさん……!」
「お久し振りです……」

思わずわたしは、頭を下げた。肩にかけていたカバンがずり落ちる。

「おぉ、やっぱりそうだ。 真帆ちゃんじゃないか」
「……大きくなったなぁ」

翔太の、お父さんだった。

小学生の頃、翔太の家に遊びに行くと、優しくわたしを迎え入れてくれた。お母さんも優しくて大好きだった。

「いやぁー……女子は変わるなぁ……小学生の時と全然違うじゃないか」

満面の笑みでわたしに話かけてくれる。「本当にわたしのこと、好きでいてくれてるんだな」と分かる。わたしもお父さんのことが大好き。

「そんな……」
「……今、帰りなの?」

翔太のお父さんは、お母さんと一緒に中華料理屋さんを営んでいる。両手には野菜が沢山入ったビニール袋。どうやら買い出しの帰り道らしかった。

「はい。部活もやって無いんで」
「そっか。……ちょっと時間あるかな」

「はい……特に何も無いですけど……」
「ちょっとそっちで話、しよう」

お父さんの指さす先は、スーパーの出口。店内は音楽や人の声が多いから「外で話をしよう」と言うことらしい。

(……何だろう?)

お父さんの背中について歩き、わたし達はスーパーを出て行った――。