「真帆ちゃん、準備できた? 忘れ物無ければ、行こうか」
ホテルの部屋で、小さな手提げ袋の中身をしっかりと確認する。タオルと着替えだけあれば、全然大丈夫らしい。
「……熊本のお肉って、凄くないですか?」
「でしょ? 私も驚いたよ。初めて熊本で食べた時」
結局、お店には1時間半くらい滞在した。目の前がちょっと霞んでしまうほどの、白い煙。もうもうと立ち上り、お客さんの笑い声と混ざっているように感じた。
「どうせ、変わらないって」
直前まで興味無さそうにしていた翔太。表情が変わったのは、明らかに色の違うお肉が運ばれて来た時だった。
「何? ……これ。輝いてるんだけど……」
横浜のお店で食べるのとは、明らかに違う。赤い色の濃淡が凄い。深紅のお肉もあれば……淡い赤もある。「部位によって違う」って、お父さんは言っていた。
「味も全然違いましたもん」
焼き方が違う訳でも無いのに……口の中入れると、優しい噛み応え。脂身もほどほどなのに、柔らかく溶けていった。
「でしょ? 値段も本当に安いんだよ。横浜と違うでしょ?」
エレベーターを待ちながら、お母さんは教えてくれた。
「熊本は畜産が盛んなの。肉牛ね。今回は行けないけど……阿蘇でも沢山飼ってるんだよ」
「へぇ」
「だから質が都会と全然違うしね。それにびっくりするくらい、安いよ」
「熊本で育ててるから……安く買えるってことか」
「ま、そんな感じかな」
今回は1泊だから、そこまで分からないけれど、「だから焼肉のお店ばっかりだよ」とお母さんは言っていた。
「肉ばっかりなのかな……魚は無いのかな」
「魚はね、天草があるんだけど、やっぱり大分には敵わないかな」
大分出身のお母さんは、優しく笑う。大分のお魚は、別格らしい。「今度はみんなで大分に行こう」って、お母さんが言った。
「おぉ、来たか。じゃ……行こうか」
フロント近くで、翔太とお父さんが待っている。「温泉に行こう」ってお父さんが焼肉屋さんで突然言い出し、タクシーで向かうことにしていた。
「温泉も、良いんだよ。驚くぞ」
ドアを開けて、まだまだ湿気がまとわりつくような、夜の繁華街。色々な場所に、天然温泉が沢山あるらしい。
「ま、大分に比べれば……温泉は少ないけどね。それに高いし」
ちょっと自慢気なお母さん。行ったことは無いけど、大分の温泉は効能が凄いらしい。お父さんがタクシーの運転手さんと話をして、わたし達は乗り込んだ。
繁華街から7、8分の所に、有名な天然温泉があるらしかった。郊外の方には天然温泉が物凄い数あるらしいけど、レンタカーを借りていないし、お父さんもお酒を飲んでいたから、今回は繁華街から行ける温泉に決めた。
後部座席から、繁華街を歩く人を眺める。
(ゆっくりしてる感じだな……)
人の数もそれほど多く無いし、みんなゆったりしているように見えた。磯子や横浜で育っているわたしにとって「こんなにのんびしていて、良いんだ」と驚くことばかりだった。
(……大学、こういう場所に来るのも、良いな)
翔太と2人きりになれた時間は少なかったけれど、横浜と全然違う空気感。
わたしの心は穏やかに、満たされていた。
ホテルの部屋で、小さな手提げ袋の中身をしっかりと確認する。タオルと着替えだけあれば、全然大丈夫らしい。
「……熊本のお肉って、凄くないですか?」
「でしょ? 私も驚いたよ。初めて熊本で食べた時」
結局、お店には1時間半くらい滞在した。目の前がちょっと霞んでしまうほどの、白い煙。もうもうと立ち上り、お客さんの笑い声と混ざっているように感じた。
「どうせ、変わらないって」
直前まで興味無さそうにしていた翔太。表情が変わったのは、明らかに色の違うお肉が運ばれて来た時だった。
「何? ……これ。輝いてるんだけど……」
横浜のお店で食べるのとは、明らかに違う。赤い色の濃淡が凄い。深紅のお肉もあれば……淡い赤もある。「部位によって違う」って、お父さんは言っていた。
「味も全然違いましたもん」
焼き方が違う訳でも無いのに……口の中入れると、優しい噛み応え。脂身もほどほどなのに、柔らかく溶けていった。
「でしょ? 値段も本当に安いんだよ。横浜と違うでしょ?」
エレベーターを待ちながら、お母さんは教えてくれた。
「熊本は畜産が盛んなの。肉牛ね。今回は行けないけど……阿蘇でも沢山飼ってるんだよ」
「へぇ」
「だから質が都会と全然違うしね。それにびっくりするくらい、安いよ」
「熊本で育ててるから……安く買えるってことか」
「ま、そんな感じかな」
今回は1泊だから、そこまで分からないけれど、「だから焼肉のお店ばっかりだよ」とお母さんは言っていた。
「肉ばっかりなのかな……魚は無いのかな」
「魚はね、天草があるんだけど、やっぱり大分には敵わないかな」
大分出身のお母さんは、優しく笑う。大分のお魚は、別格らしい。「今度はみんなで大分に行こう」って、お母さんが言った。
「おぉ、来たか。じゃ……行こうか」
フロント近くで、翔太とお父さんが待っている。「温泉に行こう」ってお父さんが焼肉屋さんで突然言い出し、タクシーで向かうことにしていた。
「温泉も、良いんだよ。驚くぞ」
ドアを開けて、まだまだ湿気がまとわりつくような、夜の繁華街。色々な場所に、天然温泉が沢山あるらしい。
「ま、大分に比べれば……温泉は少ないけどね。それに高いし」
ちょっと自慢気なお母さん。行ったことは無いけど、大分の温泉は効能が凄いらしい。お父さんがタクシーの運転手さんと話をして、わたし達は乗り込んだ。
繁華街から7、8分の所に、有名な天然温泉があるらしかった。郊外の方には天然温泉が物凄い数あるらしいけど、レンタカーを借りていないし、お父さんもお酒を飲んでいたから、今回は繁華街から行ける温泉に決めた。
後部座席から、繁華街を歩く人を眺める。
(ゆっくりしてる感じだな……)
人の数もそれほど多く無いし、みんなゆったりしているように見えた。磯子や横浜で育っているわたしにとって「こんなにのんびしていて、良いんだ」と驚くことばかりだった。
(……大学、こういう場所に来るのも、良いな)
翔太と2人きりになれた時間は少なかったけれど、横浜と全然違う空気感。
わたしの心は穏やかに、満たされていた。



