結局、お城の中には入らなかった。
元気になったように見えたけど、翔太の体調が心配だったから。それに……わたしも、流石に限界だった。
「あ、帰って来るって」
翔太がお母さんからラインが来たのも、理由の一つだった。
「え? あなた達……お城、行かなかったんだ」
ホテルのフロントで、お母さんが驚いたような声をあげていた。
「無理だよ。暑過ぎるってば」
「はぁ」と息を吐きながら、ソファに座りながら翔太が言った。涼しいフロントエリアで、だいぶ調子も良く見えた。
「わたしも……少し熱中症気味で」
翔太に助舟を出すために、わたしもお母さんに言う。「そっか。横浜とは違うからね……仕方無いか」と、お父さんと顔を見合わせていた。
時間も夕方6時を少し回っていて、「晩ご飯。食べれるか?」とお父さんが翔太に尋ねていた。確かにわたしも、ハンバーガーを食べたきりで何も食べていなかった。
「昼もそうだったんだけどさ……熊本って何が有名なの」
「からし蓮根とか馬刺しとかだな」
「せっかく横浜から来たのに?」
「そしたら、やっぱり肉だな」
晩ご飯が決まった。熊本はお肉が有名らしい。別に「横浜でも食べれるじゃん」と翔太が言い返していたけれど、「食べたら分かる」とお父さんはピシャリと言い切っていた。
「じゃ、街に出ようか。沢山あるから、お店」
わたし達は、お父さんの後についてホテルを出て街中へと歩き出して行った。
「スイカも有名だけど、晩ご飯にはならんしな。馬刺しも……お酒のおつまみだから。色々有名なものはあるけど、おかずになるのは、肉かな」
歩きながら、お父さんが説明してくれる。豚肉も鶏肉も、お肉なら何でも美味しいらしい。
「……そんな変わらないでしょ」と街中をきょろきょろと見回しながら、翔太が言った。
熊本の街は細い路地が多い。夕方になっても、もわっとした熱気が体の周りにまとわりついている。手うちわで風を送っても、涼しい風が顔に当たる訳じゃ無いから……やるのを止めた。細い路地には所狭しと、古びた雑居ビルが多い。
「ここ、良いかもな」
ビルの1階には多くの立て看板が並ぶ。どれがどのお店なのか分からないほどに。焼肉もあるし、居酒屋さんのメニューも沢山あるということで、2階のお店に決まった。
「何……ここ入るの?」
煙草の匂いがふわっと鼻を覆う、エレベーター乗り場。かなり年季の入っているビル。翔太が顔をしかめながら言う。わたしもちょっと「大丈夫かな」と思った。
「ん? 何が」
「……ちょっと怖いんだけど」
「こんな感じだよ。地方都市は」そう言うと、お父さんは声を上げて笑っていた。
定員6名ほどの、狭いエレベーターに乗る。ここまで古いエレベーターに乗るのは磯子でもなかなか無い。ゴミは落ちていないけど、途中で止まってしまわないか心配になりがらわたしはじっと我慢していた。
チンと音が鳴りドアが開くと、目の前がいきなりお店になっていた。1階の建物の周りにはほとんど人がいなかったのに……ガラス張りのお店の中は、超満員。沢山の話し声、笑い声が外まで響き渡る。
(みんな、中にいたんだ……。すっごい人の数じゃん)
「入れるかな?」と言いながら、お父さんはお店のドアを開けて中へと入って行った。
元気になったように見えたけど、翔太の体調が心配だったから。それに……わたしも、流石に限界だった。
「あ、帰って来るって」
翔太がお母さんからラインが来たのも、理由の一つだった。
「え? あなた達……お城、行かなかったんだ」
ホテルのフロントで、お母さんが驚いたような声をあげていた。
「無理だよ。暑過ぎるってば」
「はぁ」と息を吐きながら、ソファに座りながら翔太が言った。涼しいフロントエリアで、だいぶ調子も良く見えた。
「わたしも……少し熱中症気味で」
翔太に助舟を出すために、わたしもお母さんに言う。「そっか。横浜とは違うからね……仕方無いか」と、お父さんと顔を見合わせていた。
時間も夕方6時を少し回っていて、「晩ご飯。食べれるか?」とお父さんが翔太に尋ねていた。確かにわたしも、ハンバーガーを食べたきりで何も食べていなかった。
「昼もそうだったんだけどさ……熊本って何が有名なの」
「からし蓮根とか馬刺しとかだな」
「せっかく横浜から来たのに?」
「そしたら、やっぱり肉だな」
晩ご飯が決まった。熊本はお肉が有名らしい。別に「横浜でも食べれるじゃん」と翔太が言い返していたけれど、「食べたら分かる」とお父さんはピシャリと言い切っていた。
「じゃ、街に出ようか。沢山あるから、お店」
わたし達は、お父さんの後についてホテルを出て街中へと歩き出して行った。
「スイカも有名だけど、晩ご飯にはならんしな。馬刺しも……お酒のおつまみだから。色々有名なものはあるけど、おかずになるのは、肉かな」
歩きながら、お父さんが説明してくれる。豚肉も鶏肉も、お肉なら何でも美味しいらしい。
「……そんな変わらないでしょ」と街中をきょろきょろと見回しながら、翔太が言った。
熊本の街は細い路地が多い。夕方になっても、もわっとした熱気が体の周りにまとわりついている。手うちわで風を送っても、涼しい風が顔に当たる訳じゃ無いから……やるのを止めた。細い路地には所狭しと、古びた雑居ビルが多い。
「ここ、良いかもな」
ビルの1階には多くの立て看板が並ぶ。どれがどのお店なのか分からないほどに。焼肉もあるし、居酒屋さんのメニューも沢山あるということで、2階のお店に決まった。
「何……ここ入るの?」
煙草の匂いがふわっと鼻を覆う、エレベーター乗り場。かなり年季の入っているビル。翔太が顔をしかめながら言う。わたしもちょっと「大丈夫かな」と思った。
「ん? 何が」
「……ちょっと怖いんだけど」
「こんな感じだよ。地方都市は」そう言うと、お父さんは声を上げて笑っていた。
定員6名ほどの、狭いエレベーターに乗る。ここまで古いエレベーターに乗るのは磯子でもなかなか無い。ゴミは落ちていないけど、途中で止まってしまわないか心配になりがらわたしはじっと我慢していた。
チンと音が鳴りドアが開くと、目の前がいきなりお店になっていた。1階の建物の周りにはほとんど人がいなかったのに……ガラス張りのお店の中は、超満員。沢山の話し声、笑い声が外まで響き渡る。
(みんな、中にいたんだ……。すっごい人の数じゃん)
「入れるかな?」と言いながら、お父さんはお店のドアを開けて中へと入って行った。



