熊本の『街』は、想像を遥かに超えていた。「きっと田舎なんだろうな」と思っていたわたし。バスを降りて目に飛び込んできたのは……横浜駅の繁華街と変わらないくらいの、ビルの多さだった。
(何よ、ここ……イメージと全然違うじゃん……)
雰囲気は、関内駅のアーケードと、横浜駅の繁華街。ちょうど中間くらいの規模。でも……人の数は全然少なかった。お父さん達の後ろを歩く。
「人、少ないですよね」
チェーンの飲食店や、カラオケに書店。ケーキ屋さんラーメン屋さん。賑わっているお店を横目に見ながら、お父さんに尋ねてみた。
「横浜に比べればね。でも、初めて『街』に来た時は、驚いたもんだけどね」
懐かしそうに周囲のお店に視線を移しながら、お父さんは言った。
「暑さはヤバいけどね……」
「ね。すっごいよね……」
あまりしゃべらなくなっていた翔太が、ぽつりと呟く。わたしも同じ気持ちだった。わたし達くらいの子達は、ハンディの扇風機をみんな持っているけど……そんなレベルじゃ無い。
ちょっとでも早足で歩くと、汗が噴き出してくる。できる限りゆっくりと歩くようにしていた。
「ん? ここじゃない?」お母さんが立ち止まって見上げたのは、街中を5分ほど歩いた所にある建物だった。ちょっと灰色のシンプルな作りで、縦長のビル。「ここに泊まるからね」とお母さんは言いながら、中へと入って行った。
(……涼しい)
フロントも、1階部分も洗練されてスタイリッシュ。もっと熊本のビジネスホテルは古い建物が多いと思い込んでいたわたしは、びっくりした。
「私と真帆ちゃんは、同じ部屋。203号室かな」
わたしはお母さんと同じ部屋。翔太はお父さんと同じ部屋に泊まることになっているらしい。エレベーターを待つわたし達に「じゃ、また後で」と言い残すと、お父さんだけ再びホテルを出て行った。
「なぁ。お父さん、どこ行ったの」
エレベーターの中で、翔太がお母さんに尋ねていた。もちろんわたしも気になる。
「実家に行ったのよ」
「……実家? おじいちゃん達の所ってこと?」
「そう。先にね」
「……先に? どういうこと」
「えっ? 30分くらいしたら、私も行くよ」
「はっ……?」
意味が分からなかった。とりあえず、お母さんとわたしは203号室に一緒に行くけど……
「30分したら、どうなるのかな」と思いながら、話を聞いていた。
「だから、あなた達だけで街中を回ったら良いよ」
目まいがしそうになった。
(翔太と? 2人でって……こと?)
「あなた達だけの方が良いでしょ」
そう言うと、エレベーターは2階に到着した。
「……ありがとうございます」
部屋に入ってエアコンを付けると、わたしはお母さんに感謝を述べた。でも……わたしは気が気じゃ無い。30分後からは翔太と2人きりになってしまう……。
「緊張してるんでしょ?」
心の中を見透かしたように、わたしに向かってお母さんは優しく微笑んでくれた。
「……はい、ちょっと」
お母さんに小さいウソをついた。わたしの鼓動は大きく打っていて……これからのこと、何一つ考えられなくなっている。
「小学生の頃、以来かもね。でも……せっかく熊本来たんだから」
「暑かったでしょ? 大分も暑いけど……熊本は別格よね。若い時、私も驚いたから」
キャリーを開けて荷物を取り出しながら、お母さんは言う。
「30分あるから……真帆ちゃん、シャワー浴びたら?」
翔太と30分後に、1階のフロント前で落ち合うことになっている。刻一刻と迫る時間……。とりあえずシャワーだけは浴びようと思った。
(何よ、ここ……イメージと全然違うじゃん……)
雰囲気は、関内駅のアーケードと、横浜駅の繁華街。ちょうど中間くらいの規模。でも……人の数は全然少なかった。お父さん達の後ろを歩く。
「人、少ないですよね」
チェーンの飲食店や、カラオケに書店。ケーキ屋さんラーメン屋さん。賑わっているお店を横目に見ながら、お父さんに尋ねてみた。
「横浜に比べればね。でも、初めて『街』に来た時は、驚いたもんだけどね」
懐かしそうに周囲のお店に視線を移しながら、お父さんは言った。
「暑さはヤバいけどね……」
「ね。すっごいよね……」
あまりしゃべらなくなっていた翔太が、ぽつりと呟く。わたしも同じ気持ちだった。わたし達くらいの子達は、ハンディの扇風機をみんな持っているけど……そんなレベルじゃ無い。
ちょっとでも早足で歩くと、汗が噴き出してくる。できる限りゆっくりと歩くようにしていた。
「ん? ここじゃない?」お母さんが立ち止まって見上げたのは、街中を5分ほど歩いた所にある建物だった。ちょっと灰色のシンプルな作りで、縦長のビル。「ここに泊まるからね」とお母さんは言いながら、中へと入って行った。
(……涼しい)
フロントも、1階部分も洗練されてスタイリッシュ。もっと熊本のビジネスホテルは古い建物が多いと思い込んでいたわたしは、びっくりした。
「私と真帆ちゃんは、同じ部屋。203号室かな」
わたしはお母さんと同じ部屋。翔太はお父さんと同じ部屋に泊まることになっているらしい。エレベーターを待つわたし達に「じゃ、また後で」と言い残すと、お父さんだけ再びホテルを出て行った。
「なぁ。お父さん、どこ行ったの」
エレベーターの中で、翔太がお母さんに尋ねていた。もちろんわたしも気になる。
「実家に行ったのよ」
「……実家? おじいちゃん達の所ってこと?」
「そう。先にね」
「……先に? どういうこと」
「えっ? 30分くらいしたら、私も行くよ」
「はっ……?」
意味が分からなかった。とりあえず、お母さんとわたしは203号室に一緒に行くけど……
「30分したら、どうなるのかな」と思いながら、話を聞いていた。
「だから、あなた達だけで街中を回ったら良いよ」
目まいがしそうになった。
(翔太と? 2人でって……こと?)
「あなた達だけの方が良いでしょ」
そう言うと、エレベーターは2階に到着した。
「……ありがとうございます」
部屋に入ってエアコンを付けると、わたしはお母さんに感謝を述べた。でも……わたしは気が気じゃ無い。30分後からは翔太と2人きりになってしまう……。
「緊張してるんでしょ?」
心の中を見透かしたように、わたしに向かってお母さんは優しく微笑んでくれた。
「……はい、ちょっと」
お母さんに小さいウソをついた。わたしの鼓動は大きく打っていて……これからのこと、何一つ考えられなくなっている。
「小学生の頃、以来かもね。でも……せっかく熊本来たんだから」
「暑かったでしょ? 大分も暑いけど……熊本は別格よね。若い時、私も驚いたから」
キャリーを開けて荷物を取り出しながら、お母さんは言う。
「30分あるから……真帆ちゃん、シャワー浴びたら?」
翔太と30分後に、1階のフロント前で落ち合うことになっている。刻一刻と迫る時間……。とりあえずシャワーだけは浴びようと思った。



