「えっ? 九州?」
「ちょっと……! 希ちゃん、声大きいってば……」
朝の8時過ぎ。夏休みを目前に控える7月下旬は、坂道を上ると汗が滲んでしまう。翔太のお父さん達について行くことを伝えると、希ちゃんは予想通りの反応だった。
「思い切ったこと、したねー……」
希ちゃんにとっても予想外だったらしく、真顔でわたしの言葉に返すのが精一杯な様子に見える。
「うん。めっちゃ緊張するけどね」
「でもさ、良いね! 親同士が仲が良いなんて……神様の思し召しじゃない?」
「そこまでじゃないけど……」
公園の横を通り過ぎる。そよ風が吹いて気持ちが良いはずの緑の木々も、大人しく垂れ下がり、暑さを助長している。坂道を上って乱れた呼吸は、まだ元に戻らない。
「告白……されるのかな」
正面を見つめながら、希ちゃんがまじまじと言った。「告白」というワードに、思わず胸がドキンとする。
「ちょっと……そんな訳……」
「だってさ。九州だよ。旅行だよ?」
もちろん分かってる。わたしだって……期待していないと言ったら、ウソになる。翔太の家から帰って以来、ずっとわたしの心の中で膨らみ続ける想い。
「……」
「もちろんね……どうなるか分からないけどね……」
校門をくぐり抜けて、昇降口へと急いで歩いて行った。
――
翔太のお母さん達から旅行の話が出て、大きく変わったことがある。
「なぁ」
「……えっ? 何?」
「九州のことなんだけど」
翔太が割と話かけてくれるようになったこと。
わたし自身から話かけることは無いけれど……「話がしたいな」と思っていると、翔太から話かけてくれることが増えていた。
「あっ、うん」
「もう、準備……してんの?」
休み時間のさりげないタイミングで、話かけてくれる。そんなに長く話をしている訳じゃ無いから、別に違和感は無いと思う。
「飛行機のチケット、取ってくれてるみたい。……お父さんが言ってた」
「そっか。あと4日だもんな……」
ちょっとしたことを聞いてくれたりするだけ。一言、二言会話をして、翔太は席に戻って行く。
(もっとしゃべりたいけど……)
わたしが一緒に行くこと。翔太はどう思ってるんだろう?
気になる……。嫌がっていないかな。
聞きたいことは沢山あるけど、いつも次の授業の先生が教室に入ってきて、わたし達の話は終わる。
(今度……帰り話、できたら良いな)
同じ磯子駅に住んでるんだから。駅からだったら、見られることも無い。確か部活はやっていないはず……。
「後ろから歩いて行こうかな」
「翔太が帰るタイミングで、教室出れば良いのかな……」
昔のように、一緒に話をしたいだけなのに……「何でこんなに緊張するんだろう」と思った。気付いて手のひらを開くと、少し汗ばんでいた。
(でも……もう、出発が近いし……)
どきどきする気持ちを抑えて、わたしは翔太が帰るタイミングを待ってから帰ろうと決めた。
「ちょっと……! 希ちゃん、声大きいってば……」
朝の8時過ぎ。夏休みを目前に控える7月下旬は、坂道を上ると汗が滲んでしまう。翔太のお父さん達について行くことを伝えると、希ちゃんは予想通りの反応だった。
「思い切ったこと、したねー……」
希ちゃんにとっても予想外だったらしく、真顔でわたしの言葉に返すのが精一杯な様子に見える。
「うん。めっちゃ緊張するけどね」
「でもさ、良いね! 親同士が仲が良いなんて……神様の思し召しじゃない?」
「そこまでじゃないけど……」
公園の横を通り過ぎる。そよ風が吹いて気持ちが良いはずの緑の木々も、大人しく垂れ下がり、暑さを助長している。坂道を上って乱れた呼吸は、まだ元に戻らない。
「告白……されるのかな」
正面を見つめながら、希ちゃんがまじまじと言った。「告白」というワードに、思わず胸がドキンとする。
「ちょっと……そんな訳……」
「だってさ。九州だよ。旅行だよ?」
もちろん分かってる。わたしだって……期待していないと言ったら、ウソになる。翔太の家から帰って以来、ずっとわたしの心の中で膨らみ続ける想い。
「……」
「もちろんね……どうなるか分からないけどね……」
校門をくぐり抜けて、昇降口へと急いで歩いて行った。
――
翔太のお母さん達から旅行の話が出て、大きく変わったことがある。
「なぁ」
「……えっ? 何?」
「九州のことなんだけど」
翔太が割と話かけてくれるようになったこと。
わたし自身から話かけることは無いけれど……「話がしたいな」と思っていると、翔太から話かけてくれることが増えていた。
「あっ、うん」
「もう、準備……してんの?」
休み時間のさりげないタイミングで、話かけてくれる。そんなに長く話をしている訳じゃ無いから、別に違和感は無いと思う。
「飛行機のチケット、取ってくれてるみたい。……お父さんが言ってた」
「そっか。あと4日だもんな……」
ちょっとしたことを聞いてくれたりするだけ。一言、二言会話をして、翔太は席に戻って行く。
(もっとしゃべりたいけど……)
わたしが一緒に行くこと。翔太はどう思ってるんだろう?
気になる……。嫌がっていないかな。
聞きたいことは沢山あるけど、いつも次の授業の先生が教室に入ってきて、わたし達の話は終わる。
(今度……帰り話、できたら良いな)
同じ磯子駅に住んでるんだから。駅からだったら、見られることも無い。確か部活はやっていないはず……。
「後ろから歩いて行こうかな」
「翔太が帰るタイミングで、教室出れば良いのかな……」
昔のように、一緒に話をしたいだけなのに……「何でこんなに緊張するんだろう」と思った。気付いて手のひらを開くと、少し汗ばんでいた。
(でも……もう、出発が近いし……)
どきどきする気持ちを抑えて、わたしは翔太が帰るタイミングを待ってから帰ろうと決めた。



