恋といえばあれとそれとこれ。

「あのさ…」
デート中に話すべきじゃないのは、わかっている。
でもいずれ話さなければならない。
「何…?」
彼は私の真剣な空気を察したのか、おそるおそる尋ねてくる。
「私、元カレいたんだよね…」
彼は驚いた顔をする。
(やっぱり引いたかな……)
元彼がいたのは事実だけど、彼とのデートが楽しみじゃないわけがない。
今日のために私は、すごく張り切った。これは事実だ。
「…どんなやつ?」
意外にもそう聞かれて、
「え?」
と答えてしまった。彼のことなら「ふーん」とかで終わりそうだったのに。
「えっと、最初は優しかったんだけど…、だんだん一緒に居づらくなって…。そしたら、別れよって言われた」
別れた経緯を簡単に説明する。彼はそれを聞いて顔にシワがより出す。
「今はどっち?…今彼と元彼」
そう聞かれて、私の答えは決まっている。
「今彼」
私はこういうのが精一杯だった。それでも頑張った方だと思う。
彼は顔を私に近づけてくる。
(…キス…?!)
唇に柔らかい感触が残る。私は触れられた口にそっと手を当てる。今の出来事にぼぅっとしていると、
「辛い記憶なんて、俺が全部塗り替える」
彼が真剣な眼差しで私を見ながらそう言ってくれる。
私は目から涙がぽたぽたとこぼれ出す。
「ありがとう!」