恋といえばあれとそれとこれ。

「ボールペン貸して」
彼にそう言われた。私は逆に消しゴムを貸して欲しかった。
「消しゴム貸して」
そう言ってお互いの顔をみる。
そして、同時に吹き出す。
「あはは」
「なんでこんな真剣な顔で言うの?」
笑いが止まらない。
(あー、幸せだなぁ…)
じつは私は彼のことが好きだ。だから、隣の席になれたと知ったときは、天に舞い上がりそうだった。
「はい」
消しゴムが差し出される。私はペンケースを漁って、ボールペンを出す。
「はい」
これで貸し借りが成立した。
(消しゴム借りちゃった…)
彼の消しゴムをぎゅっと握って、この恋が実ることを祈る。
「なにしてんの?」
祈っているところを彼に見られてしまった。どうしよう、どうしよう。
「…いや何も…」
消しゴムをパッと話して、何もなかった風を装う。
「今、俺の消しゴム握ってたよね?」
そう言われて私はぎくっとする。私は目を合わせないように別の方向を向く。
「んじゃ、俺もお願いしよー」
彼は私がしたことを初めから知っていたようだ。
(恥ずかしい……)
顔が熱くなる。不意に彼が何かを呟いていたのが聞こえる。
「…隣の人と付き合えますように」
私は、心の中で大声で叫ぶ。恥ずかしさと嬉しさで舞い上がりそうだった。