ひかりのとなり〜幼馴染とふたりで配信中〜

 陽のこと特別だって思って、日々がちょっとだけ、楽しくて浮ついて、気まずくて切なくなった。
 陽と肩を並べて、お互いフォロワー数のこととか気にせず配信できるようになって、少しずつ視聴者数も伸びていった。何万人を超えたら告白しよう、とか毎回目標を設定しては、達成しても結局告白できず。そんなことを繰り返していた。
 陽はというと、最近僕が羽衣と仲がいいことに少し不満げというか、羨んでいるような反応が多かった。陽を意識しすぎてつい避けてしまうことが無意識にあるみたいで、それがつらいらしくて、とても申し訳なかった。
 そんな中、僕たちは配信者の集まるリアルイベントに招待されることとなった。期待の新人枠ということで、伸び率が高い人に声をかけてくれたらしい。イベント日が夏休みの最中ということも、僕と陽の二人ともに声がかかったこともあって、僕たちは二つ返事で引き受けた。

 期末試験とレポートに追われ、それらをどうにか片付ける頃には、イベントの予告が解禁された。期待の新人枠じゃない人たちは錚々たるメンツで、配信をそんなに見ない僕でも顔を知っているような人たちばかりだった。もちろんチヒロも呼ばれていて、予告公開後に『一年目からあのイベント呼ばれるとかエグすぎ!当日楽しみだね〜』と連絡が来た。
 予告公開が運良く水曜日だったので、僕たちはコラボ配信でイベントについて話した。
「俺たち、こんなすごいイベントに呼んでもらえるの、マジで奇跡だと思ってて。なあユウキ?」
「う、うん。僕はヨウに誘われて配信始めたから、このイベントのことも知らなくて……メンバー見たら、まさかこんなすごい人たちに囲まれることになるなんて……」
『本当にすごいよ!楽しみ!』
『絶対会いに行くからね』
 リスナーさんたちも喜んでくれて、ワクワクと緊張が高まってきた。
 当日はまず全員でのトーク。配信もされるので、来てくれた人や見てくれている人にお礼を言ったり、これからの抱負を話したり(聞くので考えておいてね、と運営さんに言われた)あとはフリートークもあるらしい。十六人も集まるのに、フリートークなんて可能なのか…?と疑問ではあったけど、毎回ベテランの人が仕切ってくれるらしいので流れに身を任せることにしようと思う。
 その後は握手会があるらしくて、会場に来てくれたみんなと一分間ではあるが直接会話ができるらしい。僕はこれが楽しみだった。応援してくれてる人たちの目を見て感謝を伝えられる機会なんて、なかなか無いからだ。陽にひどいことを言った人も紛れているかもしれないと思うと少しだけ怖いけど、何かあればスタッフさんが取り押さえてくれるし、よっぽど大丈夫だろう。
「ペンとか色紙とか持ってきてくれた人には、サインとかしていいよって言われたけど、僕まだサインとか考えてないんだよね」
「俺は考えてあるぜ?今日の配信で一緒に考える?」
『私たちも一緒に考えたい!』
『一緒に考えたサインを当日してもらうんだ♪』
 カタカナで書くか英語で書くか、可愛く書くかカッコよく書くか……その日はそんな話で大盛り上がり。
 最終的には書きやすさ重視でカタカナで可愛く書くことに決まり、配信内でサインの練習もした。陽のサインも見せてもらったりして、リスナーさんたちもサイン欲しいから行こうかな、と言ってくれる人がたくさんいた。
 配信を終え、練習サインでいっぱいになった紙を陽が壁に貼り付けた。恥ずかしいからやめてよと伝えたが、こういうの映り込むとリスナーさん喜ぶだろ〜、なんて言い訳して引かなかった。心の底から恥ずかしい気持ちと、陽が僕との些細な思い出を大切にしてくれる嬉しい気持ちとが混ざって、目が回りそうになった。
「本当にさ、優輝と一緒に配信してなかったら俺、ここまで伸びてなかった──どころか、ここまで続けられているかもわからなかった。本当にありがとう」
「な、なに、急に」
「いや、ふと思って。こんな大きなイベント参加できるの、マジで……まだ実感わかないっていうか、ほんと……」
 そんなこと言ったら、僕は陽が配信してることに気づかなかったら、陽に一緒にやろうって言ってもらわなかったら、まだ陽に嫌われたのかもって思ってたかもしれないし、大学は本当につまらなくて日々をダラダラ過ごしていたかもしれないし、陽への依存に気づいて成長しようって思わなかったら、羽衣にも声をかけられなかったかもしれない。僕のほうが感謝でいっぱいだけど、そんなこと直接言うのはあまりに照れくさいし重いので、「どうも」とだけしか言えなかった。でも見透かしたみたいに、「可愛いやつ」とくしゃくしゃ頭を撫でられた。そんななんてことない行動で、胸がドキドキしてどうにかなりそうになった。顔が熱くて、赤くなってたりしないかな、バレたりしないかなって、思わず顔に力が入って眉間に皺が寄る。
「なんだよその顔〜」
「いきなり頭なんか撫でるからだろ」
「だって可愛かったし」
 可愛いなんてさ、気楽に言って、ずるいよ。「うぅ〜」と思わず漏れたうめき声を、また可愛い可愛いと言われる。
「陽っていつも僕のこと可愛いって言うよね」
 どれくらい本心なのかも分からない、その上どういうニュアンスの可愛いなのかも分からない。愛おしさの「可愛い」じゃなくて、犬猫に向けるような気楽な「可愛い」かもしれない。だから僕ばっかり照れて、本当に愚かかもしれない。陽のこと好きだって思ってしまってからというもの、こういう思考のぐるぐるがどんどん増えて、頭を使いすぎて頭が良くなってしまいそうだ。
 そんなに僕がぐるぐる考えているのに、「可愛いんだから仕方ないだろ〜」とニコニコしている。
「なんなら俺、結構昔から可愛いって思ってたもんね。優輝の最古参は俺だからね」
「昔っていつからだよ」
「そりゃもう、はじめまして向井優輝ですの時からよ」
 流石に冗談だろうトーンでそんなことを言ってから、急に真顔になって、
「でも、気づいたらそう思ってた」
 なんて言うから、情緒がめちゃくちゃになってしまう。これ、結構いい雰囲気なんじゃ?いま好きですって伝えたりしたら、うっかり勢いで通っちゃったりしない?とか思う。
「じゃあ、俺も陽の最古参だから。俺が最初に陽のことかっこいいって思ってたから」
 仕返しにそんなことを言い返すと、けらけら笑って、「そりゃ俺かっこいいもん」と自慢げに顎をしゃくる。悔しい、そんな返しがアリなら僕だってそりゃ僕可愛いもんって……返せないわ。自信がある人はすごいなぁ。
「昔からさ、俺のやること真似したり俺が行くとこ着いてきたりしたじゃん。今だって一緒に配信してくれてる。そういうとこが可愛いなーって思う。弟みたいだなって」
 そ、そういう可愛い、か。確かに僕、たった今陽の発言を真似しようとしたけれども。
「同い年だし。なんなら僕の方が八ヶ月歳上だし」
 そんな小さな抵抗も、ハイハイと笑って流されてしまうのだった。

 結局これからの抱負なに話そう?そんなことをイベント当日の電車の中でも話していた。
「まあ思ってることその場で話せばいいっしょ」
「陽みたいなコミュ強はそうかもしれないけどさ〜」
 元々配信者を自発的に志していたわけではないため、そんなに強い抱負みたいなものはなくて、これからも楽しく配信したいなとか、そういう気持ちが強い。そう伝えると、「ならそう言えばいいじゃん」とあっさり言われた。
「楽しみたいです、って立派な抱負だと思うよ?あとは楽しむためにこういうことを意識したいです、とか言えばカンペキ」
「なるほど……」
 どんな風に話そうかな、と考えているうち会場に着いて、有名すぎる共演者の人たちに挨拶をする。もうこの時点で胃が痛い。意外とみんな僕たちのこと認知してくれているのかお世辞なのか分からないけど、「コンビ配信でバズるのって珍しいしすごいよ」みたいな言葉をかけてくれた。
「あ、見つけた!ヨウくーん、ユウキくーん!」
 有名人ではあるけど見知った顔のチヒロが現れて、少し気持ちが楽になった。
「ヨウくんは一応初めまして〜。画面で見るよりかっこいいね」
「あ、はい!光栄っす!」
「なんでそんなチヒロに対して緊張してるの?」
「するだろ。むしろなんで優輝は変なとこで図太いん?」
「あはは、気楽に接してくれていいのに〜。てかユウキくんは今日初コラボだね?早く二人コラボの日程決めようよ、三人でもいいよ〜」
 距離感が近い陽キャ同士だから気が合いそうなのに、陽はガチガチで「そっすね」みたいな体育会系敬語を使い続けている。僕はずっと疑問なんだけど、その敬語って敬意を表せているのか?
 そんなこんなでイベントが始まって、まずは司会者の人から軽く紹介された後自己紹介をする流れだった。チヒロが「ちなみに隅っこにいるヨウくんとユウキくんのことは弟みたいに思ってま〜す」とか言い出して、僕とチヒロは表で一切絡んだことがなかったので会場がざわついた。
「続いてはヨウさん。なんと今年配信を始めたばかりで、隣にいるユウキさんとの性格診断配信が大バズりした、話題のルーキーです!」
「えっと、昼でも夜でもおっはヨウ!ヨウです。さっきご紹介に預かった通り、チヒロさんにはいつもお世話になっています」
 電車の中では余裕そうだったのに、いざステージに立ったらガチガチの陽を見て思わずニヤついてしまう。
「初のリアルイベントですごくワクワクしてます!今日はよろしくお願いします!」
 陽がそう言い終え、司会者が僕の紹介をしてくれる。ガチガチに緊張したヨウを見ているからか、逆に僕の緊張は解けてきた。
「ユウキです、こんにちは。配信を始めたきっかけであるヨウと一緒にこのステージに立てて嬉しいです。僕もリアルイベントは初めてで、至らぬ点もあるかと思いますが、よろしくお願いします!」
 スラスラと話せて、安心して思わずふぅ、とため息を吐いたのがマイクに乗ってしまって、会場の人たちに笑われてしまった。コメントよりも早く、リアルにみんなの反応が届いてそわそわした。
 その後抱負をついに聞かれて、陽が「これからもっと有名になって、またこう言うイベント出たいです」みたいなことを言った。僕は電車で話していた通り、「配信を楽しみたいです」と話した。
「まだ配信を始めたばかりなので、心ないコメントに傷ついてしまうこともあるし、正直楽しい事ばかりとはいかないけど、乗り越えていきたいなって、強くなりたいなって思ってます」
 陽の隣で。そう思って隣を見ると、陽は応えるみたいににっこり笑ってくれた。「仲良しですね〜」と司会者が笑って、陽も真顔で「ハイ!」とか返すから、僕も笑ってしまった。

 握手会も無事終わった。サインも最初は三十秒くらいかかってたけど十秒くらいで書けるようになってきた。「応援してます」って直で言われるのはめっちゃ嬉しくて、変なこと言ってくる人はいなくて、大満足でイベントを終えた。
 控え室に行くと、チヒロが「お疲れ〜」と声をかけてきた。
「お疲れ様です。あれ、ヨウは?」
「ヨウくんまだ来てないよ〜」
 ヨウがいないと、有名人だらけの中に取り残されたみたいで気まずい。気まずさをどうにかごまかすため、チヒロにどうでもいいようなことをたくさん話していると、チヒロが「そういえばさ〜」と話の腰を折った。
「デキてんの?ヨウくんとユウキくんって」
「デっ……」
 僕がびっくりして口をぱくぱくさせていると、チヒロが「あはは、勘違いだったか、ごめんごめん」と手を合わせた。
「両想いっぽく見えたんだけど、ヨウくんの片想いかな?」
 ヨウが?逆だよ逆、とは言えないので、「そんなことないと思うけどね」と返すことしかできない。
 そんな話してたら陽がやってきて、チヒロがなんでもないテンションで「ねぇヨウくん」と会話に混ぜる。
「ヨウくんはユウキくんのこと大好きだもんねぇ」
「え?はい、まぁ、大好きっすけど」
 僕の反応を見て、チヒロが「なるほど〜」ってにやにやする。嫌な兄弟だ。
「なに?なんの話?」
 キョトンとする陽に、チヒロが「なんでもな〜い」って言いながら立ち上がる。
「タクシー使うけど一緒に乗る?」
 お言葉に甘えて〜、なんて話をしていると、周りの有名人が「そこ三人ガチで仲良いんだ、そんなイメージないわ」って近づいてくる。
「チヒロって誰とでも仲良いけど特定の仲良しは作らないイメージだった。ヨウには入れ込んでるよね」
「この子達、弟の大学の同級生なんだよ〜」
「マジか!世間狭!」
 羽衣と知り合った方が順序としては後なので、純粋にチヒロはヨウを気に入っているだけだと思う。そう思うと、さっき「デキてんの?」って聞かれた意味を深読みしてしまって、少しモヤモヤしてしまう。
 僕の気持ちなんか知らずに、陽はにこにこ話を聞いている。正直、めちゃめちゃ焦る。

 大学の最寄り駅でチヒロに降ろされ、「せっかくだし今日うち泊まって行く?」と、何がせっかくなのかよく分からない陽の誘いに乗って、陽の家に行くことにした。
 陽の家で、僕は思わずさっきのことを話してしまう。
「ねえ、あのさ。さっきチヒロに、僕と陽って付き合ってるの?って聞かれたんだけど」
「マジ?そんな風に見えてんだ」
 僕は拳をぎゅっと握りしめて、陽に問いかける。
「……ねぇ、陽は?どう思ってるの?」
「どうって……。」
「チヒロのこと……」
「……え、チヒロ?いや別に、すげえ人だなとしか……」
 そんなキョトンとした反応にホッとしていると、
「優輝は、どう思ってんだよ」
 そんなことを聞かれる。
「いや、別に、僕もすごい人だなとしか」
「じゃなくて、俺のこと」
 急にそんなことを聞かれて、「なんで?」としか言えなかった。
「俺と付き合ってるように見えるとか言われて……どう思った?」
 それは……まずは、嬉しかったかもしれない。陽はキラキラしてて手が届かない存在だと思ってたから、第三者から釣り合って見えているのかなって思うと。それで、照れくさくて、恥ずかしくて。
「俺は、さ」
 僕が返事をする前に、陽は続けた。頭をかきながら、足をもぞもぞ動かしながら。
「嬉しい、けど……」
「うれ、しい?」
 僕と同じだ。もしかして、この気持ちも僕と同じなんだろうか。伝えてもいいんだろうか。
 イベントもあって、気持ちが高揚しているせいもあってか、口からポロリと「好きだ」って言いそうになる。陽と目が合うたび、いつもよりかっこいいかもと思えて、意識してしまう。
 しばらくの沈黙があった。どう答えればいいか分からなくて。そういう時はいつも陽が沈黙を破るんだけど、今日は僕の返事を待つみたいに、じっとこっちを見つめてきた。
「あのさ、陽」
 今、言うしかないのかもしれない。今までずっと引き伸ばしてきたけれど。でも、もしこれで拒絶されたら?そういう気持が消えなくて、
「僕、さ。チヒロに付き合ってる?って言われた時にさ、チヒロが陽のこと気になってて、それで確認してきてるのかなって思って」
「うん」
 思わず長くなる前置きを、陽は笑うことも急かすこともせず、真剣に聞いてくれている。
「そうだったら、嫌だなって思いました」
 ……ダメだ、こんな言い方じゃ。ちゃんと言わなくちゃ。
「あの日、仲直りした日に、陽がぽろっと好きだって言ってきたのを、ずっと意識しちゃって。考えてるうち、陽のこと好きだって気づいたの」
 やっと言えた。怖くて顔が見れなくて、うつむいてしまう。そんな僕の頰を両手で包んで持ち上げて、無理やり陽の顔を見せられる。陽は涙目になっていて、なんだか僕まで釣られて目頭が熱くなってきた。
「遅えよ」
「遅いって、何」
「じゃあ俺ばっか好きだったんじゃん、ずっと」
 その言葉の意味が理解できなかった。今度は沈黙が長くなる前に、いつもみたいに陽が話してくれる。
「俺はもっと前から好きだったってこと!……でも、あの日、ついうっかり好きだとか言っちゃって、引かれたらどうしようと思ったけど……それで意識してくれたなら、まあ、ラッキーっていうか……」
 やっと意味が理解できて、今更心臓がばくばくうるさくなる。
「なのにさ、優輝ってば羽衣と秘密なんか作っちゃってさ、なんかいい感じだしさ、ずっとモヤモヤして」
「陽のことだよ。秘密。羽衣に、陽のこと好きでどうしようって相談してたの」
「は、ええ?」
 しばらく見つめ合って、二人であははって笑った。お互いずっと隠してた気持ちをやっと吐き出せて、やっと気楽になったっていうか。
 だったらもっと早く言えばよかったとか、いや俺はあの時好きって言ったじゃんとか、しばらくごちゃごちゃ揉めて、また笑って。一歩進んだはずなのに、いつもの僕たちに戻ったなって気持ちの方が強かった。やっぱり僕たちに隠し事なんて似合わないや。
「改めて、好き、です。」
 ぎゅうっと陽を抱きしめながら言うと、陽もぎゅううと抱きしめ返してくれた。今までも何度かハグをしたことはあるけど、今までで一番温かくて、気づいたら僕は泣いてしまっていた。
「泣き虫。そこも好き」
 初めてのキスは、いちごの味もレモンの味もしなかったけど、溶けちゃいそうなくらい熱かった。
「ずっと、って、どのくらい?」
「優輝と離れた時。優輝に絶対に置いていかれなくないって思った」
「じゃあ僕とそんな変わんないじゃん」
「今までずっと後をついてきた優輝が、俺を置いて行っちゃった気がして焦ったんだよ。それで初めて自覚しただけ。絶対もっと前から好きだったもん」
 子供っぽく言い訳をしながら、頭をグリグリ擦り付けたり、手を握ってきたりする。
「そんなこと言い出したら僕だって小学校の時から好きだったもん」
口だけ喧嘩して、体はずっと触れ合っていた。頬ずりをすると、ボソッと「ずる……」って言われた。
 何度もキスをして、熱くなってきた下腹部をそっと触られて、「嫌?」って聞かれる。
「それ、ずるい。嫌なわけない」
 好きだって自覚してから同じ布団で寝るのを避けていたから、久々に同じ布団に入った。普段自分で触らないようなところを触られて、普段自分で触らないような触られ方をして。陽の息が上がっていって、必死だって分かる。僕も、出したことないような甘い声を出してしまって。
「可愛い、俺だけの優輝」
 心臓はずっとうるさかったけど、痛くはなくて、頭が沸騰しそうなくらい熱くて、幸せで、とうとう本当に溶けてしまっていないか心配になるくらいだった。
 押し寄せる快感と幸福にくらくらしながら、キスをねだる。指を絡めて強く握ると、答えるみたいに握りしめてくれる。
「好きだよ、優輝」
「陽、好き、陽……っ」

 「……声枯れちゃったじゃん、陽のバカ」
「あはは……その声も可愛い。本当に」
 喉仏にちゅ、とキスを落とされて、声なんか治ってしまいそうな気がした。
「でも、配信に差し支えるから次からもっと気をつける……」
 もう一回キスをしたら、安心からか疲れからか、一瞬で眠りに落ちてしまった。「おやすみ、愛してる」って、甘い声が聞こえた気がした。