ひかりのとなり〜幼馴染とふたりで配信中〜

 今日も退屈だったなぁ。そんな些細な愚痴をこぼすか悩んで、結果ため息となった。
 大学に入学したはいいものの、高校までと違ってクラスがあるわけでも席が決まっているわけでもない中、サークルにも入り損ねてしまった。その結果ほとんど新しい友達もできず、たまに同じ高校のやつらと話すくらいだ。大学では興味のある講義で好きなように時間割を組んでいいと高校の時は聞いていたのに、実際はほとんど受けなきゃいけない講義が決まっていて、興味のないものも履修しなきゃいけない。大学生活が始まったばかりの頃は必死だったが、次第に慣れ始めて、毎日本当に退屈だな、と思いながら過ごしている。
 ふと「レポートまじやばい、手伝って」「えー、学食奢れよな」なんて会話が聞こえてきて、そんな普通、当たり前が、やけに遠く感じた。
 しかも、唯一友達と言える男すら、最近は付き合いが悪い。隣にいるそいつの顔を見て、より一層憂鬱になる。
「優輝?何しょぼくれてんだよ」
 僕の気持ちを知ってか知らずか、先ほどまでスマホばかり見ていた顔をあげ、そいつ──満田(みつだ)陽は、心配そうに顔を覗き込んできた。
「何ってほどのことじゃないけど」
 んー?と、今度は不思議そうな顔になる。
 陽は小学生の時からの幼馴染。満田陽と、僕、向井優輝は、たまたま苗字が「み」と「む」で、たまたま席が前後になったことから話すようになった。そんな小さな頃から僕と陽は正反対で、なんかキラキラしていてかっこよくておしゃれな陽に比べて、なんの取り柄もない平凡な僕。それなのに、なんとなく……僕が思っているだけかもしれないけど、二人で過ごすのはとても居心地がよかった。それで趣味が合うわけでもないのに、気づいたらいつも一緒にいて、気づいたら同じ中学、同じ高校、同じ大学まで上がってきていた。周りの人たちに「なんでか分かんないけど仲良いよな〜」なんて言われ続けて十年以上が経過していた。僕もなんでか分かんないと思ってはいたけれど、陽が僕と一緒にいてくれることは嬉しくて、誇らしくもあった。
 それなのに、それなのに……!
「……やべ、俺、もう帰らねえと!じゃあな、優輝!」
 さっきまで和気藹々と話していたはずなのに、そんなことを言って走って帰ってしまう。最近ずっとそうなのだ。予定があるなんて何も言っていないのに、いつも忙しそうにそそくさと帰ってしまう。陽が何考えてるか全然わからなくて、少し距離を感じていた。大学生になって髪も金髪に染めて、ピアスも開けて……もしかして地味な僕と一緒にいるの飽きたのかな、なんてぐるぐる考えながら、とぼとぼ帰り道を歩く。
 そうだよなあ、スマホ、面白いもんなあ。ゲームだってできるし、気になることはなんでも調べられるし、SNSを見れば知らない人の考えだって覗けてしまう。冴えない僕なんかと話すよりは、スマホを見ていた方が面白いかも──なんて思いながら自分も無意識にスマホを取り出し、画面を見ながら歩いていく。そうだよな、自分だって気づくとついついスマホを見てしまうんだから、悲観的になる必要はない、わかっているのに。
「……ん?」
 思わず立ち止まったのは、歩きスマホが危ないと思ったからではなかった。SNSに、見知った顔が流れてきたからだ。
『今日も定時配信遅刻してごめん!ご飯食べて30分後くらいには始めたい!』
 どこにでもありそうな配信者の配信告知。けれど、その投稿に添付された自撮りは、間違いなく。さっきまで隣にいた、あいつだった。

 急いで家に帰って、まださっき見たものを信じられない気持ちが強くて、かけていた眼鏡をクロスで拭き取った。別にそれで画像が変わるわけでもないのに、Wi-Fiに接続されたことをしっかり確認して、もう一度さっきの投稿を見返した。
 やっぱり、陽だった。ていうか、アカウント名も「ヨウ」だし、疑う余地なく陽だ。
 え、なんで?陽が配信者?過去の投稿をさかのぼったりしていたら、陽はかなり丁寧にリスナーからのコメントに返信していることに気づいた。その中には一時間前くらいの返信もあって、最近いつもスマホを見ている理由に合点が行った。なんで隠してたんだろう、言ってくれたら応援したのにとか、色々思ったけど、それよりも。
「よかったぁ〜……」
 一人暮らしなのをいいことに、大きな独り言を吐き出す。よかった、そう、本当によかった。陽が最近付き合いが悪いのは、飽きられたわけでも、嫌われたわけでもなくて、新しいことに熱中しているだけだったんだ。
 そんなこんなで一人で百面相しているうちに、ヨウが『配信開始!』と投稿していることに気づいた。あれから30分近くも過去の投稿を漁っていたのか、単に投稿が流れてきたとき既に30分経っていたのか、今となっては分からない。
 リンクを押して動画配信アプリを開くと、やっぱり見知った陽が、見知ったトーンでリスナーとおしゃべりしていた。そのことにすごく安心して、その日は配信を聞きながらご飯を作って、食べて、お風呂に入って──寝る前には配信が終わったから、過去の配信アーカイブを聞きながら、眠りについた。

 次の日の昼休み、陽が配信者をしていることに気づいたことを言うべきか言わないべきか、すごく悩んだ。見られているのは嫌かもしれないが知っていて黙っているのもフェアじゃないのではないか、なんてことをぐるぐる考える。陽からしたらバレたくないことだったかもしれない。ならこっそり配信を見たのは良くなかった?不安たちが寄り集まってチクチクと胸を刺してくる。とりあえず、まずは探ってみることにした。
「陽さ、最近なんか、趣味とかできた?」
 とりあえず、軽く探るつもりだったのに。コミュ力の無さからか、それとも変な緊張からか、不自然で怪しい質問を投げかけると、陽はうーんと首を傾げて、笑った。
「お前、さてはヨウのアカウント見つけたな?」
「えっ」
「えっ、てなんだよ。どっちなんだよ」
「いや、見つけたというか、その」
 「見つけた」と言うとこっちから探したみたいじゃないか。違うんだ、流れてきたんだ、たまたま!……けれど、配信まで見に行ってしまったんだから、そんな言い訳しても通用しない気もして。胸がギュッとして、手が震えて、どうにか声だけは震えないように絞り出した。
「……うん、見つけた」
「やっぱりな〜」
 こっちはそれだけ勇気を出したのに、あっけなくて、さっぱりした答えだった。震えがとれてきてやっと顔を上げると、陽は照れくさそうに頬をかいていた。
 聞けば、特に隠すつもりがあったわけでもないが、わざわざ言うことでもないんじゃないかと思い、なんとなく黙っていたらしい。
「教えたら、優輝なんて無理してでも配信見にきたりしそうじゃん」
「しないよ、無理は」
 すっかり前みたいな二人に戻れたような気がして、感じていた心の距離は気のせいだったんだって思えて。ついついフニャッと肩の力を抜いていたら、陽がとんでもないことを口にしてきた。
「優輝もやる?」
 僕も?え、何を?……文脈的に、配信に決まってる。……いや、いやいや。
「なんで?」
「だって、楽しいし!てか、優輝と二人で配信したら絶対楽しいんじゃね?」
「え?」
 あまりに想定外で、頭の中がハテナでいっぱいになる。
「てか前から思ってたけど優輝って声いいよな!イケボ?って感じ!」
「ええ??」
 その調子でグイグイと「顔もいいよな」なんておだてられたり、「あーけど服ちょっと地味だな、俺の貸してやるよ。身長一緒くらいだし」なんて勧められたり、どのくらい本心だったのかは分からないけれど、すっかりその気になってしまった。
「じゃ、じゃあ、一回くらいなら」
「マジ?やったー!」
 ちょっと軽率な発言だったかなと思ったけど、配信なんてやる勇気はなかったけど。陽にあまりに無邪気に喜んでもらえたから、すぐに嬉しさでいっぱいになった。すごく褒められたし、ご機嫌になりながら、陽とどんな配信をするかって、そればっかり考えていた。久々に、なんとなくじゃなくて、ちゃんと会う約束をしたことも、嬉しくて仕方がなかったんだ。
 午後は講義をとっていないので、そのままダラダラと話し込んだ。普段どんな配信をしているか、どんなリスナーさんがいつも遊びに来てくれるか、そんなことをたくさん教えてくれた。「恥ずかしいけど」と言いながら見せてくれた配信のアーカイブは昨夜聞いたものだったから、ちょっと申し訳ない気持ちになった。
「よし!じゃあ早速今日、俺の家来なよ」
そんなワクワクが緊張に変わったのは、突然そんなことを言われてしまったからで。
「え、きょっ、今日っ?」
 思わず声が裏返ってしまったのを、「きょおっ?」と真似され、ケラケラ笑われる。
「い、いや、急すぎるよ」
 こっちが驚いてどもっているのも気にしない様子で、陽は話を続けた。
「やっぱコラボ配信って、初回だったら雑談がいいと思うんだよなー。優輝は初配信になるわけだから、自己紹介も兼ねてさ」
 初配信……いやいや、一回きりのつもりだったのに。言い方的に、今後も何度も誘うつもりだ、こいつ。
「要するに、雑談だったらそんなに用意しなきゃいけないこともないしさ、今日できるってわけで、だから──」
「待ってよ、ちょっと」
 ぐい、と腕を引っ張ると、やっと陽は話すのをやめた。それでちょっと黙って、「あ〜!」と叫んで頭を抱えた。
「ごめん、ちょっと俺、テンション上がっちゃってて……強引だったよな」
 テンション、上がってくれてたんだ。僕と配信するってことで。そんな言われ方をしたら、「とにかく今日は無理」なんて言うのも申し訳なくなってしまい、ああ、腹をくくるしかないな、なんて思わされる。
 昔からいつもそうだ。僕たちは趣味が合うわけでもないのに、僕が陽の誘いに弱くて、なんだかんだ同じことをやったりしていたのだ。今回も同じこと。少し距離が離れたように感じていたから、そんな日常を取り戻せたことも嬉しいし、自分でも甘いなと思いながらも、「分かったよ」と腕を離す。
「でも、本当に配信なんて初めてで何も分からないから、やっぱり段取りとか、せめてそういうの決めてからにしよ?」
 陽は親指をグッと立てて、「もちのろん」と笑った。同じように親指を立てて、拳をぐりっと押し当てる。そんなちょっとゴツゴツしたハイタッチをして、今日どんなことを話すか決めながら陽の家へと向かった。

 初めての陽の一人暮らしの家は、ワンルームの割には広くて過ごしやすそうなマンションだった。ベッドとデスクが別々に置かれているのに床にはちゃぶ台を置いて座れそうなくらいの空間があって、デスク一体型のロフトベッドを置いているのに手狭な僕の部屋とは大違いでかなり羨ましい気持ちになった。そんなことをぼそっと伝えると、「でも駅遠いからさ〜」というぼやきが返ってきた。
「受験生の時、勉強しながら動画見てることが多くて。その時配信者のことも見るようになったんだよ。それで受験終わったら始めたんだけどさ……気づいたらマイクとか買い始めちゃって」
 指さされた先を見ると、デスクの上にはマイクが機械に繋がっていて、さらにその機械がパソコンに繋がっている。
「マイクって直接パソコンに繋げられないんだ」
「いや、繋げられるマイクもあるよ?あるけど、これ……オーディオインターフェースって機械なんだけど、これがあると手元でマイクの音量とか調節できて、例えばこれ押すと声がミュートになって、これでBGMの音量を──」
楽しそうに語る陽を見ていて、本当に配信が好きなんだなと思う。オーディオインターフェースと呼ばれた機械はツマミやボタンがかなり多くて、僕ならすぐに使いこなせそうにはなかった。きっと春休みの間も、たくさん配信して使い込んだんだろうな、なんて勝手に思いを馳せた。
「でも、もっと早く言ってくれればよかったのに。僕……急に陽が忙しくなったから、距離置かれてるのかちょっと心配だったんだ」
「え、マジ!?……ごめん!やっぱ最初はちょっと恥ずかしい気持ちもあったし……えっと……とにかく自分のことしか考えてなかった、本当にごめん!」
「あ、謝ってほしいわけじゃなくて」
 こんな不安を直接ぶつけて、否定してもらうことでしか安心できない自分の弱さに辟易しつつも、真っ直ぐ否定してくれる陽に甘えている。
「とにかく、距離置かれてるんじゃなくて良かった〜、って思っただけ」
「そんなことするわけないだろ」
 ぴしゃりと否定されて、少し頬が緩んだ。
「じゃあ、今日の流れのおさらいだけど、まず軽く自己紹介して、で、紹介テロップを俺が画面の下の方に流して……そのあとはリスナーからの質問に二人で答える〜、みたいな感じで」
 さっきも不安に思ったけど、こんな飛び入りの僕なんかに聞きたいことはあるのだろうか。聞いてもらえたとて、そこからうまく話を広げられるのか……。陽は「大丈夫だって!基本は俺が喋るから」と言ってくれたが、果たして。
「またぐるぐる考えてるな?」
 人差し指でおでこをツンと突かれ、咄嗟に「そうじゃないよ」と言う。そうでしかないのに。
 かくして、まだいつも配信する夕方には早いから人の入りもゆったりだと思うし安心してよ、などとまたも励まされ、どうにか配信を開始することとなった。
「開始ボタン押したけど、まだ自己紹介しないの?」
「最初は人が入ってくるのをちょっと待つんだよ。ほら、みんながみんな通知が飛んできた瞬間に入れるわけじゃないしさ」
 なるほど、と頷いている間にも、『誰〜?』などとコメントが来ている。そりゃそうだ、みんな陽を見に来たのに、隣に知らない男がいるんだから。
「……さて、そろそろかな!昼でも夜でもおっはヨウ!今日はゲリラで早めの時間に配信してるよ!」
 『ゲリラ配信ありがたい』『家事が捗る』のような陽と会話するコメントと、『そんなことより隣にいるの誰?』『もしかしてヨウ君には見えてないんじゃ』みたいな僕に関するコメントに分かれ──誰が幽霊じゃ。
「みんな焦るなって!紹介するよ、こいつは俺の幼馴染の……あ!名前決めてなかった!」
「陽がヨウなんだから、ユウキでいいよ」
 カタカナでユ、ウ、キ、と指で空に描く。
『えー、じゃあヨウって本名なんだ!』
『ユウキくんよろしくね〜』
「あ、よ、よろしくお願いしましゅ」
 焦って噛んでしまった途端、隣にいる陽が吹き出す。
「しましゅ、だって!」
 緊張してるね、可愛い〜、とか、案外すんなりと僕を受け入れてくれるコメントが多くて、みんなのコメントとは裏腹に緊張が解けていく。
「じゃあユウキ、自己紹介して!」
「え、自己紹介って、今ので終わりじゃないの」
「名前だけじゃダメだろ!って言っても、何言えばいいか分かんないよな」
「そうだよ、配信なんか初めてなんだから……」
 陽の発言に応えるように、『じゃあ好きな食べ物知りたい!』『趣味は?』とか、たくさん質問コメントが届く。
 あんなに不安がってたのが嘘みたいに、みんな僕に優しくしてくれる。やっぱり、陽の人柄があって、優しい人が集まりやすいのかな……?
「うお、コメントたくさん!じゃあ、まずは……趣味から!ユウキはな、ゲームがめっちゃ上手いんだぜ」
 お前が答えるのかよ。
『ヨウが答えるのかよ!w』
 リスナーさんとシンクロして、思わず笑みが溢れる。気づいたら、楽しくなってきている自分がいた。
「えっと、そうですね、ゲームが好きです。特にFPSをよくやります」
『ユウキ君のFPS配信も見てみたいな〜』
「え、ぼ、僕の……?」
「いいよいいよみんな!ユウキのこと配信の道に引きずり込んで〜!」
 そんな感じで、楽しく配信は続く。陽と僕が喋って、それにみんながリアクションをしたり、会話に詰まったら話題提供をしてくれたり。陽の言う通り、僕の心配するようなことには全くならなくて、やさしくてあたたかい時間が流れていく。
『てか、幼馴染ほんと尊いんだけど〜』
『こんなに楽しそうなヨウ君見たことある?』
 陽は僕から見たらいつもと変わらなくて、配信アーカイブと同じように見えたけど、リスナーさんから見ると違うのかな。
「ちょちょ!みんなといつも話すのもいつもめっちゃ楽しいよ?」
 陽が笑って、コメントも笑いで溢れて。ああ、楽しいな。こんな時間がずっと続けばいいのにって、本気でそう思った。
 けれど、そういうわけにもいかず、陽の定時配信の時間が近づいて、「そろそろお開きにするか」と陽が言った。『今日は定時あるの?』のコメントを拾って、「あるよ〜、だからそろそろ解散してご飯食べなきゃ」と返し、僕の方を見た。
「ユウキ、最後に何か言うことある?」
 突然の無茶振りにまごまごしていると、また『可愛い〜』とコメントが来る。こいつ、絶対わざとだな。僕がすぐ対応できないのを楽しんでるんだ。
「えーと、すごく楽しかったです!ありがとうございました!」
 簡潔ではあるものの、とにかく早く答えてやろうと絞り出し、陽の方を見てフフンと鼻を鳴らした。「なんで得意げなんだよ」と、陽はまた笑い出した。
「じゃあ、一旦ここまで!あとで来てくれる人はまたあとでね!バイバーイ!」
 陽に合わせて「バイバーイ」と言いながら手を振る。
『またね!ユウキ君もまたね!』
 そんなコメントが多くて、配信悪くないな、デビューしちゃおうかな……なんて調子に乗って考えている隙に、陽は配信終了ボタンを押した。
「優輝!」
「ん、お疲れ様」
「お疲れ様、じゃなくて!最高だった!優輝と配信するの!」
 リスナーさんも盛り上がってたし、もうめっちゃ笑ったし、ほっぺ痛いし、と早口で捲し立ててくる。
「そんなに、かな」
「そんなに、だし」
 そう言うと陽が少し真顔になって、俺の手をぎゅっと握ってきた。
「なんでもっと早く言わなかったんだろ、俺!何やっても優輝と一緒ならすげー楽しいって分かってたのに!」
「そ、それはもういいって」
「よくないの!俺が!」
 手を握る力が強くなってくる。ちょっとだけ痛くて、ぐぐ、と手を広げる動きをすると、「わりぃ」と手が離れた。
「はーぁ、やっぱり優輝も配信しようぜ!俺さ、優輝と一緒がいちばん楽しいんだ!」
「そんなにおだてても何も出ないよ」
「おだててない!本心!」
 とはいえ、僕も、言われなくても考えてた。配信続けること。今日の配信がすごく楽しかったのもあるけど、何よりも……
「僕も、陽と一緒がいちばん楽しいよ」
「そ、それは……オッケーってことですか!?」
 どうしよっかな、と笑った。ほとんど心は決まっているくせに、陽がやろうよやろうよって必死に誘ってくるのが嬉しかったのと、さっき配信終わりにちょっと意地悪されたからその仕返し。

 その日のうちに、僕はユウキという名前のSNSアカウントを開設した。それを陽にメッセージで送ったら、配信中だというのに「え、マジで!?」と声を上げて、そのまま
「みんな!今日さっき、一緒に配信したユウキ、デビューするって!」
 さっきの配信を見ていなかったリスナーさんがポカンとしていて、全くこいつは……と思いつつ、動画配信アプリの方にもアカウントを作り始める。コラボだけならSNSだけでいいのに、一人でもやる気満々で、ノリノリじゃん、自分。そんな一人ツッコミをしつつも、手は止まらない。
 だって、また陽と二人でできる遊びを見つけたから。絶対楽しいに決まってるから。ああ、こんな日々がずっと続けばいいな……思わずにやける口を、ぐにぐに指で押し戻した。