罪な僕は君と幸せになっていいだろうか

休み明け、朝会があるというのもあって朝から少し忙しい。
生徒会長だから、それなりに毎日忙しいけどね。

「おはようございます会長」

確認のために体育館のステージ裏に行くと、予想通り副会長の卯月琉偉(うづきるい)くんがいた。
琉偉とは幼馴染で、小さい頃から仲がいいんだ。
ちなみに、彼は有名会社の社長の息子だよ。

「敬語はいいって言ってるのに…」

「そうだった。ま、癖みたいなもんだし気にしない、気にしない」

僕は呆れながら笑う。
仲はいいけれど、やっぱり敬語で話す場面は多くて。
それが少し悲しかったり。
って、僕は何を思ってるんだ。

「準備ははしておいたから、大丈夫だよ。蒼唯は会長の言葉頑張ってね」

「いつもそればっかり」

過保護…と言うのだろうか。
朝会がある日には、いつもこう言う。

「あー、そうだっけ」

こうやって忘れたフリをするのも、いつも通りだ。

***

「これで朝会を終わりにします。生徒達は次の授業に間に合うように、教室に戻ってください」

朝会が終わり、僕達は後片付けを開始する。
授業は朝会終了の20分後に始まるから、生徒会メンバーも少しゆっくりできるんだ。
先生方もよく考えてくれて助かる。
僕は周りを見回して片付け忘れがないか確認し、教室に戻ろうと足を進める。

けれど、彼の声によってその足は止まった。

「会長!」

勢いよく振り返ったところに、月海くんが立っていたのだ。

「月海くん…?」

「やっほー。って、あれ?俺名前言ったっけ?」

「…店員さんが呼んでいたから」

僕はとっさに嘘をついてしまった。
なんだか、彼に興味があって名前を知ってるなんて思われたら嫌だから。
まあでも事実だし、嘘だとは気がつかれないだろう。

「そっか。あ、今から教室行くとこ?途中まで、一緒に行こ〜」

そう軽く言われて、僕は思わず頷いてしまう。
ハッとして取り消そうと思ったけど、月海くんが嬉しそうに笑ったのを見て言葉を飲み込んだ。
そして、僕は彼の隣を歩きだす。

「そういえばさー、会長この前の会食パーティーで主催者と話してたよな。知り合い?」

「え…?気がついていたの?」

まさか僕に気がついていたなんて思ってなかったから、びっくり。

「そりゃ気づくでしょー」

「そっか…。えっと、正確には僕の父親と関わりがあるんだ。だから…、まあ、知り合いっていうのかな?」

月海くんは一瞬固まってから、真剣な顔で聞いてきた。

「会長の家って結構有名だよな?あの主催者と別に親しい感じじゃなくね?でも、会長は親しげだったよな。なんで?」

彼がどういう意図で聞いているのかはわからないけど、僕にとってその質問は苦痛でしかない。
やっぱり彼は僕の噂を知らないんだ。

だったら、彼は知らないままでいてほしい。

そう思ってしまった。

「さあ?どうしてだろうね。お友達にでも聞いてみたら?きっと知ってるよ」

僕はにっこりと笑って、彼を突き放した。
君は僕に関わっていい人間じゃないから。

「君は特進クラスだからこっちじゃないでしょ?またね」

そう言って、背を向けて歩き出した。
彼と関わったらいけない気がする。

そう、僕の心が言っている気がしたから。

「…なんだよそれ」

だから、ごめんね。

僕は心の中で謝った。