***
僕は家に帰って、すぐにネクタイを緩めた。
こういうしっかりした格好をするのはよくあることだけど、やっぱり苦しさはいつも変わらない。
失敗してはいけない緊張感。
あの人からの威圧的な視線。
やはり嫌いだ。
一息つくと、すぐに部屋のドアがノックされた。
コンコン。
「蒼唯様。旦那様がお呼びです」
「…わかった。少し待っててと伝えておいて」
「承知しました」
あの人はいつもこういう会食後には呼び出してくるんだ。
行くのはいつでも億劫だ。
あの人だけならまだいい方だけど、どうせ弟もいる。
面倒なことを言われないようさっさとしよう。
僕はもう一度ネクタイを締めて、部屋を出た。
自分の足であの人の部屋に向かっていく。
そして、部屋についた。
深呼吸をした後、僕はそのドアをノックした。
コンコン。
「蒼唯です。入ってもいいでしょうか大和さん」
鷹栖大和は、僕の父親の名前だ。
“お父さん”などと呼ぶと手をあげられるもので、僕は大和さんと呼ぶようにしている。
そして、低く威厳のある声が響いた。
「ああ。入れ」
僕はゆっくりとドアを開けた。
奥のデスクのところに座る大和さん、そしてその横に立つ弟の大輝。
僕は緊張を押し殺して、ゆっくりと前へ進んだ。
そして、ふたりから約1メートルほど離れたところで止まった。
「なにか用でしょうか」
「報告をしろ」
威圧的な態度が、僕は嫌いだ。
けれど、そんなことは感じさえせないように報告をした。
「全ていつも通りです。学力面も問題なし。仕事面でも特に困ったことはありません」
「そうか、ご苦労。それと蒼唯、お前最近気が緩んでいるんじゃないか?」
そう指摘されて、わずかに動揺してしまった。
気が緩んでいるという自覚があったからだ。
「お前の母親も離れで生かしているが、それはまだ利用価値があるからだ。お前も自分が生かされている理由がわかるはずだ。用無しになった瞬間、それは死と同義だ。それを十分に理解しろ」
わかってるよ、そんなこと。
僕が生きているのはこの人が僕を産むことを許可したから。
そうでなきゃ、僕は生きていないはずだ。
役に立たなければ殺されてしまう。
それを、再確認しなければ。
「はい。申し訳ありませんでした」
「わかればいい。下がれ」
「はい」
僕は礼をした後、ゆっくりとドアを閉めた。
それから、回れ右をして廊下を進んでいく。
まだ気は抜けない。
なぜなら、後ろから大輝がついてきているから。
あの人の部屋から十分に離れた時、僕は足を止めて振り返った。
「僕になんの用?」
「んー?ちょっとね」
そう言って近づいてきて、僕の目の前で止まった。
それから、いつもの笑顔で言った。
「蒼唯は最近ちょっと楽しそうにしてない?おかしいよね。わかってるよね、自分が幸せになっちゃいけない罪の存在だって」
あの人と同じ威圧感を感じて、僕は一歩下がった。
「わかってんなら不幸になれよ。これは俺からの忠告だから」
そう言って僕の返事は聞かず、大輝は去っていった。
僕は右手で額を抑えた。
「はぁ…。わかってるってば、そんなこと」
月海くん。
彼と出会って僕は変わった。
どうしてかわからないけれど、それは事実だ。
彼を遠ざけなければとそう再確認した。
僕はゆっくりと自分の部屋に戻っていった。
僕は家に帰って、すぐにネクタイを緩めた。
こういうしっかりした格好をするのはよくあることだけど、やっぱり苦しさはいつも変わらない。
失敗してはいけない緊張感。
あの人からの威圧的な視線。
やはり嫌いだ。
一息つくと、すぐに部屋のドアがノックされた。
コンコン。
「蒼唯様。旦那様がお呼びです」
「…わかった。少し待っててと伝えておいて」
「承知しました」
あの人はいつもこういう会食後には呼び出してくるんだ。
行くのはいつでも億劫だ。
あの人だけならまだいい方だけど、どうせ弟もいる。
面倒なことを言われないようさっさとしよう。
僕はもう一度ネクタイを締めて、部屋を出た。
自分の足であの人の部屋に向かっていく。
そして、部屋についた。
深呼吸をした後、僕はそのドアをノックした。
コンコン。
「蒼唯です。入ってもいいでしょうか大和さん」
鷹栖大和は、僕の父親の名前だ。
“お父さん”などと呼ぶと手をあげられるもので、僕は大和さんと呼ぶようにしている。
そして、低く威厳のある声が響いた。
「ああ。入れ」
僕はゆっくりとドアを開けた。
奥のデスクのところに座る大和さん、そしてその横に立つ弟の大輝。
僕は緊張を押し殺して、ゆっくりと前へ進んだ。
そして、ふたりから約1メートルほど離れたところで止まった。
「なにか用でしょうか」
「報告をしろ」
威圧的な態度が、僕は嫌いだ。
けれど、そんなことは感じさえせないように報告をした。
「全ていつも通りです。学力面も問題なし。仕事面でも特に困ったことはありません」
「そうか、ご苦労。それと蒼唯、お前最近気が緩んでいるんじゃないか?」
そう指摘されて、わずかに動揺してしまった。
気が緩んでいるという自覚があったからだ。
「お前の母親も離れで生かしているが、それはまだ利用価値があるからだ。お前も自分が生かされている理由がわかるはずだ。用無しになった瞬間、それは死と同義だ。それを十分に理解しろ」
わかってるよ、そんなこと。
僕が生きているのはこの人が僕を産むことを許可したから。
そうでなきゃ、僕は生きていないはずだ。
役に立たなければ殺されてしまう。
それを、再確認しなければ。
「はい。申し訳ありませんでした」
「わかればいい。下がれ」
「はい」
僕は礼をした後、ゆっくりとドアを閉めた。
それから、回れ右をして廊下を進んでいく。
まだ気は抜けない。
なぜなら、後ろから大輝がついてきているから。
あの人の部屋から十分に離れた時、僕は足を止めて振り返った。
「僕になんの用?」
「んー?ちょっとね」
そう言って近づいてきて、僕の目の前で止まった。
それから、いつもの笑顔で言った。
「蒼唯は最近ちょっと楽しそうにしてない?おかしいよね。わかってるよね、自分が幸せになっちゃいけない罪の存在だって」
あの人と同じ威圧感を感じて、僕は一歩下がった。
「わかってんなら不幸になれよ。これは俺からの忠告だから」
そう言って僕の返事は聞かず、大輝は去っていった。
僕は右手で額を抑えた。
「はぁ…。わかってるってば、そんなこと」
月海くん。
彼と出会って僕は変わった。
どうしてかわからないけれど、それは事実だ。
彼を遠ざけなければとそう再確認した。
僕はゆっくりと自分の部屋に戻っていった。
