メゾン・ド・モナコ




「そっか…この町に、ここに、ヤヱばあちゃんも居たんだ…」

感慨深く、なずなは呟いた。倉庫に眠っているテーブルを前に不思議な気持ちになった、あの感覚は間違いではなかったのだ。ヤヱと会ったような気がしたが、本当に繋がっていた、なずなは束の間、ヤヱに会えていたのだ。
それを思えば胸が熱くなり、なずなは手紙を抱きしめると、ぐっと目元を擦って、アパートの庭へと戻った。

そして、春風に手紙を差し出す。

「これは、春風さんへの手紙だったんですね」

だが、春風は手紙を前に躊躇っているようだった。

「…春風さん?」
「君のおばあさんも、彼女によく似た人だったね、目元がそっくりだった。月日が流れるとは、こういう事かと思ったよ。僕には時が流れるという概念があまりないからね。だけど…彼女の血を引いた君と出会えた事は奇跡でしかない、君と会えて良かった、ずっとここにいる意味を問うてきたけど…この為だったのかもしれない」

その表情は寂しそうで、先程は力強い温かさに満ちていた瞳も泣いてしまいそうに揺らいでいて、なずなは心が苦しくなった。
春風が、このまま消えてしまうのではと思ったからだ。
なずなは春風の手を取ると、ヤヱの手紙を握らせた。そして、その上から春風の手を握る。

「きっと、ここに居る皆の為ですよ」
「え…?」
「春風さんが守ってくれたから、ここはアパートになって、皆と出会えた。全ては、皆を繋ぎ合わせてくれた、春風さんのおかげです」

なずなは笑った。その綺麗な笑顔に、春風は見惚れそうになる。



「私、そろそろ準備していきますね。ヤヱばあちゃんとゆっくりしてて下さい!」

そう言って駆けていく姿を見送り、春風は手紙に視線を落とした。一体どれくらいぶりの再会だろうか、封を破る手が緊張で震える。
古く、今にも破れそうな封から、丁寧に手紙を取り出す。
そこには、確かに彼女の筆跡で、文章が綴られていた。

そのかすれた文字に、涙が滲んだ。