歌い終えると、ナツメはどうだと言わんばかりに胸を張ったが、ぽかんとしているなずなに照れくさくなったのか、さっさと猫の姿に戻ってしまった。なずなはたまらずギターを置き、ナツメを抱き上げた。
「か、感動しました!完璧です!どうして!?」
「ふ、ふふん!あんなの何度も聞いていれば覚えられるし!」
「何度も…聞いてくれたの?」
「え!?いや、た、たまたまだ!下手くそだから、つい耳に入っただけだ!別にお前の曲だから聞いてたわけじゃ」
「…ありがとう」
「う、」
ぎゅ、と抱きしめれば、ナツメは困惑しながらも、されるがままだった。
「ありがとうナツメ君」
歌ってくれた事、聞いてくれた事、良い曲だと言ってくれた事。世の中から突き放されたと塞ぎ込んでいた気持ちが、そっと救われた。否定されたいつかの自分が報われたようで、過去に引き戻されそうな心が、そっと背中を押されたようだ。
「お、大袈裟な奴だな!」
ナツメはついに耐えきれなくなり、顔を赤らめながら、前足でなずなの体を突っ張ると、その腕から抜け出した。
「お前は、お前が思ってるより、スゲー奴だよ。たまになら、俺が歌ってやるし」
「…ありがとう」
「一緒にやってやっても良いぞ、イベントで、歌ってやっても良い」
「え、ナツメ君が歌ってくれるの?」
「勿論、シークレット的な感じで!どうすんだ、やるのか!?やんないのか!?」
「や、やる!」
「よし!これで誰にも撫でくり回される必要はなくなるな!」
流れるように決を取り、嬉そうに部屋を出て行くナツメは、二本の揺れる尻尾もご機嫌だ。
そうか、猫カフェをやらされるのが嫌で、こんな提案してきたのか。そう納得したが、真相がどうあれ、それでもなずなは嬉しかった。
もう一度、この曲が日の目を見れる。
これできっと、夢を過去として、新たな一歩が踏み出せるかもしれない。
ただ、一つだけ気がかりがある。
いくらこの曲が不必要とされても、これは仲間達と積み重ねてきた曲だ。
なずな一人の曲ではない。



