メゾン・ド・モナコ



だが、そんな二人を、碧の国のあやかし達はよく思わなかった。元々が、よその国のあやかしとの交流に積極的ではない国だ、国を出る者もほとんどいない。それにテラは、碧の国の中でも由緒ある家のお嬢様だった。
テラは、碧の国の英雄の血を引いていた。人魚と半魚人の争いを治め、現在の碧の国を創ったともされるあやかしだ。その為、テラの家では、必ず自分が人魚なら伴侶に半魚人のあやかしを選ぶというしきたりがあり、テラはよくお見合いをさせられていた。

なので、テラがフウカと心を通わせているなんて、親族にとっては言語道断だった。テラの結婚とは、最早国民にとっての希望や願いでもある、碧の国の平和への願いが、人魚であるテラが半魚人の伴侶を選ぶ事に繋がっていた。

その為、テラは家から何度も注意を受けたが、それでもフウカと会う事を止めなかった。
家のしきたりにはうんざりしていたし、何よりテラの心は、フウカへの思いでいっぱいだった。

それに痺れを切らしたテラの両親は、以前からテラに思いを寄せていたシュガとの縁談を受け入れた。
シュガの家は、富も名誉もある、テラが共に生きる上で苦労はなく、また国民からも納得を得られる家だった。今まではテラが反対していたから、なくなく縁談を断り続けていたという。


しかし、シュガと婚約関係になっても、テラはフウカに別れを切り出せなかったようだった。好きな相手がいるのに、勝手に婚約を決められたのだ。この頃、テラはよくフウカに国外に出る方法を相談していた。今思い返せば、テラはフウカと生きる道を模索していたのだろうと、フウカは言う。


だが、テラの思いが通る筈もなく、親族達は、フウカを悪者に仕立てる事にしたようだった。
テラはフウカに騙されているのだと、フウカはテラの高貴な血を狙う悪いあやかしだと、その話を碧の国民に広めていった。
いつまでもテラを諦めないフウカを、国から追い出そうとしたのだ。
その裏には、シュガの意向もあっただろう。

フウカは、碧の国の事も、テラの家の事も何も知らなかった。テラと会えない時間は、近くの水の国で過ごし、テラと共に人の世へ行く夢も語り合っていた。テラとの未来に夢ばかり見て、テラの抱えるものに気づけなかった。


だから、いつもの小島でテラと過ごす中、周囲を人魚や半魚人に包囲された時は、フウカは何が起きているのか分からなかった。テラもこの事は知らされておらず、ただ、皆が二人の仲を引き裂きに来た事だけはすぐに分かったようだった。

「逃げて!」
「どうして、」
「私が盾になる、早く!」
「だから、どうして、」

そんな問答を繰り返している内、フウカの足元に水の矢が破裂した。驚いて矢の飛んで来た方を見やれば、そこにはシュガがいた。

「テラは俺の婚約者だ!よそ者が触れていい相手ではない!」

その一言に、フウカは一瞬、頭が真っ白になった。