メゾン・ド・モナコ




「これは…?」

キラキラ煌めく泡の壁に、マリンはふふと微笑んだ。

「私の結界よ。今、外からは、私達の姿は人間に見えていないはずよ」

泡の内側にはメゾン・ド・モナコの住人達、外にはミオとナオ、そして側の塀には、ミオの部下と思われるカラスが三羽止まっていた。

「お前が火の玉の真犯人だな!」
「違う!離せ!」
「近所の猫達から証言も取ってる。この間捕まえた火の玉男の側に、お前がいたってのもな!」

猫から人の姿に戻り、ナツメも男の顔を覗き込んだ。改めてその顔を確認すると、ふんと鼻を鳴らした。

「こいつならやりかねないよ、な、フウカ」

そうフウカに問えば、フウカは何か言葉にしようとしたが、すぐにその口を引き結んだ。
その様子に、ナツメは「どうしたんだよ」と首を傾げた。

「フウカさん?」

急に口を噤んだフウカに、なずなも不思議になり声をかけると、ギンジに押さえつけられている鱗の腕の男が、ハッと笑った。

「アンタが俺の事とやかく言えんのかよ!アンタのせいで彼女は一生消えない傷を負った!今でも悲しんでる!アンタは罰を受けるべきだ!一人で逃げやがって…!」

放せ、と男が喚くが、ギンジの力は強く、男は逃げられそうもない。

「それを君が言うのか…だとしても、君がやった事が正しいとは思わないけど」

春風が、やれやれと溜め息混じりに呟いた。

「取り敢えず場所を変えよう、マリン君もその方が安全だ」

春風がミオ達を振り返ると、ミオとナオも了解したようだ。

「俺達も一緒に行かせてもらうよ」

ミオの言葉を合図に、マリンの結界が解かれていく。犯人はまだ抵抗を見せていたが、ギンジに腕を掴まれれば抵抗も出来ず、諦めて歩き出すしかないようだ。
こうしてみると、犯人にとっては呆気ない幕切れだ。

しかし、犯人が捕まったとはいえ、まだ何も解決していないし、心配事もある。

「フウカさん、」

顔を伏せたままのフウカに、なずなは再び声をかけた。
なずなの心配そうな表情に、フウカは苦笑う。フウカの手が微かに震えている事に気付き、なずなは咄嗟にその手を握った。

「大丈夫です、フウカさん。怖い事なんてもうありませんよ」
「フウカ、」

それを見たハクが、フウカの空いている手をきゅっと握る。
驚いていたフウカも、二人の気持ちはグローブ越しでも伝わったのだろう。そっと肩から力を抜いたようだった。

「…そうですね、僕も逃げてばかりじゃいけませんね」

ありがとう、と言うと、フウカはぎゅっと、二人の手を握った。