高嶺さんのWEB恋愛小説は実話です。

■彼女と放課後デート

「ここが俺のおすすめのお店」
「わあ! とってもおいしそうです!」

 翌日、俺は高嶺さんに誘われて放課後デートをすることになった。
 お嬢様である彼女は『買食い』というものをしたことがなく、教えてほしいと頼んできた。

「お会計は300円ね」
「これでお願いします」
「はい。ありがとう」

 学校の近くの和菓子屋には、餅や団子のほかに肉まんも売っている。価格も良心的なため、うちの生徒のなかにも通っている人間を俺は知っている。
 この物価高の世の中、150円で手作りのいちご大福が買えるのもポイントが高い。

 ちなみに、この店の近くには公園がある。
 高校の授業の終わりということもあってか、子供のいない公園のブランコに俺が座ると、高嶺さんは少し迷った後、俺の隣のブランコに乗った。

「はい。これ、高嶺さんの分」
「ありがとうございます」

 高嶺さんは一口食べてから――。

「おいしい!」

 彼女は目を輝かせた。

「すごいです。瀬崎くん! この苺、甘酸っぱくてでもしっかり美味しくて! 中のこし餡も丁寧作られていますし、外の求肥も柔らかくてとっても美味しいです!」

 高嶺さんはグルメリポーターが憑依したかのように味を述べてくれた。が、そのあとすぐにハッとした顔をして、ううむと眉間に少ししわを作っていちご大福を見た。

「でもこんなにお安くていいのでしょうか……? 経営は大丈夫なのでしょうか……?」

 俺たち庶民は安くて美味しいとラッキーと思うわけだが、高嶺さんは目の付け所が経営者だった。

「うーん。駄目そうなら値段を上げるんじゃないかな」
「でも、ここは少し人が少ない場所にあります。手間もかかっていそうですし、この価格で利益を出すのは難しいのではないでしょうか」

 うーんと唸る高嶺さんに俺には苦笑いした。

「……高嶺さんって、大人みたいなこと言うんだね」
「えっ!?」

 高嶺さんは一度目を大きく見開いてから、それから困ったように目を伏せた。

「その、私はお父様から幼い頃から色々教わっていて……」

 高嶺さんの家は、確か飲食店や菓子の製造を行う企業もあると噂で聞いたことがある。
 俺でも知っているような会社が、彼女と関わりがあると知った時、当時は驚いたものだ。

「そういえば、高嶺さんはなんでうちの学校を選んだの?」

 ――高嶺さんなら、俺たち庶民が通うような学校じゃなくて、もっといい学校にいけたはずなのに。

 俺の素朴な疑問に、高嶺さんは静かに目を伏せる。

「この国に生きる方々が、何を見て何を考え過ごしているのか――それを学ぶよう、この学校に入学する際父に言われたのです。電車でのことも、その関係で」
「…………なるほど」
 
 つまり、庶民を学ぶために彼女はこの学校に来たらしい。
 俺にとってはただの日常なのに、何故かスケールの大きい話をされた気がする。

「でも、そうしたら、迷子になってしまって」
「あー。乗り換えって、初めてだと分からないことあるよね」

 『送り迎え』が彼女の日常だったなら、迷路のような駅や朝の満員電車は苦行だったに違いない。

「だから瀬崎くんに出会えて、とても心強くて。ただあの日からずっと、瀬崎くんに頼ってばかりになってしまっているのですが……」

 高嶺さんは、何故か決意したような表情をして俺の目を見た。

「でも私、これからももっとたくさんのことを、瀬崎くんには教えていただきたいんです」
「う、うん。それは大丈夫だけど……?」

 俺が思わずそう返したその日の夜、小説の更新のコメントはこんな文章で溢れていた。

【Youもうそのまま告っちゃいなよ!】