■高嶺さんの小説の中の俺がかっこよすぎるんだが
「やっぱりこれって、高嶺さんのアカウントなのか?」
夜に更新された最新話は、教科書を見せてもらった女主人公の言い間違いを、ヒーローが爽やかに笑って流す、というものだった。
「いやでも、俺はこんなにかっこよくないしなあ……」
【「珍しいね。高嶺さんが教科書忘れるなんて」
「はい。教科書を見せていただきたくて」
「え?」
「?」
その時、私とハルくんの間に、沈黙が流れました。
ハルくんが何故か驚いた表情をしていることに気がついて、私はようやく、その原因に気が付きました。
――私は今、何を言ってしまったのでしょう!
私は、顔に熱が集まるのを感じました。
これでは、ハルくんに教科書を見せていただきたくて、私がわざと教科書を忘れたのだと自白したようなものです。本当はロッカーの中には教科書があるなんて、ハルくんには決して知られてはなりません。
「違うんです。わざと忘れたわけではなくて。その……本当に、今手元にないので、見せていただきたくて……!」
嘘は言っていません。だって、今私の手元に無いことは事実なのですから。
けれど、いくらお話するためとはいえ、こんなふがいない私を彼に見せることが良いことだとは、とても思えませんでした。誠実に生きろと、そのために普通のご家庭の価値観を学ぶためにこの学校に入学したというのに、今の私は、高嶺家の人間に相応しくありません。
――でも。
慌てて私が言うと、ハルくんは柔らかく、私に微笑んで下さいました。
その時は私は、胸の高鳴りを感じざるを得ませんでした。
少し明るめの茶色の瞳、柔らかそうな焦げ茶の髪。少しだけ長い前髪の向こうから、温かな色で見つめられると、まるで私の心の全てを見透かして、見守ってくれているようにすら思えます。
ハルくんは、本当に優しい方です。あまり人の見ていないところで気遣いができる方――(以後称賛の嵐)】
……うん。誰だろう、これ。
俺が若干くせっ毛で目が茶色なのは確かだが、ここまで高嶺さんに褒めてもらえるほどのルックスは俺にはない。
「やっぱり別人なのか?」
そう判断するのが外見描写というのが、若干傷付くポイントではあるけれど。
「それにしてもこの小説、あきらかにコメント数が多いな……?」
ランキングに乗るのはもともと注目されている小説だ。コメントが多いのは納得できるが、他と比べてもかなり多いようだった。
画面をスクロールして――俺は、その真相に辿り着いた。
「わかった。これ、『参加型掲示板小説』なんだ!」
美少女を助けたことから始まるラブストーリー。
ここまでなら、ただの恋愛小説で終わっていたに違いない。
高嶺さんの小説がランキングをかけ上がったのには、彼女の投稿サイトの使い方が関係していたのだ。
読者コメントへの『お嬢様(作中ヒロイン)なりきり返信(と読者に誤解されている※本当は実話)』と、『返信内容が小説の本編に反映される』という、リアルタイムに更新される『掲示板』のような使い方。
読者のコメントに従って、その日学校で起こったこと(というテイ※本当は実話)を更新するというのは目新しく、読者の心を強く掴んでいるらしかった。
更新する日は、必ず平日の20時半頃。
学生が学校を終えて、今日あったことを日記感覚で書いて更新したと仮定すると、あり得る時間だ。
いやまあ、お嬢様も女子高生も、設定ではなく事実なのだから、意図せずしてこの時間になっているんだろうけど。
「なんという偶然の一致」
奇跡のWEB小説投稿ゴールデンタイム!
「あ」
俺がそんな事を考えていると、新しいコメントが書き込まれて、高嶺さんがそれを受け入れたようだった。
【案内してほしいと言って、放課後デートに誘おう!】
どうやら次の彼女のミッションは、俺をデート(?)に誘うことらしい。
「やっぱりこれって、高嶺さんのアカウントなのか?」
夜に更新された最新話は、教科書を見せてもらった女主人公の言い間違いを、ヒーローが爽やかに笑って流す、というものだった。
「いやでも、俺はこんなにかっこよくないしなあ……」
【「珍しいね。高嶺さんが教科書忘れるなんて」
「はい。教科書を見せていただきたくて」
「え?」
「?」
その時、私とハルくんの間に、沈黙が流れました。
ハルくんが何故か驚いた表情をしていることに気がついて、私はようやく、その原因に気が付きました。
――私は今、何を言ってしまったのでしょう!
私は、顔に熱が集まるのを感じました。
これでは、ハルくんに教科書を見せていただきたくて、私がわざと教科書を忘れたのだと自白したようなものです。本当はロッカーの中には教科書があるなんて、ハルくんには決して知られてはなりません。
「違うんです。わざと忘れたわけではなくて。その……本当に、今手元にないので、見せていただきたくて……!」
嘘は言っていません。だって、今私の手元に無いことは事実なのですから。
けれど、いくらお話するためとはいえ、こんなふがいない私を彼に見せることが良いことだとは、とても思えませんでした。誠実に生きろと、そのために普通のご家庭の価値観を学ぶためにこの学校に入学したというのに、今の私は、高嶺家の人間に相応しくありません。
――でも。
慌てて私が言うと、ハルくんは柔らかく、私に微笑んで下さいました。
その時は私は、胸の高鳴りを感じざるを得ませんでした。
少し明るめの茶色の瞳、柔らかそうな焦げ茶の髪。少しだけ長い前髪の向こうから、温かな色で見つめられると、まるで私の心の全てを見透かして、見守ってくれているようにすら思えます。
ハルくんは、本当に優しい方です。あまり人の見ていないところで気遣いができる方――(以後称賛の嵐)】
……うん。誰だろう、これ。
俺が若干くせっ毛で目が茶色なのは確かだが、ここまで高嶺さんに褒めてもらえるほどのルックスは俺にはない。
「やっぱり別人なのか?」
そう判断するのが外見描写というのが、若干傷付くポイントではあるけれど。
「それにしてもこの小説、あきらかにコメント数が多いな……?」
ランキングに乗るのはもともと注目されている小説だ。コメントが多いのは納得できるが、他と比べてもかなり多いようだった。
画面をスクロールして――俺は、その真相に辿り着いた。
「わかった。これ、『参加型掲示板小説』なんだ!」
美少女を助けたことから始まるラブストーリー。
ここまでなら、ただの恋愛小説で終わっていたに違いない。
高嶺さんの小説がランキングをかけ上がったのには、彼女の投稿サイトの使い方が関係していたのだ。
読者コメントへの『お嬢様(作中ヒロイン)なりきり返信(と読者に誤解されている※本当は実話)』と、『返信内容が小説の本編に反映される』という、リアルタイムに更新される『掲示板』のような使い方。
読者のコメントに従って、その日学校で起こったこと(というテイ※本当は実話)を更新するというのは目新しく、読者の心を強く掴んでいるらしかった。
更新する日は、必ず平日の20時半頃。
学生が学校を終えて、今日あったことを日記感覚で書いて更新したと仮定すると、あり得る時間だ。
いやまあ、お嬢様も女子高生も、設定ではなく事実なのだから、意図せずしてこの時間になっているんだろうけど。
「なんという偶然の一致」
奇跡のWEB小説投稿ゴールデンタイム!
「あ」
俺がそんな事を考えていると、新しいコメントが書き込まれて、高嶺さんがそれを受け入れたようだった。
【案内してほしいと言って、放課後デートに誘おう!】
どうやら次の彼女のミッションは、俺をデート(?)に誘うことらしい。

