ZERO勇者~ゼロからスタートする異世界冒険譚~

こんにちは…アルスーン・レッドフィールドです。
俺は今、この異世界で生まれて来て初めての妹ちゃんが出来ました。
しかし…ちょっとした修羅場というか、何というか。

「……」
「エヘヘ…」
「ねぇ?」
「ん?」
「その娘なんなの?」
「それは…その…」
「私、レイナ」
「私はエレイナよ」
「アルスお兄ちゃんの…お姉ちゃん?」
「私はアルスの婚約者、つまりフィアンセよ!」
「ふぃあんせってなぁに?」
「それはね…結婚する人の事だよ?」
「アルスお兄ちゃん結婚するの?」
「まあ…将来的にはね…」
「しょうらいてき?ってなぁに?」
「大人に成ったらって事だよ?」
「そうなの?…じゃあレイナもお兄ちゃんのお嫁さんに成るね?」
「そ、そうか…」
「じゃあ楽しみに…」
「ちょっと断りなさいよ!」
「アルスお兄ちゃんはレイナじゃ嫌?」
「嫌というか...むしろ嬉しいというか...」
「アルスはレイナみたいな娘が好みなの?」
「え?ええーと…」

何だか異世界人生最大のピンチの様な気がする。
えーとこういう時の対処方法は…
レイナちゃんがお嫁さんか...これは頑張っている俺への神様からのご褒美かな?
エレイナもエレイナで…可愛いしな…うーん。
俺は2人の女の子に迫られている…
こういう時はどうしたらいいか...ラルク伯父さんやソニア婆ちゃんやお義父さんのユリウスさんは教えてくれなかったよな…マリア母さんも…

「アルス様…見えて来ましたよ」
「え?…ほら、2人とも…もう着くって!」
「わあ…おっきなまちだね」
「…(ふう…助かった)…」
「分かったわ…後でという事ね?」
「うん…」

とりあえずさっきの話は一旦保留という事で…
やっと着いたか、中間都市アルディア。
中間都市アルディアは王都キングダムウォールに行く途中にある街で。
規模はそこまで広くは無いが…貿易が盛んで…王都キングダムウォールに農作物や資源等を運ぶ際の中継都市にもなっている。
俺の住むライゼル村の農作物もここに卸したり、王都キングダムウォールへ行く事もある。
もちろん王都キングダムウォールへ行く旅人や商人や冒険者達の休憩地点としても利用されている。

そういえば…レイナみたいな獣人族の女の子が何故わざわざ馬車に乗ってこんなところに来るんだろう?
やっぱりそれなりに身分の高い位の獣人族なのかな?
しかも山賊達に襲われているのは不自然だ。

「…エレイナ(小声)…」
「アルス…どうし…」
「…しー!(小声)…」
「?」
「なんでもないよレイナちゃん!」
「…どうしたのよ?(小声)…」
「…レイナちゃんの事で真面目に相談があるから...宿泊先に着いたら(小声)…」
「…分かったわよ(小声)…」

中間都市アルディアの入り口前に到着した。
ここからは…身分証明書を衛兵に見せて通過しなければいけないけど…
レイナちゃんをどうやって連れて行くかだ。
まあ…普通ならこの中間都市アルディアの衛兵や街の自警団に保護して貰うのが正しいとは思うけど…うーん。

「身分証明書の提示をお願いします」
「こちらです」
「確かに…連絡はこちらでも受けております…」
「ですが…こちらのお方は?」
「ここからは…我々が説明致します」

レイナちゃんの近衛兵の1人が…レイナちゃんの乗って来た馬車から降りて、事情を説明する。

「彼女は…獣人族の長のご息女のレイナ・レスタール様です」
「…(獣人族の長の娘…道理で馬車に乗っている訳だ)…」
「実はレイナ様のお父上のサイガ様は…今こちらの中間都市アルディアに来て居られます」
「身分証明書はありますか?」
「…ですからこちらにお父上が…」
「…(よく居るよなこういうヤツ…勤勉というか...真面目というか...)…」
「…(見てるこっちが疲れるな?)…」
「…(ほいっと)…」

近衛兵と中間都市アルディアの衛兵が言い争いに成りそうになる。
俺は後ろ向きのまま無詠唱で上級氷魔法のアイシクルタワーで中間都市アルディアの衛兵氷漬けにした。
獣人族のと人間の争い事は…場合によってはこの異世界での国際問題に成りかねないからな…
あの中間都市アルディアの衛兵がそこまで分かった上での発言と行動かは知らないが…

「へぇやるじゃないアルス」
「私がやるところだったのに」
「エレイナがやったら怪我させるかもしれないでしょ?」
「さっき放とうとしてたの…上級火炎魔法のインフェルノブレイブでしょ?」
「よく分かったわね?」
「中間都市アルディアの入り口破壊する気かい?」
「お二人は戦争でもする気ですか?」
「ですが…アルス様?…我々も通れないのでは?」
「何事だこれは?」

なんか偉そうな人が来たな?
中間都市アルディアの領主かな?
あのアルディアの領主の隣に居る人獣人族の男の人は…もしかして?

「何故…衛兵が氷漬けに成っているのですか?」
「事故というか...天罰というか...」
「事故?…天罰?…」
「何の話ですか?」
「ほう…上級氷魔法のアイシクルタワーか?」
「領主よ…残念ながらこの氷は溶けないぞ?」
「え?…それはどうして?」
「上級氷魔法のアイシクルタワーは…発動者または…上級氷魔法を解除出来る魔法を操れる魔法使いをここに連れて来るしかない」
「ちなみに魔法使いで無いとダメなんだ…術式や詠唱文字を解読と術者本人に匹敵する魔法使いで無いとな」
「そんな…一体誰がこんな事を?」
「そこの男の子だ…そうだろ?」
「ん?…まあそうですね」
「こんな子供が!?」

鋭いな?あの獣人族の男の人。
やっぱりか...あの人がレイナちゃんのお父さんだな。
獣人族の長だっけか?…すぐに魔法を見抜いて、更には魔法の解除方法まで。
ただ者ではないな…

「君?…何故こんな事を?」
「私から説明致します」
「あなたは?」
「私はクーデルと申します」
「実は...先ほどレイナ様という方が馬車でこちらに向かう道中で山賊達に襲われまして…」
「何?レイナが来ているのか?」
「あ!パパ!」
「レイナー!!」
「パパ~!!」

レイナちゃんが獣人族の長のお父さんに駆け寄る。
レイナちゃんを父親が抱き締めた。
抱き合う父娘。

「感動的な再会だな…うんうん」
「エヘヘ…」
「良かったわね」

「すみません…話を続けてもいいですか?」
「あ、ああ…こちらこそすまない…続けてくれ」
「そこへ…アルス様が駆け付けて…レイナ様とその護衛の方々をお救いになされまして」
「そうなのかい?レイナ?」
「うん…アルスお兄ちゃんが助けてくれたの!」
「そうか…レイナが無事で良かったぞ!」
「エヘヘ…」
「なるほど...アルス君というのが…あの少年かな?」
「はい、そうです」
「そこで私達の乗って来た馬車にレイナ様を乗せてこちらに連れて来たという訳です」
「そうだったのか…」
「しかし…何故私の街の衛兵が氷漬けに成って居るのでしょうか?」

「それは私が説明するわ…」
「そこの氷漬けの男は…レイナの護衛の人が事情を説明して、レイナのお父さんに会う為だったって説明したにも関わらずに…身分証明書を見せろってしつこくて…」
「こっちには怪我をしているレイナの護衛の人達がまだ居るし…それにレイナを守って亡くなった人や…捕まえた山賊達も居るのよ?」
「もう少し優遇してもいいじゃない!」
「それとも私のお父様に言いましょうか?」

「こちらのお嬢さんは?」
「エレイナ様と申しまして…エルフ族の族長ユリウス様のご息女です」
「ユリウス様の!!…」
「失礼しました」

やっぱりエレイナのお義父さんって有名人なんだな。
領主さんも頭をペコペコしている。
そういえば…俺の住むライゼル村の村長もあんな感じだったな。

獣人族の長の娘に…エルフ族の族長の娘…
なかなか面白い組み合わせになって来たって感じだな。