僕らは短歌の内容に沿って、財宝を地面に埋めることにした。
「男はスコップを持ってきてないだろうし、手では掘れないし。掘る道具を探すところからやるから、マナトは今までと同じように撮影して」
「わかった」
ミツバくん演じる男は、周辺をウロウロし、土を掘るのに適した枯れ枝を探す。
そして、それを持って地蔵岩へ戻った。
彼はポケットから、小道具として持っていた懐中時計を取り出す。
僕は、ミツバくんの視線に合わせ、懐中時計がアップになる映像を撮った。
時刻は16時を示している。
彼は、太陽を見上げた後、地蔵岩の影を眺める。
そして頭の部分と、尻の部分に穴を掘った。
次に、革のカバンから宝箱を取り出す。
宝箱の中身を全て出し、空となった箱のみ、尻の部分に埋める。
続いて、宝石は革のカバンに直接入れ、カバンごと頭の部分の穴へ埋めた。
頭の部分のみ丁寧に土をならし、木の葉をかぶせ、隠蔽工作する。
その作業が終わるとミツバくんはスーツの胸ポケットから、手帳を取り出す。
「夏至の日に 地蔵守りし 申の刻 頭隠して 尻隠さず」
そう、万年筆で記入した。
ここまで撮り終えて、僕らは一息つく。
汗を拭って水を飲んだ。
いい映像が撮れたという手応えが、確かにある。
ただ僕らの頭上に、またドローンがやってきていて、それを酷く邪魔に感じた。
ホテルに戻りながら、1本目ラストの撮影をする。
土で汚れてしまった白いスーツに、手ぶらになった男。
彼は、疲れた足取りで海岸までの道を戻る。
そんなシーンで撮影終了となった。
—
ホテルのエントランスを抜けラウンジに行くと、サイカワチームと、ユーキチームはもう戻ってきていた。
「お疲れさまでーす」
「ミツバ、泥だけじゃん。どんな撮影してたの?」
「それは内緒」
疲れていた僕は、ドリンクコーナーから、リンゴジュースを持ってきて、ユーキさんの近くの椅子に座る。
ミツバくんは、僕から離れたサイカワさんのそばに腰を下ろす。
ユーキさんと、彼のサポートスタッフは旧知の仲のように親しくなっていて、今日あった出来事を2人して面白おかしく、僕に話してくれた。
ミツバくんは、サイカワさんと、彼のサポートスタッフに混じり、ナーゴさんがヤバい虫を捕まえた話で大盛り上がりしている。
彼が、僕から離れた場所に座ったのは、昼食時に話してくれた通り、メイキングカメラを意識してのことなのだろう。
今も、カメラのレンズは確実に僕らの方に向けられているから。
そうわかっているのに、なんだか堪らなく寂しい気持ちになってくる……。
日没前にイタルチームもホテルへ戻った。
彼らもすっかり仲良しで、ずっとふざけ合っていた。
結局、夜行性の虫を取りに行ったナーゴチーム以外は一緒のタイミングで夕飯を食べた。
やはりミツバくんは、僕から離れて座る。
サイカワさんも、ユーキさんも、イタルさんも、それに違和感を抱く様子はなく、皆で和気あいあいとした食事になった。
しかし、レストランの隅から様子を窺っていた藤原さんだけは違う。
彼女は食事が終わった僕とミツバくんをラウンジへと呼び出したのだ。
「2人、どうかしたのかしら?」
「何がですか?」
ミツバくんは僕とは視線を合わせずに、藤原さんへ言葉を返す。
「うーん。なんかヨソヨソしいからケンカでもしたのかなって。心配になって」
「学校じゃないんだし、俺らがベタベタ仲良くしなくたって、いいじゃないですか。動画はしっかり撮ってるし」
「それじゃ困るのよ」
「どうして?」
藤原さんは目を泳がせ、今度は僕へ質問してくる。
「マナトくんはどう?もっとミツバくんと親しく接したいわよね?」
「ぼ、僕は……」
僕が困っていることにミツバくんが気付いてくれたのだろう。
「もういいですか?疲れたから休みたいんですけど」
話を切り上げて席を立ち、ラウンジを出て行ってしまった。
僕もすぐそれに続こうとしたけれど、藤原さんは逃してくれない。
「あのねマナトくん。ミツバくんと、もっと親しげに上手くやってちょうだい。彼のご機嫌をとるのも、サポートスタッフの仕事よ。あなた、一番ビジュアルが強い彼と組んだんだから、頑張ってもらわないと困るの。お願いよ」
「ビジュアル?」
「あぁ、それはこっちの話だけど。とにかくミツバに気に入られるように頑張ってちょうだい。まぁ不仲からの急接近っていうのも、物語があっていいけれど。あと5日しか無いんだから。いい?」
「……はい」
「フリでもいいから、親しげにね」
藤原さんが何を言っているのか、意図がさっぱりわからない。
僕は1人でとぼとぼと廊下を歩き、部屋へ戻る。
なぜかとても惨めな気分だ……。
フリだけでも親しくって、藤原さんにとって、僕らがいいYouTube動画を撮ることは、あまり重要ではないのだろうか。
でも、3階に上がると、ミツバくんが部屋の前で待っていてくれた。
キョロキョロと辺りを見渡し、メイキングカメラの無いことを確認している。
「マナト、俺の部屋おいでよ」
彼が手招きして、そう言ってくれただけで、僕の気分は明るく晴れ渡った。
「男はスコップを持ってきてないだろうし、手では掘れないし。掘る道具を探すところからやるから、マナトは今までと同じように撮影して」
「わかった」
ミツバくん演じる男は、周辺をウロウロし、土を掘るのに適した枯れ枝を探す。
そして、それを持って地蔵岩へ戻った。
彼はポケットから、小道具として持っていた懐中時計を取り出す。
僕は、ミツバくんの視線に合わせ、懐中時計がアップになる映像を撮った。
時刻は16時を示している。
彼は、太陽を見上げた後、地蔵岩の影を眺める。
そして頭の部分と、尻の部分に穴を掘った。
次に、革のカバンから宝箱を取り出す。
宝箱の中身を全て出し、空となった箱のみ、尻の部分に埋める。
続いて、宝石は革のカバンに直接入れ、カバンごと頭の部分の穴へ埋めた。
頭の部分のみ丁寧に土をならし、木の葉をかぶせ、隠蔽工作する。
その作業が終わるとミツバくんはスーツの胸ポケットから、手帳を取り出す。
「夏至の日に 地蔵守りし 申の刻 頭隠して 尻隠さず」
そう、万年筆で記入した。
ここまで撮り終えて、僕らは一息つく。
汗を拭って水を飲んだ。
いい映像が撮れたという手応えが、確かにある。
ただ僕らの頭上に、またドローンがやってきていて、それを酷く邪魔に感じた。
ホテルに戻りながら、1本目ラストの撮影をする。
土で汚れてしまった白いスーツに、手ぶらになった男。
彼は、疲れた足取りで海岸までの道を戻る。
そんなシーンで撮影終了となった。
—
ホテルのエントランスを抜けラウンジに行くと、サイカワチームと、ユーキチームはもう戻ってきていた。
「お疲れさまでーす」
「ミツバ、泥だけじゃん。どんな撮影してたの?」
「それは内緒」
疲れていた僕は、ドリンクコーナーから、リンゴジュースを持ってきて、ユーキさんの近くの椅子に座る。
ミツバくんは、僕から離れたサイカワさんのそばに腰を下ろす。
ユーキさんと、彼のサポートスタッフは旧知の仲のように親しくなっていて、今日あった出来事を2人して面白おかしく、僕に話してくれた。
ミツバくんは、サイカワさんと、彼のサポートスタッフに混じり、ナーゴさんがヤバい虫を捕まえた話で大盛り上がりしている。
彼が、僕から離れた場所に座ったのは、昼食時に話してくれた通り、メイキングカメラを意識してのことなのだろう。
今も、カメラのレンズは確実に僕らの方に向けられているから。
そうわかっているのに、なんだか堪らなく寂しい気持ちになってくる……。
日没前にイタルチームもホテルへ戻った。
彼らもすっかり仲良しで、ずっとふざけ合っていた。
結局、夜行性の虫を取りに行ったナーゴチーム以外は一緒のタイミングで夕飯を食べた。
やはりミツバくんは、僕から離れて座る。
サイカワさんも、ユーキさんも、イタルさんも、それに違和感を抱く様子はなく、皆で和気あいあいとした食事になった。
しかし、レストランの隅から様子を窺っていた藤原さんだけは違う。
彼女は食事が終わった僕とミツバくんをラウンジへと呼び出したのだ。
「2人、どうかしたのかしら?」
「何がですか?」
ミツバくんは僕とは視線を合わせずに、藤原さんへ言葉を返す。
「うーん。なんかヨソヨソしいからケンカでもしたのかなって。心配になって」
「学校じゃないんだし、俺らがベタベタ仲良くしなくたって、いいじゃないですか。動画はしっかり撮ってるし」
「それじゃ困るのよ」
「どうして?」
藤原さんは目を泳がせ、今度は僕へ質問してくる。
「マナトくんはどう?もっとミツバくんと親しく接したいわよね?」
「ぼ、僕は……」
僕が困っていることにミツバくんが気付いてくれたのだろう。
「もういいですか?疲れたから休みたいんですけど」
話を切り上げて席を立ち、ラウンジを出て行ってしまった。
僕もすぐそれに続こうとしたけれど、藤原さんは逃してくれない。
「あのねマナトくん。ミツバくんと、もっと親しげに上手くやってちょうだい。彼のご機嫌をとるのも、サポートスタッフの仕事よ。あなた、一番ビジュアルが強い彼と組んだんだから、頑張ってもらわないと困るの。お願いよ」
「ビジュアル?」
「あぁ、それはこっちの話だけど。とにかくミツバに気に入られるように頑張ってちょうだい。まぁ不仲からの急接近っていうのも、物語があっていいけれど。あと5日しか無いんだから。いい?」
「……はい」
「フリでもいいから、親しげにね」
藤原さんが何を言っているのか、意図がさっぱりわからない。
僕は1人でとぼとぼと廊下を歩き、部屋へ戻る。
なぜかとても惨めな気分だ……。
フリだけでも親しくって、藤原さんにとって、僕らがいいYouTube動画を撮ることは、あまり重要ではないのだろうか。
でも、3階に上がると、ミツバくんが部屋の前で待っていてくれた。
キョロキョロと辺りを見渡し、メイキングカメラの無いことを確認している。
「マナト、俺の部屋おいでよ」
彼が手招きして、そう言ってくれただけで、僕の気分は明るく晴れ渡った。



