10人で、作戦会議をすることになる。
レストランやラウンジには、メイキングカメラがいるため、僕の部屋を使うことになった。
「マナトはベッドに寝たままでいいよ」
ミツバくんはそう心配してくれたけれど「もう大丈夫だから」と上半身を起こして座る。
「じゃ、俺から。大前提として、ドローンの音が煩くて撮影に支障が出てる。それに、病人より絵を優先するなど、目に余る行為も多発している」
ユーキさんが真剣な表情で、話を進める。
「案件を受けたとき、確かに「公式としてSNSで配信するショート動画を撮影し、宣伝に用いることがあります」って一文が書かれていた。これはYouTuberの俺たち5人が承知していたことだと思う」
残りの4人が頷く。
「俺のサポートスタッフに確認したところ、彼らはバイトに応募する時点で「動画に映り込む可能性」について了承している、ということだけど間違いはない?」
僕も「はい」と頷いた。
「ただ、俺たちが契約をしたとき、案件を主導していたのは支配人だった。あの人は、本当にこのホテルを愛していて「君らのやり方でこの魅力を発信してほしい」って言ってくれた」
サイカワさんが「そうそう」と深く頷き、続きを語る。
「しかし、支配人代理である藤原さんは、ホテルどうこうではなく、自分が考えたWeb戦略を成功させることしか、見えていません」
「それにさ、俺たちのYouTube動画の魅力みたいなものは、全く信じてないよね。信じてないから、刺激の強いBL的なショート動画を作り上げようとしているんでしょ」
イタルさんも、メイキング動画が、BL目線に切り取られそうなことには、気づいていたようだ。
「僕の虫動画を、BL的に期待して観に来ても、秒で引き返すだけだよ。それよりさ、SNS用宣伝にも虫の魅力が伝わるショート動画を使ってもらったほうが、コンバージョン率は上がると思うんだ」
ナーゴさんの言うことに皆が頷く。
「僕の虫だけじゃない。イタルくんの島歩きは地学好きをこの島に呼ぶよ。ユーキくんの動画はそのままサークルのプレゼンに使う人が出るだろう」
あぁ、その通りだ。
「サイカワくんの動画は間口が広く子どもだって見る。ミツバくんの動画は、女子受けもするし、アート作品として観る人もいる。2人の動画はロケ地としての素晴らしさも見せてくれる。僕らの動画にはそれぞれ違う魅力がある」
うんうん。
「というわけで、SNS宣伝用ショート動画も、俺たち各自に作らせてほしいって、藤原さんに頼もうと思うんだけど、ミツバはどう思う?」
ユーキさんに投げかけられ、ミツバくんは口を開いた。
「どう考えても、その方がいい結果を得られると思う。だけど、藤原さんは、どこのデータに感化されたのか、BLの持つ数字に固執してる」
「だよなー。撮らないでくれって言って、止めてはくれないかー」
「そこでさ、俺に秘策がある」
「ミツバ氏、それは?」
ミツバくんが僕を見たから、コクリと深く頷き返した。
「俺がこの島を舞台にした、ちゃんとしたBLを撮る。フェイクドキュメンタリーとして」
「えっ、それは見たい!藤原さんも見たいって思うだろうし、数字が取れるって思うはず」
「でも、藤原さんがメイキング動画の撮影をやめてくれないのなら、俺はBL動画を撮らない」
「おー」「いいね」「格好いい」「やるね」
どうやら、充分に交渉材料になると、皆が判断したようだ。
—
相談した結果、ユーキさんとミツバくんの2人で、藤原さんに交渉へ行くことが決まった。
僕らはレストランで夕食のバイキングを食べながら、それを待つ。
10分が経って、20分が経って……。
僕は心配で何度も箸を止め、レストランの入り口を伺う。
ようやく戻ってきた2人は疲れた顔をしていた。
「どうでした?ユーキ氏、ミツバ氏」
サイカワさんの問いにユーキさんが答える。
「うーん。結論を言えば、ドローンは中止してもらえたけど、ホテル内でのメイキングの撮影は続行される」
「えっ」
「でも、俺たちが提供するSNS用宣伝ショート動画および、ミツバのBL動画が、戦略として「使える」と藤原さんが判断した場合、メイキング映像を全てお蔵入りする、と約束させた」
「なるほど。まぁ、あちらも仕事だからね。その辺りが落とし所かもしれない」
この交渉結果は、YouTuber5人のやる気に、更なる火をつけたようだった。
「頑張ろうな、マナト」
ミツバくんは、もうメイキングカメラを気にしないことにしたのか、僕の肩を組み、顔を近づけてそう囁いた。
そうだった。
この人は「人たらし」だ。
これから撮るBL動画だって、フェイクなのだ。
勘違いしちゃダメだ、勘違いしちゃ絶対にダメだ。
僕は、その言葉を心の中で呪文のように何度も唱えた。
レストランやラウンジには、メイキングカメラがいるため、僕の部屋を使うことになった。
「マナトはベッドに寝たままでいいよ」
ミツバくんはそう心配してくれたけれど「もう大丈夫だから」と上半身を起こして座る。
「じゃ、俺から。大前提として、ドローンの音が煩くて撮影に支障が出てる。それに、病人より絵を優先するなど、目に余る行為も多発している」
ユーキさんが真剣な表情で、話を進める。
「案件を受けたとき、確かに「公式としてSNSで配信するショート動画を撮影し、宣伝に用いることがあります」って一文が書かれていた。これはYouTuberの俺たち5人が承知していたことだと思う」
残りの4人が頷く。
「俺のサポートスタッフに確認したところ、彼らはバイトに応募する時点で「動画に映り込む可能性」について了承している、ということだけど間違いはない?」
僕も「はい」と頷いた。
「ただ、俺たちが契約をしたとき、案件を主導していたのは支配人だった。あの人は、本当にこのホテルを愛していて「君らのやり方でこの魅力を発信してほしい」って言ってくれた」
サイカワさんが「そうそう」と深く頷き、続きを語る。
「しかし、支配人代理である藤原さんは、ホテルどうこうではなく、自分が考えたWeb戦略を成功させることしか、見えていません」
「それにさ、俺たちのYouTube動画の魅力みたいなものは、全く信じてないよね。信じてないから、刺激の強いBL的なショート動画を作り上げようとしているんでしょ」
イタルさんも、メイキング動画が、BL目線に切り取られそうなことには、気づいていたようだ。
「僕の虫動画を、BL的に期待して観に来ても、秒で引き返すだけだよ。それよりさ、SNS用宣伝にも虫の魅力が伝わるショート動画を使ってもらったほうが、コンバージョン率は上がると思うんだ」
ナーゴさんの言うことに皆が頷く。
「僕の虫だけじゃない。イタルくんの島歩きは地学好きをこの島に呼ぶよ。ユーキくんの動画はそのままサークルのプレゼンに使う人が出るだろう」
あぁ、その通りだ。
「サイカワくんの動画は間口が広く子どもだって見る。ミツバくんの動画は、女子受けもするし、アート作品として観る人もいる。2人の動画はロケ地としての素晴らしさも見せてくれる。僕らの動画にはそれぞれ違う魅力がある」
うんうん。
「というわけで、SNS宣伝用ショート動画も、俺たち各自に作らせてほしいって、藤原さんに頼もうと思うんだけど、ミツバはどう思う?」
ユーキさんに投げかけられ、ミツバくんは口を開いた。
「どう考えても、その方がいい結果を得られると思う。だけど、藤原さんは、どこのデータに感化されたのか、BLの持つ数字に固執してる」
「だよなー。撮らないでくれって言って、止めてはくれないかー」
「そこでさ、俺に秘策がある」
「ミツバ氏、それは?」
ミツバくんが僕を見たから、コクリと深く頷き返した。
「俺がこの島を舞台にした、ちゃんとしたBLを撮る。フェイクドキュメンタリーとして」
「えっ、それは見たい!藤原さんも見たいって思うだろうし、数字が取れるって思うはず」
「でも、藤原さんがメイキング動画の撮影をやめてくれないのなら、俺はBL動画を撮らない」
「おー」「いいね」「格好いい」「やるね」
どうやら、充分に交渉材料になると、皆が判断したようだ。
—
相談した結果、ユーキさんとミツバくんの2人で、藤原さんに交渉へ行くことが決まった。
僕らはレストランで夕食のバイキングを食べながら、それを待つ。
10分が経って、20分が経って……。
僕は心配で何度も箸を止め、レストランの入り口を伺う。
ようやく戻ってきた2人は疲れた顔をしていた。
「どうでした?ユーキ氏、ミツバ氏」
サイカワさんの問いにユーキさんが答える。
「うーん。結論を言えば、ドローンは中止してもらえたけど、ホテル内でのメイキングの撮影は続行される」
「えっ」
「でも、俺たちが提供するSNS用宣伝ショート動画および、ミツバのBL動画が、戦略として「使える」と藤原さんが判断した場合、メイキング映像を全てお蔵入りする、と約束させた」
「なるほど。まぁ、あちらも仕事だからね。その辺りが落とし所かもしれない」
この交渉結果は、YouTuber5人のやる気に、更なる火をつけたようだった。
「頑張ろうな、マナト」
ミツバくんは、もうメイキングカメラを気にしないことにしたのか、僕の肩を組み、顔を近づけてそう囁いた。
そうだった。
この人は「人たらし」だ。
これから撮るBL動画だって、フェイクなのだ。
勘違いしちゃダメだ、勘違いしちゃ絶対にダメだ。
僕は、その言葉を心の中で呪文のように何度も唱えた。



