「ごめんね。……本当にごめんね」
「あぁ、もう。喋らなくていいから、目を閉じてろ」
ミツバくんの背におぶられた僕は、何度も何度も謝ってしまい、ついには怒られる。
「ごめん……」
もう一度謝罪を口にすると、横を歩くイタルさんがフォローしてくれた。
「でもさ、よかったよ。ちょうどホテルに戻る途中の俺たちが通りかかった時で」
イタルチームが、ミツバくんが僕を呼ぶ声を聞きつけ、合流してくれたのだ。
僕らのリュックサックとカメラを持って、一緒にホテルへと戻ってくれている。
「マナトくんもさ、熱中症で倒れてもカメラは落とさないし、プロフェッショナルだよ。ミツバはどうせ「カメラマン熱中症で倒れる!」ってシーンを、フェイクドキュメンタリーに組み込んじゃうわけでしょ?」
「しないよ、さすがに」
やっぱりミツバくんの声は、少し怒っていた。
「いいんだ、ミツバくん。使えるなら、使って……」
「だから、マナトは眠っとけって」
「うん……ごめん」
そこからは僕に気を遣い、誰も口を開かなかった。
揺れる背中と、ミツバくんの爽やかな汗の匂いと、与えてくれる安心感で、僕はだんだんと眠くなる。
うつらうつらと、夢と現実を行き来し始めた。
不謹慎だけど。
いつまでも、この時間が続いたらいいのに。
ミツバくんが本気で僕を心配してくれて、ミツバくんが僕を大切に扱ってくれて、僕は彼の首にしがみついて。
ずっと、ずっと、このまま。
……そんなことを考えていたら、いつの間にか、なんの夢も見ないくらい熟睡していた。
—
ホテルに到着したと気がついたのは、ミツバくんが大きな声で喋ったからだ。
「撮るな。いい加減にしろ。何がメイキング動画だ」
ゆっくりと目を開けた僕の前に、藤原さんとメイキングカメラがいた。
騒ぎを聞きつけ、レストランにいたサイカワチームも、ラウンジへやってくる。
「どうしました?ミツバ氏」
サイカワさんが問う。
「マナトが熱中症気味で戻ってきたんだ。俺がラウンジのソファへ彼を降ろそうとしたら、藤原さんが降ろす前に、背負ってる絵を撮らせろって」
「それは流石に引きますね。まずはメイキング動画より、クーラーが効いた場所での静養でしょう」
サイカワさんは、ソファへクッションを置き、僕の枕を作ってくれる。
彼のサポートスタッフは、スポーツドリンクを取りに、ドリンクバーへと走ってくれた。
「あ、あの、すみません……。もうかなり良くなったので。……ご心配おかけしました」
結局、思うようなシーンが撮れなかった藤原さんは、不機嫌そうな顔で、メイキングカメラクルーに何か囁き、姿を消した。
—
睡眠と水分と、しっかりとした食事を取った僕は、わずかな頭痛のみを残し回復する。
今は、自分の部屋のベッドで横になりながら、ミツバくんに説教されているところだ。
「昨日、眠れなかった?」
「あ、うん。ちょっと……」
外はもう夕焼けで、今日の撮影は中断したままになってしまった。
「俺が、BL撮ろうって言ったから、考えこんじゃった?嫌なら嫌って言ってくれていいんだよ。人によって考え方が違うのは、俺もよくわかってるつもりだし」
「そうじゃなくて……。ちょっと勇気が必要だったから」
ミツバくんは慈悲深く微笑む。
「今朝、体調不良に気づいてやれなくて悪かった」
「ミツバくんは、なにも悪くないよ」
「3本目のBL動画は、無しにしよう。その分、2本目をじっくり撮ればいい。昨晩の話は、なかったことにして。変なこと言って悪かったな」
「違うんだ、ミツバくん!」
思わず声が大きくなってしまう。
「やらせてほしい」
「いや、責任感じたりしなくていいんだ、マナト」
僕はミツバくんへ手を伸ばし、彼の腕をしっかりと掴む。
「BL動画の相手役、僕にやらせてください。そしたら、そしたら、変われると思うんだ、僕自身が」
彼は僕が嘘を言っていないか見極めるかのように、見つめてきた。
「ホントにいいの?」
コクリと頷く。
たとえそれが「フェイク」だとしても、「それっぽい」作り物だとしても。
長年、男の子が好きだという感情を抹殺していた僕からしたら、大きな一歩になるはずだから。
「じゃ、こうしよう。嫌だったら途中でも必ず言うこと。元々、動画は2本撮れれば充分なんだ。3本目は、撮り終わることができたらラッキーくらいのつもりでいよう」
僕はまた、コクリと頷く。
「な?無理はしない。それが約束」
そのとき、部屋をノックする音が聞こえた。
ミツバくんが立ち上がって、ドアを開けてくれる。
そこには、僕ら以外のYouTuber4人、サポートスタッフ4人が揃っていた。
「メイキング動画について藤原さんと話をしようと思ってるんだ。君たちの意見も聞きたい」
皆を代表するように、ユーキさんがそう告げた。
「あぁ、もう。喋らなくていいから、目を閉じてろ」
ミツバくんの背におぶられた僕は、何度も何度も謝ってしまい、ついには怒られる。
「ごめん……」
もう一度謝罪を口にすると、横を歩くイタルさんがフォローしてくれた。
「でもさ、よかったよ。ちょうどホテルに戻る途中の俺たちが通りかかった時で」
イタルチームが、ミツバくんが僕を呼ぶ声を聞きつけ、合流してくれたのだ。
僕らのリュックサックとカメラを持って、一緒にホテルへと戻ってくれている。
「マナトくんもさ、熱中症で倒れてもカメラは落とさないし、プロフェッショナルだよ。ミツバはどうせ「カメラマン熱中症で倒れる!」ってシーンを、フェイクドキュメンタリーに組み込んじゃうわけでしょ?」
「しないよ、さすがに」
やっぱりミツバくんの声は、少し怒っていた。
「いいんだ、ミツバくん。使えるなら、使って……」
「だから、マナトは眠っとけって」
「うん……ごめん」
そこからは僕に気を遣い、誰も口を開かなかった。
揺れる背中と、ミツバくんの爽やかな汗の匂いと、与えてくれる安心感で、僕はだんだんと眠くなる。
うつらうつらと、夢と現実を行き来し始めた。
不謹慎だけど。
いつまでも、この時間が続いたらいいのに。
ミツバくんが本気で僕を心配してくれて、ミツバくんが僕を大切に扱ってくれて、僕は彼の首にしがみついて。
ずっと、ずっと、このまま。
……そんなことを考えていたら、いつの間にか、なんの夢も見ないくらい熟睡していた。
—
ホテルに到着したと気がついたのは、ミツバくんが大きな声で喋ったからだ。
「撮るな。いい加減にしろ。何がメイキング動画だ」
ゆっくりと目を開けた僕の前に、藤原さんとメイキングカメラがいた。
騒ぎを聞きつけ、レストランにいたサイカワチームも、ラウンジへやってくる。
「どうしました?ミツバ氏」
サイカワさんが問う。
「マナトが熱中症気味で戻ってきたんだ。俺がラウンジのソファへ彼を降ろそうとしたら、藤原さんが降ろす前に、背負ってる絵を撮らせろって」
「それは流石に引きますね。まずはメイキング動画より、クーラーが効いた場所での静養でしょう」
サイカワさんは、ソファへクッションを置き、僕の枕を作ってくれる。
彼のサポートスタッフは、スポーツドリンクを取りに、ドリンクバーへと走ってくれた。
「あ、あの、すみません……。もうかなり良くなったので。……ご心配おかけしました」
結局、思うようなシーンが撮れなかった藤原さんは、不機嫌そうな顔で、メイキングカメラクルーに何か囁き、姿を消した。
—
睡眠と水分と、しっかりとした食事を取った僕は、わずかな頭痛のみを残し回復する。
今は、自分の部屋のベッドで横になりながら、ミツバくんに説教されているところだ。
「昨日、眠れなかった?」
「あ、うん。ちょっと……」
外はもう夕焼けで、今日の撮影は中断したままになってしまった。
「俺が、BL撮ろうって言ったから、考えこんじゃった?嫌なら嫌って言ってくれていいんだよ。人によって考え方が違うのは、俺もよくわかってるつもりだし」
「そうじゃなくて……。ちょっと勇気が必要だったから」
ミツバくんは慈悲深く微笑む。
「今朝、体調不良に気づいてやれなくて悪かった」
「ミツバくんは、なにも悪くないよ」
「3本目のBL動画は、無しにしよう。その分、2本目をじっくり撮ればいい。昨晩の話は、なかったことにして。変なこと言って悪かったな」
「違うんだ、ミツバくん!」
思わず声が大きくなってしまう。
「やらせてほしい」
「いや、責任感じたりしなくていいんだ、マナト」
僕はミツバくんへ手を伸ばし、彼の腕をしっかりと掴む。
「BL動画の相手役、僕にやらせてください。そしたら、そしたら、変われると思うんだ、僕自身が」
彼は僕が嘘を言っていないか見極めるかのように、見つめてきた。
「ホントにいいの?」
コクリと頷く。
たとえそれが「フェイク」だとしても、「それっぽい」作り物だとしても。
長年、男の子が好きだという感情を抹殺していた僕からしたら、大きな一歩になるはずだから。
「じゃ、こうしよう。嫌だったら途中でも必ず言うこと。元々、動画は2本撮れれば充分なんだ。3本目は、撮り終わることができたらラッキーくらいのつもりでいよう」
僕はまた、コクリと頷く。
「な?無理はしない。それが約束」
そのとき、部屋をノックする音が聞こえた。
ミツバくんが立ち上がって、ドアを開けてくれる。
そこには、僕ら以外のYouTuber4人、サポートスタッフ4人が揃っていた。
「メイキング動画について藤原さんと話をしようと思ってるんだ。君たちの意見も聞きたい」
皆を代表するように、ユーキさんがそう告げた。



