ルキフグスは続ける。
「それで、領地を完全に失った別の国の幾つかのエルヨとネフィリムが、夜の城への亡命を希望しています。サリエルの同意がない限り、承諾できないので、彼らは一時的に砦に匿っていますが、どうしますか?」
私はたいして考えずに答える。
「同胞は助けるのがエルヨの習わしだよ。エルヨとネフィリムの内訳が知りたいわね」
「エルヨは魔族に分類される者たちです。ヨミアエル、ヘルエムメレクというエルヨの二名です。彼らは二人行動の魔族で、配下に不死者四十名、グール七千体を引き連れています。ネフィリムは江の部族のもので、聖伐から逃れた四十名ほどのネフィリムの集団です」
エルヨは人間に好意的か敵対的かで、魔族か天使かが決まる。
私の知り合いはたいてい魔族なのだけど、中には人間を糧としない好意的なエルヨもいるにはいた。
「こちらの傘下につくなら、喜んで夜の城へ入れると伝えて。傘下につかないなら、残念ながら立ち退いてもらうけれど」
命令系統は明確にしないと、いざという時に困るから、同じエルヨでも下についてもらう必要がある。それを拒むなら、和を乱すものとして、仲間に入れるわけにはいかない。
ルキフグスは頷いて言う。
「わかりました。彼らにはそう伝えます。それから、食事も運ばせますね。三年ぶりの起床ですから」
ルキフグスはそう言って部屋を出ていく。
やがてグールがハムエッグとサラダを運んできて、紅茶も運ばれてきたので、口にした。
二人のエルヨもネフィリムもよほど人間たちの反撃に進退窮まっていたのか、こちらの提案を飲んだ。
ヨミアエルもヘルエムメレクも、私よりは新しい部類のエルヨで、年功序列の観点からも私を上にすることに抵抗がないと言っていた。
二人とも容姿がよく似ている。勝気な目に、赤い角の生えた男性。
華奢で、二人ともゆったりとした青い着物のようなものを着ている。
「本当に助かりました、サリエル。俺たちもあなたと同じように人間の国々を攻め、一旗揚げていたんですが、いきなり強硬な反撃にあって瓦解してしまいました。人間の軍勢のその数!! いやー、舐めてました」
ヘルエムメレクが怖いものでも語るように私に話しかける。
ヨミアエルも続けた。
「サリエルとルキフグスの二人の魔族の話は聞いていました。俺たちのお手本の一つですよ。略奪、虐殺、血の雨。人間の聖伐で死んだと聞いていましたけど、生きていたとは、さすがです」
私は眼前に手を振って、否定する。
「全盛期はもう過ぎたよ。夜の城を防衛するだけで手一杯で、それもルキフグスに任せてる。人間の聖伐が終わって、また人間の国々の足並みが乱れるまでは、私たちも何もできないよ」
それまで黙っていた四十名のネフィリムの長、カルキが言った。
「私たちは、夜の城の防衛に協力します。再び侵略するというのならそれにも協力します。貴方の傘下に入ったからには、お役に立ちます」
カルキは神妙な感じでそう言う。切れ長の目に、細面の顔。ネフィリムの江の部族をあらわす剣の紋様のタトゥーを頬に入れているのが見えた。
私は彼に返す。
「心強いよ、カルキ。こちらも戦力が足りないから。私たちは眷属で、対等な仲間だけれど、指揮をする上で命令するものとして、私とルキフグスが上に立って命令する。でもへりくだる必要はないの。あくまで組織だって行動するために、上下があるだけだから」
そのように要点を伝えて、エルヨのコンビとネフィリムの集団を傘下に置けることになった。これは心強いし、不死者を増やしやすくなるのはとても助かった。
しばらく、十年、二十年、グールと不死者の数を増やす必要がある。
人間の侵攻を防ぎつつ、また力を蓄えなければならなかった。
金貨が尽きる前に。
10
人間たちの聖伐が終わってから、夜の城で、十二年耐えた。
聖王国の王が死去したこの年、動員できるグールの数は三万人を超え、夜の城に収容できる限界を超えた。
海の向こうから来る、魔族を相手に商売をする闇商人から食料、武器、防具、建築材、奴隷、家財を買い込み、グールたちを武装させながら砦と集落を建設し、溢れた眷属を住まわせるようにまでなったころ、残った金貨、銀貨は2000億シェケルを切り、そろそろ略奪に出かけないとまずいんじゃないかという議論が仲間内のエルヨやネフィリムから出てきた。
元々、人間からの略奪が性分の私たちである。そもそもが軍事以外に生産性のない種族だ。侵略に出かけず引きこもっていたら破産するのは目に見えていた。
そこで、エルヨとネフィリムの代表で、今後の話し合いをすることにした。
ルキフグスが言う。
「侵略しましょう。お金がないので。異論は?」
というと、全員無言でうなずいた。そんなことは当たり前だ、という具合に。
ルキフグスがまた続ける。
「では侵略をまた前回のようにサクロに任せましょう。彼の魔術は下手なエルヨより強力ですから。彼をトップに最初から不死者やグールを総動員して、聖王国を攻略させます」
ヨミアエルがそれに対して意見をする。
「俺たちは俺たちで動きたいんですが。やっぱり自分の血を分けた不死者は自分で動かしたいというか。しかし占領した地域の支配権はルキフグスとサリエルに差し出しますし、手に入れた財宝も半分はお二人に献上します」
ルキフグスは困ったように私を見るので、私は口を開いた。
「私はそれでいいわ。ヨミアエルとヘルエムメレク傘下の四十名の不死者は、独立して行動していいよ。でもグールはダメ。一度私たちに編入されたグールは返すことができない」
今度はヨミアエルが困ったように言う。
「それじゃあどうやって行動しろと?」
私は提案した。
「グールは貸し出すという形にするから、いつか返して。五千体。あなた達ならグール五千体増やすぐらいわけないでしょ?」
ヘルエムメレクはそれならば、と頷く。
「わかりました。お二人には支配地域の財宝の半分を献上するうえで、グール五千体も返納すればいいわけですね? 時間はかかりますが、匿ってもらった恩ですし、ちゃんと返します」
エルヨやネフィリムは、自分の不死者を可愛がる傾向にあるが、グールには無頓着なことが多い。私は孫的立場にあるグールも可愛いので、グールの監督権限にはこだわっている。だから支配権を譲る気はなかった。
ルキフグスは話し合いの先を続けようと口を開き、ネフィリム代表のカルキに尋ねた。
「ネフィリムたちはどうしますか? サクロの下についてもらうことになりますが…」
ネフィリム代表のカルキが意見を言う。
「私たちはあなた方に忠誠を誓っているので、その編成に従います。文句はないです」
そこで話し合いはまとまり、私たちは軍の構成を再編成することにした。
前回不死者の数とか編成とか完全に舐めプしていたので、今度は指揮官である不死者を六十名に増員し、その配下にグールを15000体つけた。
不死者一人につき250名のグールという案配である。
それを魔王軍、として、それとは別にあと二つの軍を編成した。結局ネフィリムたちと二人の魔族の軍勢は別の軍勢として編成したのだ。
ネフィリムたちには10000体のグールを貸しつけ、サクロ率いる魔王軍とは別の軍勢として、運用することにした。
ヨミアエルとヘルエムメレクの二人の魔族の軍勢には五千体のグールを貸し付け、これも魔王軍とネフィリムの軍とは別の軍勢として独自に動いてもらうことになった。
なので、二人の魔族が率いる魔族の軍勢と、サクロ率いる魔王軍、カルキ率いるネフィリムの軍勢という三軍構成になった。
それぞれが軍勢の主で、自主的に行動するが、支配した地域の税収と財宝の半分は私たちのいる夜の城に運ぶという条件で合意した。
私とルキフグスはおもに夜の城とその周辺の領域の防衛担当だが、聖伐のような大きな脅威に対しては、三軍共同で事に当たることと、私たちも協力することで話し合いがまとまった。
私たちが直接声をかけるのはサクロの軍勢に対してだけで、それにしても基本的に自由放任でやらせようと思うから、サクロにはアドカヤの再攻略だけ命じて、自分はベッドに横になって、経過報告を待つことにした。
最初のアドカヤ攻略には三軍一致して行動したからか、一か月もかからず州都ロアンを再陥落させることができた。
ロアンには夜の城の攻略のための聖王国の主力の軍がいたらしいが、今回は特に問題なく撃破したとのこと。私たちには再びアドカヤの富が入ってきた。
1200億シェケル。夜の城に金貨と銀貨が運ばれてきた。アドカヤには再び金貨、銀貨が貯めこまれていたので、その財宝のうち半分が私たちの取り分となったのだ。
これで夜の城の宝物庫の金貨銀貨は3200億シェケルに増えた。
略奪すれば、金貨はすぐにたまる。私は黄金の貨幣の輝きを見ながら、にやにやと宝物庫の前で笑った。
多くは百年前の古い貨幣だったが、新しい輝きに満ちた金貨も増えてきた。
今回は兵士も充実しているから、金貨を人気取りのために住民に配ったり、建国のややこしい取り決めもしない。略奪と支配に徹する。
「サリエル」宝物庫で金貨と戯れていると、後ろからルキフグスが声をかけてきた。
「どうしたの?」と私は金貨を弄びながら尋ねる。
「寂しいから、一緒に寝て。眠れない」
この子には謎の甘え時期がある。玉にしか睡眠しないのに、睡眠するときは私と一緒に眠ることが多い。
そういえば私もなんだか眠い。
「いいよ。ちょっと待ってて」
私は百年前に奪ったものの一つである、シバの王国の純金とガーネットで造られた王冠をかぶって、ルキフグスに笑みを向けると、彼女と共に自分の部屋に戻った。
11
聖王国の主力の軍はアドカヤ攻略で既に打ち破っていたため、クロワもすぐに落とし、各領国も次々に陥落させた。王国の主力の軍が既にいないため、聖王国の王都も開戦から数か月で電撃的に落とした。
聖王国王都陥落の報を受けてから、納入される金貨の額がけた外れに跳ね上がった。5兆3700億シェケル。聖王都や各種領国から、領民の安全を保障するために絞り出させた金貨のうち、その半分が私たちの夜の城の蔵に収まった。
運ぶグールたちもたまったものじゃなかっただろう。金貨を運ぶ荷車は留まることを知らない行列となって夜の城に運ばれた。
サクロが聖王国の王を捕虜にしたようで、どうしますか? と聞いてきたので、身代金を聖王国の貴族たちに支払わせて、解放してあげた。
まだ若い王だし、エルヨは王族を殺さない、という人間たちの伝統的なおとぎ話にある、希望的観測に乗っかってあげようと思ったわけだ。
その代わり2000億シェケルふんだくったけど。
そういうわけで、聖王国の軍備を制限することと、魔族の保護国とすること、税収のうち半額を魔族に収めること、を趣旨として、半ば属国化することに成功した。表向きには「魔族の生存権の確保と人間との共生」という建前の上で、「魔族の友邦国」ということで聖王国の体制を維持することにした。
代わりに魔族側は聖王国の外国からの侵略に対する防衛と、聖王国内部の治安担当の一部を担うことになった。
私たち魔族側の正規領土は夜の城とその周辺の森と広大な禁足地域、アドカヤ、クロワを直轄地として、聖王国はこれらの領土を魔族側に割譲することとなった。
これが「魔族の生存圏」というわけである。
そこで、聖王国を属国として支配する担当はネフィリムの軍勢が担当し、クロワの領国は二人の魔族の軍勢が担当し、アドカヤの領国はサクロ率いる魔王の軍勢が担当し、夜の城とその禁足地域は私とルキフグスの二人のエルヨが担当することになった。
夜の城の蔵には5兆8900億シェケル分の金貨と少量の銀貨がある。
毎年聖王国の税収の半分は属国収入としてネフィリムたちに入り、ネフィリムたちからはその属国収入の半分を私たちに上納することになっている。
「それで、領地を完全に失った別の国の幾つかのエルヨとネフィリムが、夜の城への亡命を希望しています。サリエルの同意がない限り、承諾できないので、彼らは一時的に砦に匿っていますが、どうしますか?」
私はたいして考えずに答える。
「同胞は助けるのがエルヨの習わしだよ。エルヨとネフィリムの内訳が知りたいわね」
「エルヨは魔族に分類される者たちです。ヨミアエル、ヘルエムメレクというエルヨの二名です。彼らは二人行動の魔族で、配下に不死者四十名、グール七千体を引き連れています。ネフィリムは江の部族のもので、聖伐から逃れた四十名ほどのネフィリムの集団です」
エルヨは人間に好意的か敵対的かで、魔族か天使かが決まる。
私の知り合いはたいてい魔族なのだけど、中には人間を糧としない好意的なエルヨもいるにはいた。
「こちらの傘下につくなら、喜んで夜の城へ入れると伝えて。傘下につかないなら、残念ながら立ち退いてもらうけれど」
命令系統は明確にしないと、いざという時に困るから、同じエルヨでも下についてもらう必要がある。それを拒むなら、和を乱すものとして、仲間に入れるわけにはいかない。
ルキフグスは頷いて言う。
「わかりました。彼らにはそう伝えます。それから、食事も運ばせますね。三年ぶりの起床ですから」
ルキフグスはそう言って部屋を出ていく。
やがてグールがハムエッグとサラダを運んできて、紅茶も運ばれてきたので、口にした。
二人のエルヨもネフィリムもよほど人間たちの反撃に進退窮まっていたのか、こちらの提案を飲んだ。
ヨミアエルもヘルエムメレクも、私よりは新しい部類のエルヨで、年功序列の観点からも私を上にすることに抵抗がないと言っていた。
二人とも容姿がよく似ている。勝気な目に、赤い角の生えた男性。
華奢で、二人ともゆったりとした青い着物のようなものを着ている。
「本当に助かりました、サリエル。俺たちもあなたと同じように人間の国々を攻め、一旗揚げていたんですが、いきなり強硬な反撃にあって瓦解してしまいました。人間の軍勢のその数!! いやー、舐めてました」
ヘルエムメレクが怖いものでも語るように私に話しかける。
ヨミアエルも続けた。
「サリエルとルキフグスの二人の魔族の話は聞いていました。俺たちのお手本の一つですよ。略奪、虐殺、血の雨。人間の聖伐で死んだと聞いていましたけど、生きていたとは、さすがです」
私は眼前に手を振って、否定する。
「全盛期はもう過ぎたよ。夜の城を防衛するだけで手一杯で、それもルキフグスに任せてる。人間の聖伐が終わって、また人間の国々の足並みが乱れるまでは、私たちも何もできないよ」
それまで黙っていた四十名のネフィリムの長、カルキが言った。
「私たちは、夜の城の防衛に協力します。再び侵略するというのならそれにも協力します。貴方の傘下に入ったからには、お役に立ちます」
カルキは神妙な感じでそう言う。切れ長の目に、細面の顔。ネフィリムの江の部族をあらわす剣の紋様のタトゥーを頬に入れているのが見えた。
私は彼に返す。
「心強いよ、カルキ。こちらも戦力が足りないから。私たちは眷属で、対等な仲間だけれど、指揮をする上で命令するものとして、私とルキフグスが上に立って命令する。でもへりくだる必要はないの。あくまで組織だって行動するために、上下があるだけだから」
そのように要点を伝えて、エルヨのコンビとネフィリムの集団を傘下に置けることになった。これは心強いし、不死者を増やしやすくなるのはとても助かった。
しばらく、十年、二十年、グールと不死者の数を増やす必要がある。
人間の侵攻を防ぎつつ、また力を蓄えなければならなかった。
金貨が尽きる前に。
10
人間たちの聖伐が終わってから、夜の城で、十二年耐えた。
聖王国の王が死去したこの年、動員できるグールの数は三万人を超え、夜の城に収容できる限界を超えた。
海の向こうから来る、魔族を相手に商売をする闇商人から食料、武器、防具、建築材、奴隷、家財を買い込み、グールたちを武装させながら砦と集落を建設し、溢れた眷属を住まわせるようにまでなったころ、残った金貨、銀貨は2000億シェケルを切り、そろそろ略奪に出かけないとまずいんじゃないかという議論が仲間内のエルヨやネフィリムから出てきた。
元々、人間からの略奪が性分の私たちである。そもそもが軍事以外に生産性のない種族だ。侵略に出かけず引きこもっていたら破産するのは目に見えていた。
そこで、エルヨとネフィリムの代表で、今後の話し合いをすることにした。
ルキフグスが言う。
「侵略しましょう。お金がないので。異論は?」
というと、全員無言でうなずいた。そんなことは当たり前だ、という具合に。
ルキフグスがまた続ける。
「では侵略をまた前回のようにサクロに任せましょう。彼の魔術は下手なエルヨより強力ですから。彼をトップに最初から不死者やグールを総動員して、聖王国を攻略させます」
ヨミアエルがそれに対して意見をする。
「俺たちは俺たちで動きたいんですが。やっぱり自分の血を分けた不死者は自分で動かしたいというか。しかし占領した地域の支配権はルキフグスとサリエルに差し出しますし、手に入れた財宝も半分はお二人に献上します」
ルキフグスは困ったように私を見るので、私は口を開いた。
「私はそれでいいわ。ヨミアエルとヘルエムメレク傘下の四十名の不死者は、独立して行動していいよ。でもグールはダメ。一度私たちに編入されたグールは返すことができない」
今度はヨミアエルが困ったように言う。
「それじゃあどうやって行動しろと?」
私は提案した。
「グールは貸し出すという形にするから、いつか返して。五千体。あなた達ならグール五千体増やすぐらいわけないでしょ?」
ヘルエムメレクはそれならば、と頷く。
「わかりました。お二人には支配地域の財宝の半分を献上するうえで、グール五千体も返納すればいいわけですね? 時間はかかりますが、匿ってもらった恩ですし、ちゃんと返します」
エルヨやネフィリムは、自分の不死者を可愛がる傾向にあるが、グールには無頓着なことが多い。私は孫的立場にあるグールも可愛いので、グールの監督権限にはこだわっている。だから支配権を譲る気はなかった。
ルキフグスは話し合いの先を続けようと口を開き、ネフィリム代表のカルキに尋ねた。
「ネフィリムたちはどうしますか? サクロの下についてもらうことになりますが…」
ネフィリム代表のカルキが意見を言う。
「私たちはあなた方に忠誠を誓っているので、その編成に従います。文句はないです」
そこで話し合いはまとまり、私たちは軍の構成を再編成することにした。
前回不死者の数とか編成とか完全に舐めプしていたので、今度は指揮官である不死者を六十名に増員し、その配下にグールを15000体つけた。
不死者一人につき250名のグールという案配である。
それを魔王軍、として、それとは別にあと二つの軍を編成した。結局ネフィリムたちと二人の魔族の軍勢は別の軍勢として編成したのだ。
ネフィリムたちには10000体のグールを貸しつけ、サクロ率いる魔王軍とは別の軍勢として、運用することにした。
ヨミアエルとヘルエムメレクの二人の魔族の軍勢には五千体のグールを貸し付け、これも魔王軍とネフィリムの軍とは別の軍勢として独自に動いてもらうことになった。
なので、二人の魔族が率いる魔族の軍勢と、サクロ率いる魔王軍、カルキ率いるネフィリムの軍勢という三軍構成になった。
それぞれが軍勢の主で、自主的に行動するが、支配した地域の税収と財宝の半分は私たちのいる夜の城に運ぶという条件で合意した。
私とルキフグスはおもに夜の城とその周辺の領域の防衛担当だが、聖伐のような大きな脅威に対しては、三軍共同で事に当たることと、私たちも協力することで話し合いがまとまった。
私たちが直接声をかけるのはサクロの軍勢に対してだけで、それにしても基本的に自由放任でやらせようと思うから、サクロにはアドカヤの再攻略だけ命じて、自分はベッドに横になって、経過報告を待つことにした。
最初のアドカヤ攻略には三軍一致して行動したからか、一か月もかからず州都ロアンを再陥落させることができた。
ロアンには夜の城の攻略のための聖王国の主力の軍がいたらしいが、今回は特に問題なく撃破したとのこと。私たちには再びアドカヤの富が入ってきた。
1200億シェケル。夜の城に金貨と銀貨が運ばれてきた。アドカヤには再び金貨、銀貨が貯めこまれていたので、その財宝のうち半分が私たちの取り分となったのだ。
これで夜の城の宝物庫の金貨銀貨は3200億シェケルに増えた。
略奪すれば、金貨はすぐにたまる。私は黄金の貨幣の輝きを見ながら、にやにやと宝物庫の前で笑った。
多くは百年前の古い貨幣だったが、新しい輝きに満ちた金貨も増えてきた。
今回は兵士も充実しているから、金貨を人気取りのために住民に配ったり、建国のややこしい取り決めもしない。略奪と支配に徹する。
「サリエル」宝物庫で金貨と戯れていると、後ろからルキフグスが声をかけてきた。
「どうしたの?」と私は金貨を弄びながら尋ねる。
「寂しいから、一緒に寝て。眠れない」
この子には謎の甘え時期がある。玉にしか睡眠しないのに、睡眠するときは私と一緒に眠ることが多い。
そういえば私もなんだか眠い。
「いいよ。ちょっと待ってて」
私は百年前に奪ったものの一つである、シバの王国の純金とガーネットで造られた王冠をかぶって、ルキフグスに笑みを向けると、彼女と共に自分の部屋に戻った。
11
聖王国の主力の軍はアドカヤ攻略で既に打ち破っていたため、クロワもすぐに落とし、各領国も次々に陥落させた。王国の主力の軍が既にいないため、聖王国の王都も開戦から数か月で電撃的に落とした。
聖王国王都陥落の報を受けてから、納入される金貨の額がけた外れに跳ね上がった。5兆3700億シェケル。聖王都や各種領国から、領民の安全を保障するために絞り出させた金貨のうち、その半分が私たちの夜の城の蔵に収まった。
運ぶグールたちもたまったものじゃなかっただろう。金貨を運ぶ荷車は留まることを知らない行列となって夜の城に運ばれた。
サクロが聖王国の王を捕虜にしたようで、どうしますか? と聞いてきたので、身代金を聖王国の貴族たちに支払わせて、解放してあげた。
まだ若い王だし、エルヨは王族を殺さない、という人間たちの伝統的なおとぎ話にある、希望的観測に乗っかってあげようと思ったわけだ。
その代わり2000億シェケルふんだくったけど。
そういうわけで、聖王国の軍備を制限することと、魔族の保護国とすること、税収のうち半額を魔族に収めること、を趣旨として、半ば属国化することに成功した。表向きには「魔族の生存権の確保と人間との共生」という建前の上で、「魔族の友邦国」ということで聖王国の体制を維持することにした。
代わりに魔族側は聖王国の外国からの侵略に対する防衛と、聖王国内部の治安担当の一部を担うことになった。
私たち魔族側の正規領土は夜の城とその周辺の森と広大な禁足地域、アドカヤ、クロワを直轄地として、聖王国はこれらの領土を魔族側に割譲することとなった。
これが「魔族の生存圏」というわけである。
そこで、聖王国を属国として支配する担当はネフィリムの軍勢が担当し、クロワの領国は二人の魔族の軍勢が担当し、アドカヤの領国はサクロ率いる魔王の軍勢が担当し、夜の城とその禁足地域は私とルキフグスの二人のエルヨが担当することになった。
夜の城の蔵には5兆8900億シェケル分の金貨と少量の銀貨がある。
毎年聖王国の税収の半分は属国収入としてネフィリムたちに入り、ネフィリムたちからはその属国収入の半分を私たちに上納することになっている。

