星座が示す、144通りの恋

第7話 調味料入れのせいにして
(牡羊座君♂x天秤座ちゃん♀)

 帰り道の夕焼け、家庭科室で、校庭に風が走っていた。優里はエプロンのひもを結び直し、慶翔は袖をまくった。
 告白の答えを伝えた翌週、二人は「まずは一回、成功させよう」と小さく笑い合う。今日やるのは温かい飲み物を入れる。
 鍵になるのが調味料入れで、手順がずれると味も形も崩れる。優里は「できるかな」と首をかしげた。
 途中で優里が鞄をごそごそ探して、困ったように肩をすくめた。「あ、持ってくるの忘れた」——その一言で、慶翔は立ち止まる。
 実は慶翔は昨日、同じ調味料入れをもう一つ用意していた。理由は、優里が前に「これがあると助かるんだ」と言ったのを覚えていたから。慶翔は「先に動いたほうが早い」と言いながら、そっと手渡した。
 優里は受け取り、しばらく黙ったあと、「半分こしよう」と笑った。声は小さいのに、胸の中がじんわり温かくなる。慶翔は「じゃ、今使おう」と前を向き、優里はその背中に小さく「うん」と重ねた。
 優里が靴ひもを結び直している間、慶翔は周りを見回し、来週の予定を指で数えた。「会える日は少ないけど、短くてもいい」と言うと、優里は「短いほど大事にする」と返して、目を合わせた。
 優里は歩きながら、ふと調味料入れを見つめた。「これって、ただの道具なのにさ」と言いかけて止まる。慶翔が「うん」と待つと、優里は小さく笑い、「一緒に使うと、思い出になるね」と続けた。
 帰り道、慶翔は「次は優里のやりたいことを先に聞く」と言った。優里は少し考えてから、調味料入れを軽く振って合図する。「じゃあ、また一緒に使おう」。その一言で、二人のそれだけで、今日は十分だと思えた。
【終】